セールスフォースのアーキテクチャはPaaSに向いていないと、Ruby on RailsクラウドのEngine Yardがブログで指摘

2011年2月3日

セールスフォース・ドットコムは昨年12月、Ruby on RailsのPaaSを提供している「Heroku」の買収を発表しました。これにより、同じくRuby on RailsのPaaSを提供しHerokuのライバルであるEngine Yardの共同設立者兼CTOのTom Mornini氏が、「セールスフォース・ドットコムが隣人というよりも競合になった」と、同社のブログに「Cloud 2?」というエントリをポストしています。

Cloud 2? | Engine Yard Ruby on Rails Blog

そしてMornini氏は、「Ruby on Railsに未来がある、という点はセールスフォース・ドットコムに合意する」が、それ以外に合意できない点が2つあると書いています。

彼が同意できないと書いたのは、セールスフォースのアーキテクチャについてです。クラウドのアーキテクチャがどうあるべきと考えているのか、意見を聞いてみましょう。

仮想化によるシングルテナントの方が優れている

1つ目はForce.comのマルチテナント形式についての指摘です。セールスフォース・ドットコムが採用しているマルチテナント形式はSaaSにはよくてもPaaSには適していないと。

1) OS multi-tenancy is NOT the ideal architecture for a PaaS

Multi-tenancy within a SaaS application makes a lot of sense. It’s very efficient and convenient to have a single code base and application instance to manage.

マルチテナント形式のSaaSは適切であり、1つのコードをベースにしたアプリケーションでインスタンスを展開するのは非常に効果的であり、理にかなっている。

OS multi-tenancy in a PaaS doesn’t make sense except for the least important applications.

しかし、PaaSではこのマルチテナント形式はそれほど重要でないアプリケーションを除けば適切な方法ではない、とMrnini氏は指摘します。

Efficient virtualization is allowing IaaS vendors to deliver astonishingly efficient IaaS offerings. With security and quality of service constantly ranking at the top of cloud adoption concerns, it’s clear that for important applications, virtualized single tenancy is the way forward.

それよりも仮想化がよいというのが彼の主張です。仮想化によってIaaSベンダは非常に効率の良いサービスを提供できており、セキュリティなどのサービスの品質も高い。重要なアプリケーションにとっては、仮想化されたシングルテナント形式が優れていると書いています。

なぜデータベースをロックインされなければならないのか

2つ目は、プロプライエタリなデータベースについて。

2) It’s a BAD idea to store data in a proprietary data store

database.com makes it perfectly clear that lock-in is still the name of their game.

Force.comが内部で利用し、昨年末に発表されたdatabase.comのいずれも、彼らのデータベースにロックインされることは明らかではないかと。

Why in the world would anyone choose to store their data in a proprietary service when fantastic open source SQL databases and key/value datastores exist?

オープンソースの素晴らしいSQLデータベースやキーバリュー型データストアがあるのに、なぜプロプライエタリなデータベースを選ばなければならないのか、と彼は書いています。

クラウドごとの長所と短所

Mornini氏の意見には賛否両論があると思いますので、その妥当性についてはここでは触れません。付記しておくとすれば、Engine Yardは現在、Amazonクラウドと共同でRuby on RailsのPaaS提供を行う予定を明らかにしているため、仮想化をベースにしたクラウドを有利に考えるバイアスが働いている可能性がある、という点です(参考:Amazonクラウド、ついにJava対応PaaSの「Beanstalk」発表。Ruby on Rails対応も準備中)。

とはいえ、複数の顧客が1つのインフラストラクチャーを共有するクラウドにおいて、どのようなアーキテクチャを採用するべきなのか、という議論はこれまであまり見かけたことがなく、こうした問題提起によってクラウドごとの適性や長所短所がよりはっきりしてくることは非常に有益ではないかと思います。

クラウドを用いる開発者、利用者にとって、クラウドをより理解し適切に選択して活用するために欠かせない議論でしょう。セールスフォース・ドットコムによる反論があれば、こんどはそちらを紹介したいと思っています。

ちなみに、このMornini氏のエントリによると、Engine YardのCEOであるJohn Dillon氏はかつて、セールスフォース・ドットコムの10番目の社員だったそうです。

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セールスフォース・ドットコムのマルチテナントアーキテクチャは、次の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

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