シスコが提案するInternet of Thingsのためのアーキテクチャ「フォグコンピューティング」
おもに人がコミュニケーションを行うためのネットワークとして進化してきたインターネットは、これからスマートフォン、テレビ、ゲーム、自動車、さまざまなセンサーなど、モノがつながるためのインターネット、いわゆる「Internet of Things」(IoT)へ進化するといわれています。
シスコシステムズの専務執行役員 木下剛氏は10月23日に行われた同社の事業戦略説明会において、IoT時代のインターネットではこれまでと異なるネットワークアーキテクチャが求められると指摘。そのために「フォグコンピューティング」という新しいネットワークの構造を提唱しました。
IoTは異常だった状態が正常になる
モノがつながるインターネットは、従来のインターネットと異なる点が2つあると木下氏は指摘します。その1つ目はネットワークのスケールが格段に大きくなることで、IPv6が必須になること。
「まだ世の中にあるものの99%はインターネットにつながっていない。これをつなげようとするとIPv4では明らかに足りない」(木下氏)
それ以上に大きく異なるのが、要求されるネットワークの機能だと木下氏。
「ネットワークの機能がパラダイムシフトしなければいけない。従来のネットは常時接続が前提で、人や端末が安定的に利用できる環境をネットワークが保証するために、途中で接続が切れたら別の経路へすばやく切り替えて、つねにネットワークが接続されるようにしていた。
しかし例えばセンサーを考えてみると、ふだんセンサーは寝ていて、必要なときだけネットワークにつながる。つまりネットワークの利用が常時接続を前提とした安定的なネットワークを作るという発想から、ふだんは接続が切れていて必要になったらつなげるという、従来は異常だった状態が正常になる。そこが大きなポイント」
そこで木下氏は、スケールの違い、ネットワークの挙動の違いに対応したアーキテクチャとして「フォグコンピューティング」を用いたIoTのアーキテクチャを示しました。
「クラウドのデータセンターが、コンピューティングとネットワークを組み合わせて集中的なシステムを提供するものだとすれば、IoTではクラウドでうまくいっていることをうまくエッジに分散させる。ルータやスイッチとコンピューティングを融合することで分散処理をしましょうというもの。例えば気象情報なら、気象センサーの情報をその地域で分散処理すれば、必ずしもクラウドへ集めなくても気象予報ができる。
気象関係のモニタリングや都市部における交通情報をカーナビにフィードバックする、といったときにフォグコンピューティングが使えるのではないか」(木村氏)
日本に「IoTインキュベーションラボ」開設
シスコはすでに10年ほど前からこの分野に取り組んでおり、IoT向けにIPv6をベースにした新プロトコルを開発。例えばネットワークの正常状態と異常状態を逆転させるRPL、センサーなどが発する数十バイトという非常に小さいパケットの処理を効率化する6lowpanなどを開発してきたとのこと。
同社はこうしたIoTの活動のために「Internet of Thingsインキュベーションラボ」開設を発表しました。
「IoTインキュベーションラボでは、技術的にはメドがついたので、いかに使ってもらうかという普及実用に取り組む。IoTのためのエコシステムのプレイヤーが日本は充実しているため、クラウドプロバイダやセンサーを作っているメーカーなどとコラボレーションしながら、新しいインターネットの時代を創っていきたいと考えている」(木村氏)
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