クラウドでは、サーバ仮想化、ストレージ仮想化に続いてネットワーク仮想化が不可欠となる。ミドクラに聞いた
クラウドの基盤となるソフトウェアを構築しようという日本のベンチャー企業があります。昨年創業し、現在は六本木にオフィスを構えて6カ国の多国籍にわたる12人のスタッフを抱える「ミドクラ」です。
同社はクラウドの次の段階で予想される、複数のクラウドやオンプレミスを接続して利用する際に欠かせない「ネットワーク仮想化」の技術を実現しようと開発を進めており、まずはその一部を、クラウド基盤を構築するオープンソースソフトウェアである「OpenStack」の独自ディストリビューションとなる「MidoStack」に組み込んで広めようとしています。
同社はクラウドの将来をどのように考えて開発を進めているのか。創業者で代表取締役CEOの加藤隆哉氏にインタビューしました。
「Cloud Network as a Service」を目指している
─── ミドクラがやろうとしていることについて教えてください。
加藤 私たちのコアとなっているのはネットワーク仮想基盤の技術です。サーバ、ストレージ、ネットワークという3種類の仮想化はクラウドのインフラを構築するうえで欠かせないものだと考えています。
ところがサーバとストレージの仮想化はすでにたくさんの取り組みがあり実用化も進んでいますが、ネットワーク仮想化は難しく、取り組みはまだ少数です。アマゾンもグーグルも、まだ完全ではありません。
例えばいま、あるシステムをオンプレミスからデータセンターに移動したり、データセンター間を移動しようとするとサーバのグローバルIPアドレスは全部振り直しになりますし、DNSもそれに合わせて全部書き換えなければならないといった面倒が発生します。
エンタープライズITにクラウドが浸透し、さまざまなクラウドを使いこなしていくことになれば、いずれこのネットワークがボトルネックになるだろうと考えています。そこで、こうした問題を解決するためにネットワークの仮想化という技術にフォーカスし、ソリューションとして提供しようとしています。
ミドクラはそうした強味を持ちつつ、オープンソースのクラウド構築基盤であるOpenStackを手がけようとしています。ディストリビューションビジネスは、ネットワーク仮想化技術をビジネス化するための状況を作るためのもの、と考えています。
─── 具体的にネットワーク仮想化によって実現されることとは?
加藤 講演などでは「Cloud Network as a Service」と言っていますが、クラウドリソースをつなぐネットワークそのものをサービスとして提供する技術を開発しようとしています。
短期的にはL2/L3/L4のレイヤーで仮想的にスイッチを構成したり、ルーティングをしたり、またロードバランスやファイヤーウォールを特定のハードウェアに依存することなく、ソフトウェアによって簡単にスケーラブルに構成したりすることができるようになります。
例えばある企業が世界展開しており、組織構成を変更した、業務システムを変えたという場合、それに合わせてグローバルなネットワーク構成を変えたりデータセンターのネットワークを変更するのは非常に大変です。それを簡単に変更できるようにする。あるいは、あるクラウドから別のクラウドへのシステムの移動やハイブリッドクラウドのネットワーク構築がセキュアで低コストにできる、ネットワーク仮想化によってそういうものを実現します。
いずれネットワーク自身にインテリジェンスを持たせ、リソースを自律的に調整できるようにする、すなわちネットワーク上に存在するサーバリソース、ストレージリソース、ネットワークリソース等のさまざまなリソースを統合管理し、提供するネットワークサービスに応じて、必要なリソースや機能を有するサービス提供環境を動的に生成、運用監視できるようにしようと思っています。また様々なクラウドシステムが一つの物理ネットワーク上で複数同時に仮想的に構築可能にもなると思います。これが長期的にやろうとしていることです。
─── 最近ではOpenFlowを推進するOpen Networking Foundationがグーグルやマイクロソフト、Facebookなどによって組織化されたように、クラウド事業者や大手ベンダもネットワークの仮想化に取り組んでいますね。
加藤 そういう流れにはなってきていると思います。私たちはネットワーク仮想化をオーバーレイネットワークやトンネリング技術などによって実現しようとしており、マルチリージョナル、マルチデータセンタ、マルチテナントでのネットワーク仮想化を実現するため、既にOpenFlowに対応しているOpen vSwitchを基盤として構築しています。また、MPLSもBGPその他さまざまなプロトコルをサポートします。
まだ具体的な話ではありませんが、そういった機能をソフトウェアで、あるいはサーバベンダやネットワークベンダと組んでアプライアンスなどで提供する、といったことが、ビジネスの可能性としてあると考えています。
今回、NTT系の投資会社であるNTTインベストメント・パートナーズからの投資を受けましたが、投資の理由はこうしたネットワーク仮想化についての将来性を見てもらったこと、私たちにとっては、ソフトウェアの品質を協業によりキャリア品質にまで高めたいと考えているためです。
─── OpenStackを選ばれた理由は? またOpenStackをどう評価しているのでしょうか。
加藤 Linuxの歴史を振り返れば、インフラはコモディティ化していくし、人類の発展のためにオープンソースが有用だとも証明されたと思います。
すでにクラウド基盤のためのオープンソースソフトウェアはEucalyptusやCloudStackなどがありますが、パブリッククラウド、プライベートクラウドにも適用可能で小規模から大規模システムまで利用可能な、よりオープン性を追求するOpenStackは後発とはいえ、クラウドの世界でLinuxと同じことがOpenStackに起こってもおかしくありません。そのポテンシャルがあると思います。
─── ありがとうございました。