ずっと無料で使えるPaaS型クラウドのまとめ。2011年版
PHPの実行環境をPaaS型クラウドとして提供している「PHP fog」はブログで、いままで6カ月だった無料サービスの利用期間を、永久に無料のままにすると発表しました。しかも3つのアプリケーションまで無料にするとのこと。
もちろん無料で使えるリソースの範囲はそれほど大きくありませんが、PHPアプリケーションを自由にデプロイできるため、例えばWordpressを入れて自由にブログを運営する、といったことができるはず。
実はPHP fogだけでなくPaaS型クラウドでは無料でずっと利用できるコースを設定しているサービスがいくつもあります。この機会にまとめてみました。
PHP fog
まずはそのPHP fog。名前の通りPHPの実行環境をクラウド上で提供します。MySQLデータベースもあらかじめ用意されており、WordPress、Drupal、Sugar CRM、Joomlaといった有名どころのPHPアプリケーションがすぐにインストールできるようにもなっているとのこと。
無料コースで使える範囲は、利用可能メモリとCPUは「Share(共有)」と書かれているのみ、ストーレジは100MB、データベースは20MBまでです。アプリケーション3つまで無料。
Heroku
HerokuはRuby on Rails、Clojure、Java、Node.jsなど複数のプログラミング言語をサポートしています。データベースはPostgreSQL。Facebookアプリのプラットフォームとして、もっとも多く使われているPaaSでもあります。
Herokuは、1プロセスに当たるDynosという単位でアプリケーションの性能を管理しており、これを増やすことでアプリケーションをスケールアウトしていきます。HTTPサーバにあたるWeb dynoと、バックグラウンドプロセスを実行するWorker dynoがあります。
Dynosは1カ月あたり750時間まで無料、データベースは5MBまで無料です。
1つのプロセスを31日間動かし続けると合計744時間になりますので、750時間まで無料ということは、Worker dynoは使わず、Web dyno上で動作するWebアプリケーション1つならば、無料で利用し続けられる計算になります。
cloudControl
cloudControlはドイツのベンチャーが運営するPHPの実行環境をクラウド上で提供するPaaS。データベースとしてMySQLとMongoDB、Xeroundなどが利用できます。
cloudControlはBOXという単位でアプリケーションを管理しています。1つのBOXは異なる仮想サーバ上にある2つのプロセスからなっており、サーバの故障などでプロセスに異常が発生すると自動的に別のプロセスへフェイルオーバーする仕組み。BOXを増やすことでアプリケーションのスケーラビリティを実現します。
cloudControlでは、デプロイごとに1BOXとmemcachedが無料で提供されます。MySQLは5MBまで、MongoDBは16MBまで無料で利用できます。
dotCloud
dotCloudは、PHPやPerl、Ruby、Java、Python、Node.jsなど複数の言語と、MySQL、PostgreSQL、Cassandra、MongoDB、CouchDB、Redisなど複数のデータベースやMemcached、RabbitMQ、Hadoopなどのさまざまな環境をクラウド上で提供するPaaSです。
料金はどのプログラミング言語とデータベースを選択しても、2サービスまでは無料で利用可能です。SSLが利用可能で、電子メールによるサポートもあります。
また、オープンソースのハッカー、学生、スタートアップ、NPOなどには無料で提供するプランがあるそうです。
FluxFlex
FluxFlexは同名の日本のベンチャーが提供する個人開発者向けのPaaSです。一般のPaaSとはちょっと趣向が違っており、LAMP環境での開発を完全サポート。AppGarageと呼ばれるライブラリ群から、WordPressやPukiWikiやRedisやNode.jsなどさまざまな環境をボタン1つですぐにインストールして利用開始できます。
TwitterかFacebookのIDでログインでき、2つまでのプロジェクトと250MBのストレージ、25MBのデータベース、1日のトラフィックが1万リクエストまで無料です。
Node.js SmartMachine
Node.jsの開発元であるJoyentが提供しているのが、Node.js SmartMachine。無料で128MBのメモリが割り当てられたNode.jsのインスタンスが利用できます。現在のところは開発者向けで、将来は実運用向けのメニューが提供される模様。
FAQのページには、Redis、MongoDB、MySQLをインストールする方法も説明されているため、目的に合わせて環境をカスタマイズすることもできるようです。
Force.com
セールスフォース・ドットコムが提供するForce.comは、PaaSとして世の中に最初に登場したサービスです。同社のクラウドをベースにした業務アプリケーションを構築するためのISVforce、Webサイトを構築するSiteforce、ソーシャルアプリケーションを開発するAppforceなどが用意されています。データベースとして同社独自のDatabase.comが利用可能です。
Force.comはデベロッパー向けに「Force.com Developer Edition」を提供しています。無料で20MBのファイルストレージ、5MBのデータストレージを提供、24時間で5000回以内のAPIを呼び出すことが可能で、アプリケーション数に制限はありません。Webサイトは24時間当たり500MBの転送量の制限がつきます。
Developer Editionで開発したアプリケーションは、無料で本番環境を提供しているFree Editionへデプロイ可能です。Free Editionでデプロイできるアプリケーションは1つのみで、アプリケーションを利用するユーザーは100名まで。1GBストレージ。1ユーザーにつき10個までのカスタムオブジェクトの利用制限と、Force.com Sitesアプリケーションは月間25万PVまでが上限となります。(追記:Free Editionの提供が終了したことを、セールスフォース・ドットコムに確認しました)
Google App Engine
グーグルが提供するPaaS、Google App Engineです。PythonとJava、そしてGo言語でプログラミングが可能な環境を提供しています。データベースとしてグーグル独自のNoSQLデータベースであるBigTableが利用できるのが、最大の特徴といえるでしょう。
無料で利用できるのは、1GBの永続ストレージと、1か月に約500万ページビューを処理できるだけのCPUと帯域幅です。
Cloud Foundry(β公開)
VMwareがオープンソースとして開発し、提供しているのがCloud Foundry。Cloud FoundryはVMwareが運用しているPaaSの名称であり、同時にオープンソースとして開発が進むプロジェクトの名前でもあります。
現在http://www.cloudfoundry.com/で、VMwareがCloudFoundryのPaaSをβ版として公開しており、無料で利用することが可能です。Java、Ruby、Node.js、Java、Groovy、Grails、Scalaなどの言語に対応し、データベースとしてもMySQL、Redis、MongoDBやRabbitMQなどが使えます。
また、PC上の仮想マシンで動作するアプリケーション実行環境の「Micro Cloud Foundry」も無料で提供しています。これを利用すれば、PC上でPaaSの環境をそっくり再現できます。
OpenShift(Developer Preview)
レッドハットが提供するPaaSがOpenShiftです。Java、Perl、PHP、Python、Rubyなどの実行環境をクラウド上で提供し、データベースとしてMySQL、SQLite、MongoDBなどが用意されています。現在デベロッパープレビューとして公開中です。
無料のExpreess版では、データベースとしてMySQLかSQLiteを選択することになります。またOpenShiftもオープンソースとして公開される予定ですが、まだソースコードの公開は行われていないようです。
ここに挙げた以外にも、期間の定めなく無料で使えるPaaSについて情報がありましたらお寄せください。
(2011/12/8 10:55 Google App Engineの情報を一部変更し、FluxFlexを追記しました)
(2011/12/8 Force.com Free Editionの記述を削除しました)
(2011/12/9 CloudControlのMySQLとMongoDBの制限を追記しました)
(2011/12/14 Node.js SmartMachineを追記しました)
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