インタビュー:これからFlashはどこに向かって進化するのか? アドビがHTML5に注力するという意味は?
アドビシステムズは11月15日に、モバイル向けFlash Playerの開発中止を発表し、HTML5への注力を拡大することを発表しました。
今後Flash Playerの開発はPC向けに絞られ、モバイルを含むクロスプラットフォーム対応はAdobe AIRによるアプリケーション開発を通じて行われることになります。
この発表によりFlashがひとつの大きな転換点を迎えたことは明らかです。Flashは今後どのような方向へと進化するのか、HTML5への注力とは具体的に何を意味するのか。
来日した米アドビシステムズのFlash Platformプリンシパルプロダクトマネージャ、マイク・チェンバース氏に話を聞きました。
ちなみにマイク・チェンバース氏は、TechCrunchにも取り上げられた、アドビがモバイル向けFlash Player開発中止の発表を唐突かつ言葉足らずに行ったことに憤慨し、数日後に独自の解説をブログに掲載したその人です。このブログの内容はその後、アドビジャパンによって翻訳され、現在では会社の見解と一緒に掲載されています。
Flashはゲームや高度な動画にフォーカス
──── アドビはモバイル向けFlashプレイヤーの開発中止を発表しました。これからFlashはどのような方向へ進化していくことになるのでしょうか?
チェンバース氏 まず最初に申し上げたいのは、Flashの開発はこれからも続きます。そしてモバイルアプリケーション向けにはAdobe AIRが提供されるということです。Adobe AIRはクロスプラットフォーム向けのソリューションとして重要な位置づけにあります。
その上で、今後のFlashは、従来のリッチコンテンツの開発に加えて、クリエイティブなゲームのようなコンテンツや高度なビデオといったものにフォーカスしたいと思っています。ただし、これからはデベロッパーが開発のすべてをFlashだけで行うとは限らないので、PhoneGapの買収も行いました(PhoneGapはHTML5によるWebアプリケーションをネイティブ化するツール)。
もともとFlashはWeb標準では実現できないことをやろうとしたものでした。Web標準としてHTML5が進化し、それでできることが増えてきたのであれば、Flashの焦点はゲームやより高度なビデオといったものになっていきます。
──── Flashはすでに多くの機能を備えていますが、ゲームや高度なビデオの分野ではまだ機能が足りないのでしょうか?
チェンバース氏 デベロッパーにはこれらの分野でまだまだ機能や性能が足りないと言われています。ですから、例えば高速な3D表現を実現するようなStage3Dといった技術をさらに推し進めていきます。
PCはゲームコンソールなどと比べるとより新しいハードウェアを活用できるので、グラフィックやテクスチャの品質をずっと高めることができます。
もちろんこうした分野だけでなく、Flashは従来のリッチメディアのプラットフォームとしても引き続き使えることを申し添えておきます。
FlashデベロッパーのスキルをHTML5でも活かせるようにする
──── アドビはFlashで培ってきた経験やノウハウをHTML5へ投入していくことも表明しています。これは具体的にはどういうことなのでしょう?
チェンバース氏 ブラウザはさらに成長し、HTML5はよりリッチな表現力をもつことなると思います。Flashコミュニティがこれまで10年かけて作ってきたのと同等のコンテンツやモーショングラフィックスが、いずれブラウザで実現できるようになるでしょう。
そして私たちが考えなければならないのは、Flashデベロッパーのスキルを、Flashで使い慣れている開発ツールを使ってHTMLコンテンツを作るのにも使えるように、どう手助けできるのか、という点です。
現在、アドビはFlashコンテンツをHTML5にエクスポートするという試みを、例えばWallabyなどのツールで行っています。
Flashデベロッパーのトップの一人であるGrant Skinner氏が、HTML5のCanvas上にFlashライクなAPI「Easeljs」を開発しており、これを使うとFlashデベロッパーがCanvasを使いやすくなります。この開発には私も協力しました。
Flash Proの次のバージョンでは、FlashのアニメーションをHTMLにエクスポートする機能も予定しています。HTMLという領域でFlashやツールをどう活用していくのか、がフォーカスの1つなのです。
ですから現在のアドビの重要な目標は、デベロッパーがどのプラットフォームを使っていてもクリエイティブになれる、というところに向かっています。