Webブラウザでの日本語縦書き表示、順調に進行中。年内には実装の見通し
縦書きやルビといった日本語組み版をWebブラウザや電子書籍などで実現するための仕様策定が、Web標準を策定しているW3Cや、電子書籍の標準を策定しているIDPFなどで進行していますが、それに合わせてWebブラウザでの実装も進んでいることが発表されました。
発表は、総務省、平成22年度「新ICT利活用サービス創出支援事業」(電子出版の環境整備)の「EPUB日本語拡張仕様策定」を受託したイースト、共同提案者の日本電子出版協会、アンテナハウスの連名で行われており、このプロジェクトによりSafari、ChromeなどのWebブラウザ、iBooksなどの電子書籍ビュアーなどで日本語組み版の実装が進んでいることを次の画面で紹介しています。
年内には日本語組み版が実装される見通し
発表された画面は、WebブラウザのレンダリングエンジンとなるWebkitの開発中のビルドを用いて行ったもの。縦書き、ルビ、圏点(傍点)、縦中横(縦組みの文字の中に、一部横組みの文字が入る)などの表示が実現されていることが分かります。またこれ以外に、行送り禁則なども実現されています。
圏点の点の形が横書き用のものを回転させているために不自然だったり、行末の揃いがまだ不自然だったりと課題も残っていますが、実用的なレベルに近づいてきていることがこの画面から十分に伝わってきます(上記の画面は一部を切り取った上で縮小しています。オリジナルの画面は、発表資料の「EPUB日本語拡張仕様策定により、ブラウザーでの縦書きが進行中」で参照できます)。
発表資料によると、年内にはこうした日本語組み版が製品として実装される見通しだと伝えています。
WebKitはApple社のSafari、iBooks、Google社のChromeやAndroid OSなどで採用されているため、年内に日本語組版がこれらに実装される見通しとなった。
一連の作業は、上記3組織に加えて、村田真氏を中心とする多くのエンジニアの「世界のブラウザーや電子書籍に縦書き、ルビを」という活動や、Apple社の積極的な対応に寄るところが大きい。
5月の策定はほぼ確実
昨年9月の記事「電子書籍フォーマット「EPUB」で縦書きとルビのサポート、来年5月には仕様完成の見通し」で伝えたように、今年の5月には電子書籍の標準仕様「EPUB」で日本語組み版の仕様が策定される見通しで、現在でもそれに向けて、EPUBから参照される仕様であるW3CのCSS3などでの議論が進んでいます。
村田氏や石井氏など、EPUBやCSS3での日本語組み版仕様に取り組まれている当事者の発言や状況を取材しても、5月の策定はほぼ確実な見通しで、それに合わせた実装もこのように順調に進んでいます。今年が終わる頃には、電子書籍やWebブラウザでの縦書き表示は当たり前の機能になっているはずです。