米Rackspaceが、OpenStackによるプライベートクラウドの構築運用に参入。クラウドベンダが新たな仁義なき競争を引き起こすか
クラウド構築のノウハウを十分に蓄積してきたクラウドベンダが、プライベートクラウド構築用ソフトウェアを提供し、構築し、運用を支援する。米Rackspace Hostingが米Redaptと共同で提供する「Rackspace Cloud: Private Edition」は、サーバベンダやSIerの仕事と見られていたプライベートクラウド構築に、パブリッククラウドベンダが強力な競合として名乗りを上げたサービスといえます。
クラウドベンダーがクラウド構築から運用までを支援
Rackspace Cloud: Private Editionは、次の4つのステップでプライベートクラウドを構築すると説明されています。
ステップ1は、OpenStackをクラウド構築基盤として利用すること。OpenStackは、Rackspace HostingとNASA(アメリカ航空宇宙局)が中心となって開発が始まったオープンソースのクラウド基盤ソフトウェアです。
ステップ2は、データセンターを決めること。ユーザー自身のデータセンターでも、社外のデータセンターでも、Rackspaceのデータセンターでも構いません。データセンターに必要なのは、電源とインターネットへの接続のみ。
ステップ3では、注文から2週間以内に指定されたデータセンターに機材が届き、Rackspaceのリファレンスモデルに沿ったクラウドが構築されます。クラウドの構築、テスト、設定はRedaptが行います。
そしてステップ4で、Rackspaceのクラウドの専門家、OpenStackの専門家が運用のサポートを24時間365日行ってくれます。
つまり顧客はプライベートクラウドとしてインフラを完全に保有して自社で運用できる一方で、クラウドベンダが持つ高度なクラウドの構築ノウハウ、運用ノウハウによるサポートを受けることができるわけです。
今回の発表の中で、同社のゼネラルマネージャ Jim Curry氏は次のようにコメントしています。
“Other companies and coalitions have solutions that lock in customers, but our complete infrastructure and support solution is open in every way possible making it easier for companies to grow and change their IT needs,” said Jim Curry
他社や他連合は顧客をロックインするソリューションを提供しているが、私たちのインフラとサポートによる完結したソリューションは、あらゆる面でオープンであり、企業の成長とその変化するITニーズに容易に答えることを可能にする。
クラウドベンダがハードウェアベンダやSIerの直接の競合となる
プライベートクラウドの構築は、あらゆるサーバベンダ、ストレージベンダ、ネットワーク機器ベンダ、ソフトウェアベンダ、SIerらにとって有望な市場と考えられています。デルやヒューレット・パッカードはサーバの付加価値として熱心にプライベートクラウド構築ソリューションを提供しようとしています。VMwareやマイクロソフトなど、ソフトウェアベンダも同様にプライベートクラウド構築ソリューションを提供しようとしています。
しかしそこに、どの企業よりもクラウドの構築ノウハウ、運用ノウハウを保有しているパブリッククラウドベンダーが、ソフトウェアとともに参入してくるのです。
いままでクラウドベンダは、既存のハードウェアベンダやソフトウェアベンダにとって、パブリッククラウドvsオンプレミスのような構図の間接的な競合ではあっても、製品選択やシステム構築の場面で直接競合することはなかったはずです。しかしそれが、自社のノウハウとソフトウェアをたずさえてプライベートクラウド構築の市場に参入してきました。
そういえば先月には、Amazonクラウドが企業向けクラウドストレージ「AWS Storage Gateway」を発表しています。これもストレージベンダの製品やバックアップ/ディザスタリカバリ製品と競合するものといえます。
いまやソリューションの一部、もしくは全部としてクラウドは欠かせないものとなっており、そしてそのノウハウをどこよりも持っているのがパブリッククラウドベンダです。そのパブリッククラウドベンダが、自社のノウハウやソフトウェアをクラウドサービスとしてだけでなく、さらに幅広いソリューションとして提供できることに気がつき、実際に展開をはじめたように見えます。
だとすれば、クラウドベンダがクラウドのサービスプロバイダの枠を越えて新たな競合を引き起こす場面は、これからさらに増えていくのではないでしょうか。