OpenFlowベンチャーのNicira Networksがステルスモードを解除、製品戦略を明らかに
新しいネットワーキング技術の標準「OpenFlow」に対応した製品を提供するベンチャー企業「Nicira Networks」がステルスモードを終了し、製品戦略などを明らかにしました。
同社は、OpenFlowの開発に関わったスタンフォード大学のNick McKeown(ニック・マキューン)氏やMartin Casado(マーチン・カサード)氏らが創業した企業として非常に注目されていました。しかし、顧客にフォーカスしたいなどの理由で、外部に情報を提供しない、いわゆるステルスモードで活動を続けていたため、これまでどのような製品やソリューションを提供しているのかは伏せられたままでした。
それが逆に同社への注目を増していた面があるのですが、今回そのステルスモードが終了、製品戦略などが明らかになりました。
Publickeyは昨年、ステルスモードにもかかわらず世界で唯一、同社へのインタビューを二回実現しています。
- インタビュー:ネットワーク仮想化で注目される米ベンチャーNicira Networksが実現しようとしていること
- インタビュー:OpenFlowによってネットワーク業界に何が起きるか? (前編)
- インタビュー:OpenFlowによってネットワーク業界に何が起きるか? (後編)
これらのインタビューで得た内容と今回公開された情報を基に、同社の製品とソリューションの解説を試みましょう。
ネットワーク仮想化を実現するソフトウェアを提供
Nicira Networksが実現しようとしているのは「ネットワーク仮想化」です。
ネットワーク仮想化とは、物理的なネットワークを基盤にして、その上に仮想的な複数のネットワークを作り出すものです。ちょうど、サーバ仮想化が1台の物理的なサーバの上に複数の仮想サーバを作り出すのに似ています。
それぞれの仮想ネットワークは完全に分離され、それぞれが異なる機能、性能、セキュリティポリシーなどを持つことができます。これにより、データセンターのネットワークを、アプリケーションごと、利用組織ごと、重要度ごとなどに分けて、効率的に、安全に、機能的に利用することが可能になります。
ネットワーク仮想化を実現するのが、同社のソフトウェア製品群「Nicira Network Virtualization Platform」(NVP)です。NVPには、OpenFlowコントローラとなる「NVP Controller Cluster」と、ハイパーバイザ上で動作する仮想スイッチソフトウェア「Open vSwitch」が含まれています。
同社は以前からオープンソースによるOpenFlowコントローラのNOXを開発していましたが、NVP Controller ClusterはNOXとは異なるソフトウェアのようです。少なくとも機能面で見てNVP Controller ClusterはNOXとは異なり、大規模ネットワークに対応するためのクラスタ機能とスケーラビリティ、耐障害性を備え、サードパーティによる機能拡張を可能にするなど、高度なソフトウェアになっています。
Open vSwitchは、OpenFlowに対応した仮想スイッチ。サーバ上で実行します。
Nicira Networksのソリューションは、NVP Controller ClusterからOpen vSwitchに対してさまざまなコントロールを行うことで、ネットワークの仮想化を実現します。
既存のネットワークそのままで仮想化へ
同社の特徴は、仮想ネットワークを作り出すためのアーキテクチャに、より強く表れています。
同社のアーキテクチャでは、ネットワーク全体をOpenFlowでコントロールすることはしません。既存のIPネットワークの上に、Open vSwitchのトンネリング機能を使って仮想ネットワークを作り出します。
1つのトンネリングが1つの仮想ネットワークにほぼ該当します。トンネリングはOpen vSwitchのGRE(Generic Routing Encapsulation)などを使うため、IPネットワークでさえあればどんなネットワークの上にでも仮想ネットワークを作り出すことができるのです。
同社の拡張を含むOpenFlowのさまざまな機能を使って、このトンネリングの制御およびトンネルの中を流れるフローを制御することで、仮想ネットワークとその上の機能やサービスを作り出すことができます。
既存のネットワークは一切変更することなく、そこにソフトウェア(とそれを実行するためのIAサーバ)を追加するだけでネットワーク仮想化を実現できるため、利用者は既存の環境を維持し、使い続けたままネットワーク仮想化を導入することができます。
同社はこれをもって自社のことを「Most Disruptive, Non Disruptive company」(最も破壊的で、しかし何も破壊しない企業)という言葉で表現しています。ネットワーク仮想化という非常に大きなインパクトの技術を、既存のネットワーク資産はそのままで導入できる、という意味です。この導入の容易さが、同社にとって非常に大きな差別化要因と見られます。
Nicira Networksは日本国内でも東京エレクトロンデバイス、日商エレクトロニクスと代理店契約を結んでおり、すでにビジネスを開始しています。またNTTとも密接な関係を結んでおり、昨年の8月には仮想ネットワーク構築の実験について共同でプレスリリースも出しています。日本は世界の中でもOpenFlowへの注目度が高い市場でもあるため、今回のステルスモード終了を受けて、日本国内でも本格的な活動を開始することになるでしょう。
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