「オンプレミスとクラウドの融合が重要」オラクルのクラウド参入の背景と展開を聞いた
オラクルは、先月サンフランシスコで開催した「Oracle OpenWorld」において「Oracle Public Cloud」を発表。クラウド市場への参入を明らかにしました。
同社CEOのラリー・エリソン氏は以前からクラウド嫌いで知られており、これまでクラウドへ参入する気配をまったく感じさせない中での発表は大きなサプライズでした。
Oracle Public Cloudは、ERPやCRMなどの業務アプリケーションを提供するSaaSの「Fusion Applications」、Java EEの環境とOracle Databaseの運用を提供するPaaSの「Javaサービス」「Dataサービス」から構成されます。特にFusion Applicationsはエリソン氏が自分でデモンストレーションを行うという、熱の入った発表となりました。
なぜオラクルはクラウドへ参入するのか。その経緯と今後の展開について、日本オラクル 専務執行役員 三澤智光氏に話を聞きました。
オンプレミスとクラウドの融合が重要
──── オラクルはずっとクラウドについて否定的な立場でした。それがクラウドへ参入することになった背景について教えてください。
三澤氏 エリソンはテクノロジストなんです。彼は何を持って「クラウド」なのか、という点では、例えばグーグルのようなクラウドは否定していなかったし、FacebookやTwitterといったサービスは否定していなかった。
でも、エンタープライズ向けのサービスは、昔からあったアプリケーションのサービスと何が違うんだ、変わらないじゃないかとずっと言っていました。そういうクラウドについての論点の違いが大きかったと思います。
もう1つはFusion Applicationsに関して、エリソンは「6年も時間をかけてきた、世の中でいちばん金をかけたプロダクトだ」と発表で言っていたとおり、非常に強い思い入れがあった。しかも当初から「SaaSレディ」がコンセプトでした。そのプロダクトを本格的にSaaSとして投入できるタイミングがきた、ということです。
──── Fusion Applicationsは設計の時点からSaaSレディだったんですね。
三澤氏 クラウドやSaaSという言葉がでてくる以前から、そういう設計でした。最初から考えていた。だからラリーはあとから出てきた「クラウド」という言葉が気に入らなかったのかもしれません。
──── たしかにそれはエリソン氏らしいですね。今後、Oracle Public Cloudはどういう展開を考えているのでしょう?
三澤氏 すでにピープルソフトやシーベルなどをオンプレミスで利用しているお客様が、いきなりクラウドへ置き換えることはないでしょう。ただ、そうしたお客様が、例えばCRMなどを導入するのにFusion Applicationsのクラウドモジュールを使う、そういうオンプレミスとクラウドの融合がオラクルにとって重要になります。
一方で、Oracle Public Cloudには(PaaSとして)DataサービスとJavaサービスもある。これらはまずはテスト環境や開発環境で使われると考えています。開発やテストをクラウドでやって、それをオンプレミスに持っていく、という使われ方が最初。それがうまく回ってくると、本番の業務アプリケーションもクラウドで、ということになっていくと思います。
既存の業務アプリケーションやデータ資産をクラウド向けに全部書き換えることはないでしょうが、徐々にクラウドへと発展させていくのが自然でしょう。そういう面で、Fusion Applicationsが既存の業務システムと互換性が高いのは強いのではないかと思っています。
──── クラウドのバックエンドはExadataやExalogicで構成されるのでしょうか?
三澤氏 そう言っています。ただし、最初からその構成になっているかどうかは分かりませんけれど。
──── 日本での展開はどうなりますか?
三澤氏 グローバルにサービスインになった瞬間に、日本でもオープンということになります。ですからデータセンターは米国のものを使うことになります。
ビジネスが軌道に乗ってきて、法制度なども整備されれば日本でのデータセンターも考えなければなりませんが、いまのところ日本でデータセンターを展開する予定はありません。
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