FCoE普及の始まり。データセンターのネットワークは全部イーサネットになっていく
ファイバーチャネルで構築されるSANと、イーサネットで構築されるLANは、10GbEとFCoEですべてイーサネットになる。Publickeyではこの見通しに沿って、一昨年からFCoEの動向をいくつかの記事にしてきました。
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そして、ネットワークやストレージに詳しいエンジニアやベンダの方々などに会うたび「FCoEはもう成熟してきたでしょうか? 安心して使えるようになってきたでしょうか?」とも尋ねてきました。
昨年のいまごろは、「まだ不安」「使うのなら気をつけた方がいい」「製品がもう少し出揃わないと」という返事をもらうことが多かったのですが、年末頃からは「もう大丈夫でしょう」「事例も出始めていますよ」と前向きな返事に変わってきて、今年に入ってからは関連ベンダを中心に積極的にFCoEをプッシュする声がさらに高まってきました。
先々週に公開したFCoEとiSCSIの比較を紹介した記事には、「とても興味深かった」「参考になった」とストレージベンダの方、データベースベンダの方など関連業界の方からは非常に反響があり、FCoEへの注目がずっと高まってきたことを感じています。
エンタープライズ市場のハードウェアは投資額が大きいこともあり、耐用年数も長いので、一夜にしてファイバーチャネルがなくなってFCoEでイーサネット化される、ということはないと思いますが、数年かけてデータセンターのネットワークはすべてイーサネットに統一されていくことでしょう。
FCoEについて5分で分かるビデオ
FCoEが普及する理由はいくつかあげられます。最大の利点は、ケーブルの本数が少なくなること。いままでLANとSANで2本、まあ現実的には冗長化や高速化などで1台のサーバから4~8本くらい出ていたケーブルが、イーサネットケーブル1本、冗長化を入れても数本程度で済むことです。監視対象が減って運用ミスが減り、風通しも良くなって冷却効率も上がるなどいいことづくめ。
2つ目の理由は性能。現在のファイバーチャネルが8Gpbs、今後のロードマップでは16Gpbs、32Gpbsと進化していく予定ですが、FCoEのベースとなっているイーサネットでは10Gppsの次は40Gbps、100Gbpsとなっており、現在1ギガが主流のイーサネットの性能はファイバーチャネルを追い越そうとしています。いまから投資するならばファイバーチャネルよりもFCoEのほうが合理的と考える人が多いのも分かります。
さて、そんなFCoEに興味が出てきた方は、仮想化エバンジェリスト ユニアデックスのタカハシ氏のショートビデオがおすすめです。1本5分程度で気軽に見ることができます。
ポイントだけ把握したいのなら、「#3:FCoEってなんなんだろう?」「#4:DCBって何?(前編)」「#5:DCBって何?(後編)」の3本を見ればよいでしょう。
さらに技術的なことを突っ込んで知りたくなったら、「802.1/802.3の標準化動向(12):802.1 WGで標準化が進むDCB(データ・センター向けブリッジング)の最新動向」の記事が各仕様の中身を完結に解説してくれています(この記事は実はタカハシ氏に教えてもらいました)。
仮想化とマルチプロセッサが発端
仮想化とマルチコアプロセッサの登場により、以前より多くの処理を1台のサーバに詰め込むサーバ統合が加速しました。その結果、1台サーバあたりのI/O処理も高性能化が求められてくるようになり、高速なSANとしてFCが普及、その先の、より高速かつ高効率なSANとしてFCoEが注目されているわけです。
次に起こるのは、ストレージ自体の高速化要求としてSSDの利用が一般化し、その先にはストレージよりもさらに高速なデータアクセスを求めてすべてをオンメモリで処理する、といったことが考えられます。
さらにその先には、現在のクラスタの性能をほぼ1台でまかなえるような高密度アーキテクチャの台頭により、LANやSANのようなマシン間の接続を極力不要にした超マルチプロセッサで超大容量メモリ+ソリッドステートドライブを一体化したようなスーパーサーバがコモディティ化していき……おっと、ここまでくるとちょっと想像が先走りすぎたかもしれません。