なぜ米ヒューレット・パッカードは、一挙に16機種ものOpenFlow対応ネットワーク機器を発表したのか
米ヒューレット・パッカードは3モデル16機種のネットワークスイッチ製品群を発表しました。最大の特徴は、全機種がOpenFlowに対応していること。さらに年内にも同社のFlexNetworkアーキテクチャの全スイッチをOpenFlow対応にさせるとしています。
今回発表されたのは、小規模から大規模ネットワークまでをカバーするネットワークスイッチ「HP 3500 yl Switch Series」「HP 5400 zl Switch Series」「HP 8200 zl Switch Series」の3モデル16機種。モデルにより最大10GbEのポートを備え、Power over Ethernet対応、レイヤ2からレイヤ4までをサポートします。
これまで主要なベンダが発表したOpenFlow対応機器は、NECから2機種、IBMから1機種。ブロケードコミュニケーションズシステムズやジュニパーネットワークス、シスコシステムズなども対応は表明しているものの、まだ具体的な製品発表には至っていません。
その中で、今回の米ヒューレット・パッカードが一挙に16機種もの対応を発表したことは、突出した対応だといえます。
ネットワーク機器ベンダにとってOpenFlowの意味とは
ネットワーク機器ベンダにとってOpenFlowへの対応は、ネットワーク機器の新たなオープン化に飛び込むことを意味しています。
ネットワーク機器は、当然ながらイーサネットやTCP/IPといったオープンな標準に対応した相互運用性を備えています。その一方で各ベンダは、自社製品で統一すると、より管理がしやすかったり、拡張機能が使えるようにもしています。
それが差別化要因であり囲い込み戦略の一部でありました。
ところがOpenFlowはネットワーク機器に対して共通の機能とコンフィグレーション用プロトコルを提供します。これによって、(OpenFlowの全機能が実装されていれば)どのベンダの機器であっても共通の機能を横断的に実装できますし、複数ベンダの機器が混在しても、OpenFlow対応のコンフィグレーションツールで全部をまとめて管理できるようになります。OpenFlowは機能拡張、管理、運用の面に大きく踏み込んだオープン化を実現するため、ネットワーク機器ベンダの囲い込み戦略がこれまで以上に通用しにくくなるのです。
すでにネットワーク市場である程度成功している企業にとっては、引き続き囲い込み戦略を維持したいわけですからOpenFlowへの対応は消極的になります。一方で、これからネットワーク市場を攻めようとする企業にとってはいちはやくOpenFlowに対応してオープン化を促進し、既存ベンダの囲い込み戦略を無効化したいと考えるでしょう。
ネットワーク市場のトップを走るシスコがOpenFlow対応について目立った動きを見せていない理由はここにあります。一方で、3COMを買収するなどネットワーク市場で存在感を高めたいと考える米ヒューレット・パッカードが、今回の16機種対応をはじめとした積極的なOpenFlow対応に出た理由も同じです。すでに囲い込みに成功しているベンダに対して、オープン戦略によって対抗しようとしてるのです。
(ところで、もしも日本ヒューレット・パッカードの関係者の方がこの記事をお読みになっているようでしたら、Publickey宛にプレスリリースや記者発表会の案内をこの連絡先までお送りいただけるように、ぜひお願いします。シスコシステムズさま、NECさまにも同様にお願いしたく存じます!)
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