「仮想ネットワーク」をソフトウェアで構築し、クラウドを越えた仮想マシンの移動に成功。NTT
NTTは、遠く離れた2つのクラウド内にある2つのサーバがあたかも同じLAN内に存在するかのような仮想ネットワークの構築を、ソフトウェアによって実現したと発表しました。
同社はこの仮想ネットワークのうえで、別々のクラウド内にあるサーバ(正確にはハイパーバイザ)間で仮想マシンを移動する遠隔ライブマイグレーションに成功しています。
VMwareなどではライブマイグレーション(VMotion)の実行に、それぞれのハイパーバイザからアクセス可能な共有ディスクが必要ですが、今回はKVMの機能で、共有ディスクを使わずにライブマイグレーション可能な「ブロックマイグレーション」を使ったのではないかと推測されます。
離れたハイパーバイザが、あたかも同一LAN上にあるような仮想ネットワーク
仮想ネットワークの構築に用いたソフトウェアは、米Niciraの仮想ネットワーク制御技術とオープンソースのOpen vSwitch。Open vSwitchは、オープンソースのハイパーバイザであるKVMの上で稼働しています。
発表の中ではOpenFlowについて触れられていませんが、Open vSwitchはOpenFlowスイッチの機能を備えており、Niciraの制御技術もOpenFlowコントローラの機能を備えていると想定されるため、今回の仮想ネットワークの構築にはOpenFlowの技術が一部使われたのではないかと推測されます。
以下がNTTの発表した構成図です(分かりやすいように全体の一部のみを引用しました)。
東京の武蔵野と神奈川の厚木にそれぞれ構築されたクラウドは、遠距離通信を行っています。
このとき、クラウド内のそれぞれのハイパーバイザ上で稼働しているOpen vSwitchを用いて、クラウド間にレイヤ2のトンネルを設定することで、あたかも2つのハイパーバイザが同じLAN上に存在するかのような仮想ネットワークを構築しています。
Open vSwitchに対して「仮想ネットワークを構築せよ」との指令は、Niciraの仮想ネットワーク制御ソフトウェアから出されています。このネットワーク制御ソフトウェアは、さらにクラウド管理システムの指令によって動作しているため、クラウドの状況によってどのサーバ上のハイパーバイザで仮想ネットワークを構築するのかといったことが、クラウド管理システムの判断によって動的に制御できるものと推測できます。
クラウド間の仮想ネットワークはこれから広まっていく
NTTは今回の発表の意義を、(クラウド間のトンネル接続に)専用の機器が不要で、ソフトウェアをインストールするだけで必要なときに任意の拠点間でライブマイグレーションができる、としています。
いままでクラウド間をシームレスに連係するには手間のかかることが多かったのですが、今回の構成のように、クラウド管理システムの指令によってクラウド間で仮想ネットワークが手軽に構成できるようになれば、クラウドをまたいでディザスタリカバリや負荷分散のシステムが容易に構築できるようになり、クラウドの柔軟性をより一層高めることは間違いありません。
このようなメリットの多い仮想ネットワークの構築には、現在さまざまなネットワークベンダ、クラウドベンダ、オープンソースプロジェクトなどが取り組んでいます。今後もこうしたソリューションが各社から発表されることになるでしょう。