日本オラクル、ついに国内でパブリッククラウドの提供を開始。「Fusion Applications」をSaaSで
日本オラクルは、業務アプリケーションスイートの「Oracle Fusion Applications」をパブリッククラウドのサービスとして国内で提供開始すると発表しました。
Fusion Applicationsは、オラクルがこれまで提供してきたさまざまな業務アプリケーション、E-Business Suite、Peoplesoft、JD Edwards、Siebel、Hyperionなどの機能をすべてJavaとSOAを用いて実装し直すとともに機能強化し、Java EEに対応したFusion Middleware上で稼働するようにしたものです。当初の予定では2008年にも完成する予定でしたが開発が遅れ続け、昨年のOracle OpenWorldでようやくエリソン氏自身の口から「来年の第1四半期に出荷予定」と、完成が発表されていました。
Fusion Applicationsは、パッケージソフトで提供するモデルと、パブリッククラウド「Oracle Cloud」のSaaSで提供するモデルの2つの提供モデルがあり、今回はパッケージソフトに先行してクラウドでの提供が国内で開始されます。国内ユーザーとしてLCC(低価格航空事業者)のピーチ・アビエーションのほか、複数の企業で採用されたとのことです。
クラウドで業務アプリケーションを短期導入
Fusion Applicationsは全体として会計、購買調達、プロジェクト管理、人材管理、CRM、SCMをはじめとした多数の製品群から構成されますが、今回提供されるのはその中の3つの人材関係のアプリケーションとCRM関係のアプリケーション。
クラウドサービスがパッケージの提供に先行した理由として、米オラクル Fusion Applicationsプロダクトマネジメント担当バイスプレジデント ダグ・ヒューズ氏は、企業がSaaSとして求めているのが人材関係やCRM関係であり、そうしたニーズに沿って提供を開始したと説明。一方で財務関係などの業務アプリケーションはオンプレミスでの要望が多いと話しています。
業務アプリケーションをクラウドで提供するメリットとして、従来のオンプレミスでの導入で必要だったハードウェアの調達から設定、インストールなどの工程が不要になり、導入期間が短くなる点があげられます。日本オラクル 常務執行役員の鈴木登志夫氏は、2カ月から4カ月程度で業務アプリケーションが導入できる例もあるとしています。
クラウドでも自社ハードでも他社ハードでもかまわない
今回の発表で、ついにオラクルが国内のクラウド市場に参入してきたことになります。それは大々的な参入宣言ではなく、あくまでも業務アプリケーションであるFusion Applicationsの国内提供発表がメインであり、その提供形態としてクラウドを先行して選択した、という控えめな発表でした。
ここにオラクルの現在のアプリケーションに対するスタンス、つまりクラウドかどうかは重要ではなく、アプリケーションが顧客にどのような価値をもたらすかの方が重要であって、デリバリする手段はクラウドでも、オラクルが注力するハードとソフトを垂直統合したシステムでも、他社のハードでも、Javaで作ったからどれでも動くので好きなのを選んでくれ、というスタンスが表れているように思います。
今後オラクルは、クラウド上でのFusion Applicationsの機能追加や、デベロッパー向けのJava EEとOracle Databaseのサービスを正式版へと進めていくことでしょう(もしかしたらデベロッパー向けは年内に登場予定のJava EE 7を待ってから正式サービスとなるかもしれません)。
ちなみにオラクルのクラウドは米国のデータセンターで提供されており、いまのところ同社が日本にデータセンターを置く予定はないとのこと。
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