シスコ、OpenStackディストリビューションを無料で提供開始。OpenFlowに背を向けNorthbound APIによるSDN戦略へ
シスコは、オープンソースとして開発されているクラウド基盤ソフトウェア「OpenStack」のシスコ製ディストリビューションを開発、無償での提供を開始しました。
このディストリビューションは、先月末にリリースされたOpenStackの最新バージョン「Folsom」をベースにシスコが開発したもの。OpenStackのネットワーク機能を担当する「Quantum」の部分にはシスコのネットワーク機器を管理制御できる機能が追加されているのが特徴です。
OpenStackのQuantumは、いわゆるNorthbound APIを代表する実装の1つ。
Quantumは、その下位レイヤに機能を追加できるプラグイン構造となっており、QuantumのAPIからシスコのルータなどのさまざまなネットワーク機器や仮想スイッチなどが操作できることになります。
QuantumにはシスコだけでなくNiciraなどほかのネットワークベンダもプラグインの開発を進めており、Quantum APIを操作することでベンダに関係なくネットワークに対する制御、管理などが実現する見通しです。
Northbound APIを通じてSDNを実現する戦略
ITBusinessEdgeが掲載した記事「Inside Cisco's Open Source OpenStack」で、シスコのCTO Lew Tucker氏はシスコがOpenStackを開発する理由を次のように述べています。
"One of the real reasons why Cisco is involved in OpenStack is to expose capabilities that we will have in our infrastructure today and going forward up into the application world," Tucker said.
シスコがOpenStackに関わる本当の理由の1つは、現在の弊社のインフラストラクチャー機能を(Quantumを通じて)外部へ利用可能にすること、そしてアプリケーション開発者の世界へ向けて解放していくことです。
"It's not just network operators that have programmatic access into the infrastructure now, application developers have programmatic access into the infrastructure."
ネットワーク管理者がプログラム的にインフラストラクチャへアクセスできるようになるだけでなく、アプリケーションのデベロッパーもプログラム的にインフラストラクチャを使えるようになる
シスコは、Software-Defined Networkの技術として盛り上がっているOpenFlow について前向きな態度をほとんど示していません。それはOpenFlowに対応することでネットワーク機器の機能が標準化されてしまい、差別化が難しくなることに対する抵抗の表れです。
そのシスコのSoftware-Defined Network戦略として今年6月に発表されたCisco ONEは、おもにソフトウェアのSDKを通じたAPIによってネットワークを制御しようというものでした。そして今回のOpenStackディストリビューションの発表も、QuantumのようなAPIを通じてネットワークを制御する方法を採用しています。
OpenFlowが盛り上がる中でシスコのSoftware-Defined Network戦略は一貫してOpenFlowに背を向け、仮想アプライアンスも含むネットワーク機器は独自のものにしたままNorthbound APIで柔軟に制御するアプローチをとっています。
以前の記事でも紹介したように、今後Northbound APIをめぐる動きは活発化していきそうです。ネットワーク業界最大手であるシスコのSoftware-Defined Network戦略は、Northbound APIの標準化における重要な鍵を握るものとなるかもしれません。
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