クラウド時代の人材とは、設計もできて運用も分かる人
「クラウド時代のIT人材像」という特集が日経コンピュータ5月12日号に掲載されています。
クラウドの時代になると、システム開発をして納品すれば終わり、というこれまでのビジネスから、システムを開発して納品してからもずっとクラウド上でその運用と改善を続けていく、という新しいモデルに変わっていきます。国内の大手ベンダーが、そうした変化を見据えて人材育成に取り組んでいることを伝える特集になっています。
運用重視、アーキテクチャ重視
クラウドに対応した人材とは、具体的にはどのようなスキルを身につけた人なのでしょうか? 誌面から各社の声を拾ってみましょう。
富士通はライフサイクル全般についての精通を重視しています。
「クラウド時代のすべてのIT人材は、クラウドサービスの企画や設計、構築から稼働後の運用、改善まで、ライフサイクル全般について精通する必要がある」
NECはシステムインテグレーション+運用スキル。
「これまで持っていたシステムインテグレーションのスキルに加えて、運用スキルを身につけた人材」
日立も運用を重視しつつ複合的な能力を持つ人材に焦点を当てています。
サービスの運用と継続的な改善を主導するのが「サービスマネージャ」などだ。運用スキルのほかプロジェクト管理、コンサルティングなどの能力を持ち、サービスの運用・改善と、サービスのさらなる標準化、横展開を図る。
この3社、富士通、NEC、日立に共通しているのは運用と改善を重視していること。この背景には、3社とも顧客のために自社でクラウドを提供し運用する、もしくは顧客のプライベートクラウド構築と運用を請け負うことを前提としているからではないでしょうか。
NTTデータと野村総合研究所のクラウド人材像も見てみましょう。NTTデータはプロジェクト管理の熟練に加えアーキテクチャを重視しています。
NTTデータは新しいクラウド人材「方式グループリーダ」を定義した。熟練PMとしてのスキルを持ち、さらに独り立ちしたITアーキテクトとしてクラウドサービスの「方式設計」ができる技術者である。
NRIもアーキテクトの能力を重視しているようです。
NRIもクラウド時代に対応した人材育成を急ぐ。ITSSのレベル5程度のITアーキテクトに、上流コンサルティングを実施できるスキルを追加した「ITアーキテクト」(ストラテジスト」を2010年に追加した。
この2社はさまざまなパブリッククラウドを利用することも前提とし、顧客の要望に合ったクラウドの選択とアーキテクチャの構築ができることを重視しているのではないかと思います。
クラウド時代に何にフォーカスするのか
クラウド時代の人材は、もちろん一種類ではありません。例えば、セールスフォース・ドットコムやWindows AzureのようなPaaSを使えば運用は完全にクラウドに任せることになるため、アプリケーションの開発と改善にのみ集中できます。
このケースでは運用スキルは重要ではなく、顧客の業務への理解と設計、開発のスキルこそ差別化要因になります。
一方で、大手ベンダのように自社でクラウドを提供することも想定すれば、運用と継続的な改善まで想定したうえで全体を設計する必要が生まれます。この記事で紹介したような総合力を持つ人材が重要になるでしょう。
いずれにせよクラウドの登場でITビジネスは大きく変わろうとしていて、その中で組織も個人も求められるスキルが変化しています。それにどう対応していくのかがいま突きつけられている課題です。
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