マイクロソフト、Windows Server 8を披露。「Windows Azureから学んだ技術を投入」し、クラウドに最適化したOSに。BUILD 2011

2011年9月20日

マイクロソフトは先週行われたイベント「BUILDカンファレンス」で、Windows 8に続いてWindows Server 8のデベロッパープレビュー版の新機能を披露しました。

同社のサーバ&ツールビジネス担当のSatya Nadella氏は「Windows Azureを含むインターネットスケールのサービスから学んだ技術を投入し、クラウドにもっとも最適化したOSがWindows Server 8である」と説明しました。

基調講演で披露されたWindows Server 8の新機能を見てみましょう。

共有ストレージを簡単にデプロイ

「ストレージアレイをデプロイし、管理するのは特別なスキルセットが必要だった」とは、基調講演でWindows Server 8のデモを行ったBryon Surace氏。

それを解決するのが、Windows Server 8で簡単に共有ストレージアレイを構築する「Storage Spaces」機能。Server Managerを立ち上げ、「File Services」の機能を設定。

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このサーバにはSASで16台のディスクが接続されており、これをまとめて1つのストレージ「Pool」とします。

そしてこの「Pool」から簡単に複数の共有可能な仮想ディスクを作成できます。専用のストレージ管理ソフトなどは不要で、Windows Server 8の標準機能として提供されます。

このサーバはSMB2.2プロトコルで利用可能な共有ストレージアレイとなります。

複数NICをまとめてスループットと可用性を向上

別の仮想サーバから、この共有ストレージアレイに接続します。仮想サーバから2つの仮想ディスクをアタッチ。

このとき、1つの仮想ディスクは、1ギガビットイーサネット経由で接続。

もう1つの仮想ディスクは、Windows Server 8の新機能である「NIC Teaming」を用いて複数のNICをまとめて利用し、スループットの向上と可用性の向上を実現しています。

仮想サーバ上でSQLのトラフィックを発生させ、ネットワークのスループットを見てみると。

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2GByts/s以上の性能をたたき出しています。

このスループットに対して、共有ディスクアレイ側のパフォーマンスメーターを見ると、CPUの使用率は1%程度。

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Windows Server 8ではネットワークベンダと協力し、SMB 2.2プロトコルでRDMA(Remote Direct Memory Access、クライアント側からディスクアレイ側のメモリに直接アクセスしてデータを取得)を行うことで、低レイテンシと低CPU利用率を実現しています。

稼働中に仮想ハードディスクをライブマイグレーション

仮想ハードディスクのライブマイグレーションと、仮想サーバのライブマイグレーションの2つも注目の新機能でしょう。

仮想サーバが稼働中に、その仮想サーバのシステムが格納されているローカルディスク上の仮想ハードディスクを、リモートとなる共有ディスクアレイへ移動できます。Windows Server 8ではリモートの仮想ハードディスクをサポートしています。

Hyper-V Managerを起動し、仮想ハードディスクの異動先を指定。ここでは先ほどの共有ディスクアレイを指定します。

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すぐにローカルからリモートへの仮想ハードディスクの移動が始まります。移動中も仮想サーバは稼働し続けています。

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仮想サーバの実行に影響を与えることなく、仮想ハードディスクを適切な物理サーバに再配置することが可能です

共有ストレージ不要のライブマイグレーション

仮想サーバのライブマイグレーションについては、7月の記事「マイクロソフト、Windows Server 8を初めてデモ。ネットワーク越しにレプリカ作成」でも紹介したように、共有ディスクを使わず、イーサネットでつないだ2台の物理サーバ間で稼働中のサーバを移動する機能を実現しています。

fig 共有ディスクもクラスタ構成も不要。イーサネットでつなげばライブマイグレーションが可能

Hyper-V Managerからライブマイグレーションのウィザードを起動し、異動先の物理サーバの名前や、仮想ハードディスクを保存するディスク名を指定。

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デモでは移動に約30秒程度かかっていました。

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さらに別のデモでは、Hyper-V Networking機能によって構成された「仮想サブネット」を、外部から見えるIPアドレスを変えずにそのままクラウドへ移動する、という機能も紹介されました。

仮想化レイヤから戦うVMware、垂直統合で戦うMSとオラクル

共有ストレージを不要にしたライブマイグレーション、仮想サーバが稼働中でもディスクを再配置できるなど、次期Hyper-Vの機能は今年7月に発表されたVMware vSphere 5の機能をキャッチアップし、それ以上のものにすることを目指しているように見えます。

オラクルも8月に「Oracle VM 3.0」を発表し、VMwareを標的にした姿勢を明らかにしています。

マイクロソフト、オラクルの両社が持つ強味は、それぞれすでにOSやアプリケーションなど上位のソフトウェアレイヤで圧倒的な存在であることです。両社はハイパーバイザによる仮想化レイヤでの機能向上と同時に、それらと上位のソフトウェアレイヤをシームレスにつなぐことをメリットを打ち出そうとしています。オラクルの場合は、さらにハードウェアとの統合もメリットとして打ち出しており、マイクロソフトはWindows Azureというクラウドサービスとの統合を強く意識させています。

一方で、仮想化レイヤでは圧倒的なプレイヤーではあっても仮想化専業ベンダだったVMwareは、Javaフレームワークを持つSpringSourceの買収、クラウド用フレームワークの「vFabric 5」発表、PaaS基盤となるCloudFoundryの提供開始など、急速に上位のソフトウェアレイヤの充実を図ろうとしています。またVMwareの仮想化基盤と互換性のあるパブリッククラウド「vCloud」をパートナーとともに展開し、クラウドとの連携にも取り組んでいます。

仮想化レイヤからアプリケーションレイヤへ戦いを仕掛けるVMwareと、垂直統合の中に仮想化レイヤも取り込もうとするマイクロソフトとオラクル。今年末から来年には、クラウド基盤のためにどちらが包括的なソリューションを実現できるかを焦点に、これまで以上に包括的な競合が起こることになるでしょう。

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