IT業界と建設業界、増殖と弱肉強食
日本国内のIT業界、特に受託開発にたずさわるSIerは、NTTデータや野村総合研究所などに代表される大手企業を頂点にしたピラミッド構造を持つという点で、大手建設会社を頂点とするピラミッド構造の建設業界との類似点がよく指摘されます。「ITゼネコン」という言葉が使われることもありますよね。
このIT業界と建設業界の比較を興味深いグラフで見せてくれたのが、ブログ「タイム・コンサルタントの日誌から」にポストされたエントリ「「ITって、何?」 第16問 ITビジネスの成長のパターンってどうなっているの?(2/2)」です。IT業界の現状を独自の視点で解説してくれていますので、その内容を紹介しましょう。
IT業界はまだ弱肉強食型ではない
エントリでは企業を個体として生態学的な視点から考察しています。「生態学の教えるところによれば、競争と協調の下での種の個体数分布には、三種類の原型的パターンがあるとされている」とのこと。
その3種類とは、「独立モデル」「分岐増殖モデル」「弱肉強食モデル」。独立モデルでは、各個体はそれぞれ関係なく生きている。分岐増殖モデルでは個体数が一定して増えていくとともに、時々個体がコロニーから飛び出して、新しいコロニーを作る。弱肉強食モデルは各個体が生存競争の中で生きており、弱い個体は強い個体に会うと負けて消えてしまう。
筆者はまず、IT企業を売り上げ規模と順位でグラフ化します。それが下記のグラフ。X軸、Y軸ともに対数となっています(グラフは、エントリ「「ITって、何?」 第16問 ITビジネスの成長のパターンってどうなっているの?(2/2)」から許可を得て転載)(追記 3/10 グラフの縦軸の単位について元の図に修正があったため、再転載しました)。
両軸が対数のときに分布が直線的になるのは「グラフはまさに、日本のIT産業が分岐増殖型のモデルで説明できることを示してると考えられる」からだそうです。
一方で、建設業界を同じように売り上げ規模と順位でグラフ化したのが次のグラフ。こちらは縦軸だけが対数になっています。
片方の軸だけが対数なのは弱肉強食型があてはまるとのこと。つまり、2つのグラフをみるかぎり、IT業界は分岐増殖型、建設業界は弱肉強食型であると。
さっきから説明しているとおり、IT作りはどこか建築によく似ている。しかし、産業の構造を見る限り、両者には明らかな違いがある。片方は分岐増殖型で、片方は弱肉強食型のモデルになっている。
なぜIT業界が弱肉強食ではなく分岐増殖になっているのか? このエントリでは次のように理由を説明しています。
それはね、市場全体がまだ成長しているからさ。大企業と小企業が既存のパイを競争で取り合うのではなく、小企業は新しいジャンルの市場を生むことで、全体のパイが膨らんで行く。
受託開発の市場は今後成長分野ではなくなると予想されています。数年後にIT企業のグラフをもう一度描いてみると、そのときには弱肉強食型になっているのではないでしょうか。