OpenFlowブームの中心にいたNiciraは、なぜVMwareの買収を受け入れたのか? マーティン・カサド氏「ネットワーク業界を変えるチャンスだと考えた」
昨年からネットワーク業界でもっとも熱いキーワードとなっているのが「OpenFlow」。そのキーワードと共に注目されてきたのが、OpenFlow策定の中心的な役割を果たしてきた企業、Nicira Networksでした。
そのNiciraは今年の2月にステルスモードを抜けて戦略や製品を正式に発表し、日本国内でも製品発表を行ったばかりだというのに、7月にはVMwareによる買収が発表されました。
あまりにも早いタイミングでの買収に、多くの業界関係者も「なぜ?」と首をかしげていました。
Niciraはなぜ買収されることを決断したのか? 同社の共同設立者でありCTOのマーティン・カサド(Martin Casado)氏が、先週行われたVMworldのイベント会場でのインタビュー番組「The Cube」の冒頭で、その問いに答えています。抄訳をここで紹介しましょう。
ずっと「ネットワーキングを変える」ことにフォーカスしてきた
インタビュアー アントレプレナーとして、VMwareによる買収に関して何が起きたのか? 教えてくれませんか?
カサド氏 私はずっと「ネットワーキングを変える」ということにフォーカスしてきました。5年前に会社を立ち上げてから、最初の3年間はコアテクノロジーの開発に注力してきました、そして去年は顧客とのやりとりが中心となり、多くの時間を製品化、サポート、改良などに費やしてきました。これが買収へと自然につながっていったのです。
というのも、小さなスタートアップにとって、マーケットはとても巨大であることに気がつきました。ですからより大きな企業にジョインすることは歓迎すべきことでした。
インタビュアー しかしどんなアントレプレナーであっても、「いや待て、これは正しい決断なのだろうか?」という瞬間があるのではないですか?
カサド氏 私にとってビジネス面でのゴールとは、どれだけネットワーキングを変えたか、です。コアテクノロジーを開発し、顧客を得て、マーケットへ展開していく中で、いかにそのインパクトを最大化できるかを考えたとき、仮想化ポートの数の面でいえばVMwareは業界でもっとも最大のネットワーキングベンダだと言っていい。だとすれば、これはネットワーク業界を変えるチャンスだと考えたのです。それはこの地球全体におよぶスケールのインパクトなのです。
カサド氏の正直な告白ではないか
Niciraの買収額は約10億ドル、日本円で約800億円という巨額なものでしたから、一部では「お金につられたか?」といういじわるな見方もありました。しかし、ネットワーキングを変えるために大きな企業にジョインする、という説明は筋が通っているように思えます。
もちろんベンチャーキャピタルから投資を受けたスタートアップの創業者として、VMwareから大きな買収額の提示を受けたことは判断材料の大事な要素であったでしょう。しかし、Publickeyが昨年11月にステルスモードだった同社に世界で初めてインタビューを行ったときに話をしたカサド氏の印象は、見るからに誠実で頭のいい技術屋でした。ですからカサド氏が、VMwareに買収されることで自分のゴールに近づくと考えたことは、彼の正直な告白なのだろうと思っています。
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