AndroidをめぐるOracle対Google裁判を振り返る(前編)~ Oracleが主張した特許侵害は認められず
「AndroidがJavaの知的所有権を侵害している」としてOracleがGoogleを訴えた裁判が、大詰めを迎えています。主要な争点についてすにでに陪審員の評決が下り、判事による最終的な判断が数日以内に下る見込みです。
ここで、裁判の経過を振り返り、何が争点となり、今までにどのような判断が出たのかを記してみたいと思います。
当初の争点は「特許」、Oracleは請求金額を下げざるを得なくなる
2010年8月12日、OracleはGoogleを訴え、大きな反響を呼びました。この時点でのOracleの主張は「GoogleのAndroidは、Javaテクノロジの7件の特許と著作権を侵害している」というものでした。
同社は数十億ドル規模のお金をこの裁判から得ようとしていたと考えられます。Oracleは、2011年6月28日付けの文書で「同社が26億ドルの損害を被った」との見積もりを記しています。また「14億ドルから61億ドルの金額をGoogleが支払うことになるだろう」との発言が報道されたこともあります。
Googleの反論と裁判所の指導で、Oracleは請求金額を下げることを余儀なくされました。
2011年9月には、Google CEOのLarry Page氏とOracle CEOのLarry Ellison氏が法廷で和解協議に臨んだと伝えられています。2011年9月時点では、Oracle側は11億6000万ドルの賠償を要求、これに対してGoogle側は「2011年末分までの特許使用料として280万ドル、残りの期限についてはAndroidの売上高の0.5%(2012年12月まで)および0.015%(2018年4月まで)」という条件を提示し、結局和解は成立しませんでした。
裁判とは直接関係ありませんが、このGoogle側が提示した条件から、「Androidはあまり儲かっていないことが明らかになった」という趣旨の記事が出ました。Guardian誌が、和解交渉時にGoogle側が提示した金額から逆算して「Androidの売上高は2011年末までの合計で5億5000万ドル」と推定した記事を掲載したのです。
Googleの特許侵害はない、との評決
2012年の4月16日から、サンフランシスコ連邦地裁の法廷で両社は対決することになります。Oracle CEOのLarry Ellison氏、Google CEOのLarry Page氏、同会長のEric Schmidt氏、旧Sun Microsystems社のCEOだったScott McNealy氏、旧Sun最後のCEOであるJonathan Schwartz氏ら、そうそうたる面々が証言台に立ちました。
法廷での争点は、訴訟初期とはかなり違う内容となりました。
訴訟の初期段階でOracleが主要な争点としていたのは特許侵害です。しかし裁判が進むにつれ、Oralce側に不利な状況となっていきます。Oracleが当初の訴状で取り上げていた7件の特許のうち5件は無効との判断が下され、残り2件についても、5月23日の陪審員の評決により「特許侵害は認められない」とされたのです。
- グーグルは特許を侵害していないとの判定--オラクルとのJava関連訴訟にて - CNET Japan
- 「グーグルに特許権侵害なし」の判定 - オラクル対グーグルのJava関連訴訟 - WirelessWire
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(著者の星 暁雄(ほし あきお)氏はフリーランスITジャーナリスト。IT分野で長年にわたり編集・取材・執筆活動に従事。97年から02年まで『日経Javaレビュー』編集長。08年にインターネット・サービス「コモンズ・マーカー」を開発。イノベーティブなソフトウエア全般と、新たな時代のメディアの姿に関心を持つ。 Androidに取り組む開発者の動向は要注目だと考えている)
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