企業向けDropboxは新たな流行になるか、EMCが「Syncplicity」を買収
TwitterやFacebookが普及したことで、企業内のコミュニケーションツールとしてタイムラインやアクティビティストリームを採用した新製品が一斉に登場したように、いま、PCのファイルやフォルダーをクラウド経由で同期して共有するDropboxのような機能を企業向けに採用したソフトウェアが相次いで登場しようとしています。
ストレージ最大手のEMCは、企業向けファイル同期サービスを提供していたSyncplicityの買収を発表しました。
Syncplicityは、PCやMacなどのファイルをクラウド経由でほかのマシンと同期したり、モバイルデバイスからアクセスできるサービスを提供しています。個人向けのPersonal Editionと企業向けのBusiness Editionがあり、Business Editionでは集中管理機能やGoogle Docs、Sharepoint、セールスフォース・ドットコムなどとの連係機能も提供しています。
買収を知らせるプレスリリースでは、ポストPC時代の戦略のためにEMCがSyncplicityを買収したとのこと。
The addition of Syncplicity also extends EMC’s strategy of enabling the ‘New User’ in the Post PC era, those who want to access, share, collaborate and participate in business processes on their preferred device.
SyncplicityによってEMCはポストPC時代の新しいユーザーへと戦略を拡大させます。彼らはビジネスプロセスに対して望みのデバイスによってアクセスし、共有し、協力し、参加することを求めているのです。
企業向け大規模ストレージベンダというエンタープライズど真ん中に位置するEMCでさえ、コンシューマライゼーションの波に乗らざるを得ない、ということなのでしょう。
VMware、シトリックスはすでに企業買収を行っている
企業向けDropboxの機能を提供しようとしているのはEMC/Syncplicityだけではありません。
VMwareは昨年の8月に、企業向けDropboxのような機能を提供する「Project Octopus」の開発を表明しています。
VMwareのライバルでもあるシトリックスも、昨年10月に「ShareFile」を買収し、クラウドベースのファイル共有機能をデスクトップ仮想化などのポートフォリオに加えています。
これから始まるポストPC時代には、企業内個人が仕事を進めるために、会社のPCや自宅のPC、タブレットやスマートフォンなど複数のデバイスを、用途や場所ごとに使い分けることになると予想されます。すると、複数のデバイス間やクラウドでファイルを同期する機能は非常に重要な機能になります。マイクロソフトが先月、Skydriveを強化したのも同じ流れにあるといえます。
しかし企業の情報システム部門にとって、そうした機能がDropboxやEvernoteなど個人向けのサービスで実現され、社外のクラウドに保存されることを望んではいないでしょう。
そのためにVMware、シトリックス、EMCなどはそうしたDropbox的機能を企業の情報システム部門が提供できるように、買収の手を打っているわけです。
EMCは今後、Syncplicityに対してさらに企業向けの機能を追加するとともに、おそらくEMCのストレージとの連係機能も強化することでしょう。メールやグループウェアがどの企業でもよく見られるコミュニケーションツールとして使われるように、Dropbox的機能も広く企業内で使われるようになっていくのかもしれません。
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