IT業界の平均給与ランキングで、Publickeyと日経コンピュータの結果が食い違っている件について
IT系上場企業の平均給与を調査した先月末のPublickeyの記事は非常に大きな反響をいただきました。
その先月末の記事で紹介したSIer/システム開発関連企業の平均年間給与ランキングのトップ5は以下でした。
そして今月10日には、日経コンピュータもほぼ同様のITサービス企業の平均年間給与をランキングで紹介する記事」を、「シンプレクスHDが平均年間給与で首位」というタイトルで報じています。
この時期にこうした記事が作られるのには理由があります。それはだいたいどの上場企業も6月に株主総会が終わり、最終的な決算が承認され、有価証券報告書が公開されるためです。その情報を集めた記事が、だいたい7月とか8月にあちこちから出てくる、というわけです。
日経コンピュータによる主要な国内ITサービス企業の平均年間給与ランキングのトップ5を以下に引用します。
同じテーマの記事が別の媒体から出てくれば、「お、他誌はどう報じているのだろう」と気になるのが人情。どれどれ。
両者のいちばん目立つ違いは、日経コンピュータのランキングトップに「シンプレクス・ホールディングス」が入っていること。野村総研や三菱総研に150万円以上の差を付けてトップ。記事のタイトルにも入っていますし、記事によれば昨年に続き2年連続のトップです。
この企業、Publickeyでランキングをまとめたときを思い出してみても記憶に残ってなかったので、「こんな立派な企業を見逃すとは、調査が足りなかったのかな。来年のPublickeyのランキングではちゃんとチェックしておこう」と、念のためシンプレクス・ホールディングスの有価証券報告書を見てみることにしました。
この会社、持ち株会社で社員が3名しかいない!
さっそくEDINETで表示されたシンプレクス・ホールディングスの有価証券報告書から、従業員数、平均年齢、平均年間給与の部分を引用したのが以下。
これを見るとこの会社、社員が3人しかいません。どう見ても持ち株会社です(名前もそうですし)。その平均給与の値が、日経コンピュータのランキングで掲載されている給与と一致します。むむ、日経コンピュータは野村総研や三菱総研など事業会社の平均給与と、持ち株会社としてのシンプレクス・ホールディングスの(しかもわずか3人の)平均年間給与を比較してトップであると報じているようです。
ちなみにシンプレクス・ホールディングスの連結対象企業の従業員数は、有価証券報告書によると609人。
シンプレクス・ホールディングスがPublickeyのランキングに入ってこなかった理由も分かりました。予備調査のために使っているYahoo! ファイナンスの同社のデータでは、平均給与が742万円だったためです。このデータは東洋経済新報社の「会社四季報」を元にしているので、東洋経済新報社が独自に連結会社を含めた事業会社としての実態を調査したのかもしれません。
また、Publickeyのランキングでは持ち株会社をランキングから除外しています。
日経コンピュータは、僕が年間購読している唯一のIT誌で、その内容も信頼しています。ただ今回のこのランキングで持ち株会社を並べてしまうというのはミスリードではないかと思うので、持ち株会社であると注釈を入れるか、次回はランキングからはずすか、などされた方がいいのではないでしょうか。あるいはもし、事業会社としての社員の平均給与が(日経コンピュータの独自調査により)ランキングの通りであればこの指摘はあたらないので、その際は大変申し訳なく思います。
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