Webブラウザ上でHTML5技術を用い、デスクトップ仮想化のクライアントを実現する製品が登場
デスクトップ仮想化とは、Windows OSやアプリケーションなど、通常は利用者の目の前にあるデスクトップPCやノートPCなどで実行するソフトウェアを丸ごとサーバ内の仮想マシン上で実行し、それをリモート接続して利用することです。
デスクトップ仮想化によって、デスクトップPCのハードディスククラッシュでデータを失わないようにバックアップをとったり、ノートPCを紛失して情報漏洩が起きないように暗号化をしたり、セキュリティホールを突かれないように利用者がちゃんとOSにパッチを当てているか管理者がいちいちチェックしたり、といったデスクトップ管理の手間を削減することができます。
デスクトップ仮想化を実現するクライアントは、専用のソフトウェアかハードウェアとして存在しますが、米ERICOMがβ版を公開した「HTML5 client for VMware View」はこれをHTML5のCanvasとWebSocketを用いてWebブラウザ上で実現しています。ブラウザが動作すれば、どんなデバイスでもデスクトップ仮想化を利用できるようになります。
HTML5でデスクトップ仮想化クライアントを実現
「HTML5 client for VMware View」では、VMwareのデスクトップ仮想化サーバ「VMware View」のクライアントとしてWebブラウザが利用可能になります。対応ブラウザはLinux、Windows、MacのChrome、Safari、FirefoxなどのHTML5対応ブラウザ。当然ながら、JavaもFlashもSilverlightも使っておらず、x86、ARMなどのCPUにも依存しません。おそらくiPadやAndroidタブレットなどでも動作すると考えられます。
HTML5 client for VMware View自身はゲートウェイのように働き、VMware Viewからの通信を受けてそれをSSLに変換し、Webブラウザへ送り、逆にマウスやキーボードの情報をWebブラウザから受け取ってVMware Viewへ知らせています。
Webブラウザさえあれば何でもできる、へ
手許のデバイスに依存せずいつでも自分の環境をサーバから呼び出せるというデスクトップ仮想化が実現しようとしている環境は、ネットワークにつながったWebブラウザさえあればいつでもメールや業務アプリケーションを呼び出せるという、Webアプリケーションが実現しようとしている環境と重なっており、両者は同じ市場を取り合う競合関係にあります。
多くの企業は現在の現実的なソリューションとして、いま利用しているOfficeなどのデスクトップアプリケーション、クライント/サーバ型の業務アプリケーションなどをサーバで集中管理するためのソリューションとしてデスクトップ仮想化を採用しています。しかし将来、Officeアプリケーションも業務アプリケーションもWebブラウザで動作するようになれば、デスクトップ仮想化は不要でWebブラウザさえ動作すればよくなるでしょう。
ERICOMのソリューションは両者を現時点で融合させ、Webブラウザさえあればデスクトップ仮想化も、Webアプリケーションもどちらも利用可能にするものです。
Webブラウザからリモートデスクトップを利用可能にするソリューションは以前から数多くありました。HTML5が広まり、Canvasによる高速な画面描画やWebSocetによる自由度の高いプロトコルが利用可能になることで、さらに高度化しつつ一般的なものになっていくことでしょう。
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