Java EE 7はスケジュールを優先してクラウド機能を先送りの模様

2012年9月12日

今年中のリリースが予定されているJava EE 7。最大の目玉はPaaS型クラウド機能を搭載することでした。しかし、その機能の開発に遅れが生じており、Java EE 7への搭載が見送られそうです。

Java EE 7 Roadmap (The Aquarium)

InfoQの記事「Oracle が Java EE 7 計画からクラウドサポートを削除」でも報じられていますが、Java EE 7の仕様リードであるLinda DeMichiel氏が8月30日に公開したブログの記事「Java EE 7 Roadmap」には、こう書いてあります。

Despite our best intentions, our progress has been slow on the cloud side of our agenda. Partially this has been due to a lack of maturity in the space for provisioning, multi-tenancy, elasticity, and the deployment of applications in the cloud.

最善を尽くしてきたとはいえ、クラウド関係の予定について、進捗は遅れています。その理由の一部は、プロビジョニング、マルチテナンシー、伸縮性(エラスティシー)、そしてクラウドでのアプリケーションのデプロイなどがまだ成熟さに欠けるためです。

Linda DeMichiel氏は、昨年10月のJavaOneで基調講演に立ってJava EE 7の新機能を華々しく紹介していました。

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しかし彼女は先のブログで、このままではJava EE 7のリリースが2014年の春にまで延びてしまう懸念があるため、PaaS機能はJava EE 8へ先送りしたらどうかと提案しています。

InfoQの記事によると、他のJava EE関係者もこの提案に賛成していることから、Java EE 7はスケジュールを優先し、PaaS機能の搭載は見送られることになりそうです。

延期することでクラウドの経験を多く積むことができる

PaaS機能はJava EE 7の目玉機能だったことは先ほども書きました。これが実現すれば、Java EEがクラウド基盤となる革新的な機能として期待されていました。

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Java EE 7のクラウド機能は先送りになりそうな見通しではありますが、オラクル自身はすでに今年の6月、Oracle Cloudの正式サービスを開始し、そこでJava PaaSの提供を始めています

このJava PaaSは基本的にはIaaSが提供する仮想マシンのレベルでマルチテナントを実現し、その上に同社のWebLogic ServerとJava EE 6を用いたアーキテクチャになっています。オラクル以外にも、Java PaaSを提供するベンダは複数ありますが、どれも基本的にはこのようなアーキテクチャを採用しています。

Java EE 7がチャレンジしたのは、このマルチテナント機能をJava EEのレベルに組み込むことで、より高効率なクラウドを実現することでした。

しかしそれには、Java EEのテナントごとにIDやメタデータを用意するという大きなアーキテクチャ変更が必要であり、そのチャレンジに予想以上の時間がかかっているわけです。時間がかかってしまっている理由はLinda DeMichiel氏がブログに書いたように、「lack of maturity」、つまり、まだこの分野の技術も、それを開発する技術者にも十分な成熟さが足りなかったためでした。

Java EEのPaaS機能の実装スケジュールを延期することで、クラウドの経験を多く積むことができる。Linda DeMichiel氏はスケジュール延期のメリットについて、ブログに以下のように書いています。

It allows Java EE Platform vendors to gain more experience with their implementations in this area and thus helps us avoid risks entailed by trying to standardize prematurely in an emerging area.

(延期することで)Java EEプラットフォームベンダはこの領域(クラウドの領域)の実装でより多くの経験を積むことができる。その結果、この新しい領域において未成熟な標準化をしてしまうといったリスクを避けることができるだろう。

Java EE 8は現在のところ、2015年春がリリースターゲットになっています。

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Junichi Niino(jniino)
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