日本の情報システムは頑張りすぎ? 日本企業の計画外停止は年間平均1.6時間、米国企業は12.6時間というデータ
日本企業の情報システムの「計画外停止時間は米国の約9分の1」であることを指摘する記事が、今月の日経SYSTEMS 2012年1月号に掲載されています。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)顧問の細川泰秀氏の「データは語る」という連載の第1回。
米ガートナーの2008年10月のデータによると、米国企業におけるミッションクリティカルなアプリケーションでの計画外停止時間は年間12.6時間。
一方、JUASが経済産業省の委託を受けて調査した「企業IT動向調査2011」(2011年3月発表)によると、日本企業における基幹系システムの計画外停止時間は平均で年間1.5時間なのだそうです。
つまり日本のITの現場は、システムの計画外停止時間を米国の約9分の1にとどめている。
やはり日本の品質は高いと。日経SYSTEMSの記事で、細川氏はこのように書いています。
ではなぜシステム障害の報道がかまびすしいのかというと、日本の情報システムが滅多に停止しないからではないかと思う。頻繁に停止するようなら、「いつものことだ」と慣れっこになってニュースとして扱われない。
うなずく方も多いのではないでしょうか。
信頼性が高すぎて過剰品質になっている?
しかも、データの基になったJUASの「企業IT動向調査2011」を見ると、この情報システムの信頼性はさらに年々向上していることが示されています。このことに関係者は胸を張るべきでしょうし、経営陣はそのことをきちんと評価するように願いますが、一方でJUASは「過剰品質ではないか」と警鐘を鳴らしています(調査結果概要166ページ)。
ここ数年、情報システム部門の予算が増加しているとは言えない中での信頼性向上は、運用部門の頑張りにあることは間違いないでしょう。そのことは調査結果概要の160ページでも指摘されています。
「事業が中断した推定障害発生件数」は低下傾向にある、運用部門の頑張りが障害拡大防止に効果を挙げているといえるのではないか。「金融」は障害の状況を非常に丹念に役員に報告している
コストと品質のバランスを再評価するタイミングか
こうした緻密な運用が行われている基幹系システムが、容易にクラウドへ移行できないことは明らかです。経営から見ても、運用部門が頑張って高品質を維持しているシステムに手を入れることはためらわれることでしょう。
しかし一方で過剰品質が指摘されている面もあることを考えると、あらためて情報システムが提供する価値とは何かに立ち返って、ビジネスに貢献するコストと品質のバランスを考え直す機会なのかもしれません。「もうちょっと品質とコストを落としてもいいのでは?」とは情報部門から言い出すことは難しいでしょう(品質向上が仕事だろ!と言われかねないですものね)が、経営陣にその知恵を授けて判断してもらうことは大事なのではないでしょうか。
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