PR:サイボウズが構築した、企業向けクラウドの中身とは?
昨年の11月、サイボウズは独自開発したパブリッククラウド「cybozu.com」で、クラウド市場への参入を宣言、サービスの提供を開始しました。提供されるサービスは、クラウド用に新規開発した「kintone」と、Webベースのグループウェアである「サイボウズOffice」「Garoon」。この3つを手始めに、今後さらにサービスを充実させていくと発表しています。
グループウェアで成功し成長してきたサイボウズは、なぜクラウドへの参入を決意したのか。独自開発のクラウドとはどのようなものなのでしょうか。
サイボウズ代表取締役社長 青野慶久氏と、同社のクラウド開発責任者である執行役員CTO 山本泰宇氏に話を聞きました。聞き手はPublickey 新野淳一です。
クラウドへの参入は2年前に決断していた
──── 「サイボウズはクラウドの会社になります」と、青野さんはcybozu.comの立ち上げに際して宣言されています。いつからクラウドへの転換を考えていたのですか?
青野 サイボウズは、データセンター事業者さんと連係してソフトウェアを提供する、いわゆるASPには10年前から取り組んでいました。着実に売り上げはあがっていましたし、利益率もよかった。
でも2年ほど前から市場の雲行きが変わってきました。クラウドが登場し、SaaS(Software as a Service)が注目され、モバイルデバイスの普及も始まってきて、新しい流れが始まっている。そこでクラウドへ全面的にシフトする体制にしました。
──── すでに2年前に決断されていたと。
青野 そうです。それも、例えば他社のクラウドインフラに依存してしまったら、提供できるサービスの原価がそこで決まってしまいます。だから自社でインフラから技術を持ってやらなければならないと考えました。当時、ここにいる山本がそこまで含めてコミットすると、言ってくれました。
サイボウズにとってクラウドの「cybozu.com」は、「サイボウズOffice」「Garoon」というサイボウズの2本柱に、クラウドネイティブに開発した「kintone」を加えた全社規模のビッグプロジェクトです。これまで2年間、売り上げゼロの部門に多くのスタッフを投入してきましたから、いったいどれだけつぎ込んだか分かりません(笑)
青野 クラウドで企業向けのシステムは大きく変わります。単に既存のシステムがクラウドに載るのではありません。例えば音楽は、CDというパッケージをお店で買う時代から、オンラインストアで1曲ごとに数百円で買う時代になろうとしています。このまま企業向けシステムだけが、SIerに依頼して巨大なシステムを作り続ける時代が続く、ということはないでしょう。
ファストフードで食べ物を買ったり、ファストファッションで安価によい品質の服が手に入るように、これからはアプリケーションを調達する体験そのものがファストになります。そのためにクラウドが必要なのです。
ただしクラウドといっても、サイボウズのクラウドはFacebookのような何億人ものコンシューマが同時に使うようなものではありませんし、財務会計のような基幹向けのシステムでもありません。企業や組織がコラボレーションのプラットフォームとして使うことを前提として最適化した設計になっています。
最初から企業向けのクラウドとして設計
──── そのサイボウズのクラウド、特徴はどのようなところにありますか?
山本 インフラからサイボウズで構築していますので、ハードウェア、ソフトウェアのバージョンアップのタイミング、セキュリティ、そしてコストなどを他社任せではなく自分たちできちんとコントロールできる。こうしたインフラのあり方が特徴の1つ目と言えると思います。
また、最初から企業向けのクラウドとして設計したので、まず日本企業のお客様が安心してご利用いただけるように、国内のデータセンターを選択しています。クラウドのコストはサーバなどのハードウェアコストよりも人件費のような運用コストの方が大きいので、徹底的な自動化を進めて原価を下げています。
一般にクラウドというとコンシューマ向けの無限に近いスケーラビリティを持つクラウドを想像されがちですが、サイボウズのクラウドはアプリケーションのレイヤでも企業のニーズをきちんと満たそうとしています。
例えばコンシューマ向けクラウドのアーキテクチャでは企業ごとにバックアップやリストア、監査ログなどを実現するのは難しいと思いますが、cybozu.comではそういったものを最初から想定して、Office、Garoon、kintoneなどを利用していてもまとめて監査ログが見られるようになっています。
テナントごとにソフトウェアリソースを分離でき、サービスセットを横に展開して、満杯になったら次のシステムに展開できるようなアーキテクチャになっています。こうした企業向けに構築されたクラウドである点が2つ目の特徴です。
お客様ごとにセキュリティ設定、利便性はそのまま
山本 一方でcybozu.comでは、利用するユーザーは契約していただいたユーザー数が上限で、たかだか数万から数千人とあらかじめ分かっていますから。コンシューマ向けクラウドのような無限に近いスケーラブルを実現するアーキテクチャをとっていません。
セキュリティの面では、お客様ごとにサブドメインを設定し、FQDN(Fully Qualified Domain Name)ごとにセキュリティポリシーを設定できるようにしました。お客様ごとの専用のログイン画面や常時SSLだけでなく、IPアドレスによる制限、ベーシック認証も無料で利用できます。
さらにオプションで、個人ごとに発行できるクライアント証明書がインストールされているマシンのみアクセスを許可する機能もあります。これらをお客様に合わせて組み合わせ、管理者には負担がかからず、利用者の利便性は下がらないようなセキュリティを設定できる点はメリットとして理解していただきやすいですね。
今後はお客様ごとにCA(Certification Authority、認証局)を立てるといったことも検討しています。
──── 多くのクラウドでは汎用のIaaSがあり、その上にPaaSやSaaSとしてアプリケーションを構築していますが、cybozu.comはサイボウズのアプリケーション専用基盤としてIaaSのレベルから設計されているところがユニークな点に見えます。
青野 たまに、サイボウズのクラウドのIaaSを使わせてほしい、というお問い合わせをいただくのですが(笑)。IaaS型クラウドは提供していませんからね。
山本 汎用のIaaSを用いずに企業向けのWebアプリケーションに特化したものになっていますから、かなり効率のいいものになっていると思います。
──── そのクラウドインフラの上に、サイボウズOffice、Garoon、kintoneが乗っている。
山本 実はサイボウズOfficeやGaroonをcybozu.comに乗せることにしたのは2011年の6月か7月くらいからでした。非常に短期間で実現できました。
Kintoneについては、お客様が最初に触ってから業務に役立つものがどれだけ早く開発できるか、という部分にこだわっています。開発する人がお客様と対話したら、2時間で「こんな感じですね」と見せられるものが作れるようにしたかった。
Kintoneで大事にしたのは、APIをちゃんと用意するという点ですね。データへのクエリについても、内部のスキーマを考えて、クエリのシンタックスも定義して、それによって検索や演算ができるようにと。
青野 APIでレイヤを分けるというのはすごくいい設計で、スマートフォン用のアプリとかそういうのがすごく作りやすい。いい商材になると思っています。
サイボウズのシステム情報部門もクラウド化で喜んだ
──── サイボウズのクラウドの特徴について主に聞いてきましたが、これらのサービスをお客様にはどう役立ててほしいと考えていますか?
青野 cybozu.comで、企業がグループウェアや情報共有をするための信頼に足るプラットフォームができました。短期的には、グループウェアを切り替えるタイミングがあれば、ぜひクラウドを使っていただきたいと思います。
その先、中長期的には、組織の壁や端末の種類の壁などをとっぱらっていけるコラボレーション基盤になっていきたいですね。コストの面で有利なだけでなく、モバイルにもすぐいける、kintoneならiPadからもアクセスできるアプリケーションもすぐ作れます。
当社も社内システムをcybozu.comに移行していますが、情報システム部門はクラウドへ移行したことを喜んでいます。いままでGaroonなどが社内サーバのリソースをずいぶん使っていて運用に苦労していたのが、cybozu.comにしたおかげで運用の手間から解放され、これまでオンプレミスで運用していたときよりも信頼性があがり、稼働率も高くなりました。
──── 製品を使い倒しているはずの御社の情報システム部門もクラウドに移行したことで喜んでいるというのは意外な感じがします。
青野 もちろん、いわゆるドッグフードではありませんが、まっさきに最初のバージョンを自社で試すなどしており製品の利用では問題ないのですが、バックアップや負荷があがったときの機材増強やチューニングは手間がかかっていました。
──── 情報システム部門がそういう手間から解放されて、本来の仕事ができるようになると言えますね。
青野 そう思います。クラウドの時代には、いままでのようなシステムの作り手の都合で大きなシステムを高いお金をかけて構築するというのは通用しなくなって、お客様が「こういうシステムがほしい」という要求にいかに素早く、低コストで答えられるかが試されるようになります。
これは、IT業界が本当のサービス産業になっていく過程なのだと考えています。
──── ありがとうございました。
(本記事はサイボウズ株式会社提供のタイアップ記事です)
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