インフォア、クラウドERPを国内展開へ。プラットフォームをWindows AzureからForce.comへ切り替えた理由は?
製造業を中心にしたERPソフトウェアを展開する日本インフォア・グローバル・ソリューションズは、日本国内でクラウドによるERPサービス「InForce」の提供を開始すると12月9日に発表しました。
今回InForceとして提供されるのは、セールスフォース・ドットコムが提供するPaaS型クラウドの「Force.com」上に構築された3つのアプリケーション「InForce Everywhere」「InForce Marketing Cloud」「InForce Ordering Cloud」の3種類。
InForce Everywhereは、オンプレミスで稼働しているERPソフトウェアのInfor10 ERPとデータ連係を行い、顧客情報や製品情報、請求情報などERPの情報をクラウドに同期します。
InForce Ordering Cloudは、製造業向けの価格管理、受注管理などの機能を持つアプリケーションで、セールスフォース・ドットコムのCRMやChatterなどとも統合。Inforce Marketing Cloudはキャンペーン管理やマーケティングの自動化を提供します。
Windows AzureからForce.comへ
米インフォアは昨年7月にマイクロソフトのWindows Azureを、同社クラウド版ERPである「Infor24」の適切なプラットフォーム(Windows Azure as the preferred platform)として選択し、Windows Azure上でクラウド戦略を推進する姿勢を打ち出していました。
このときのプレスリリースの表題「Infor Launches Infor24 Cloud Initiative and Selects Microsoft Windows Azure as Preferred Cloud Platform(インフォアは、Infor24というクラウドへの取り組みを開始し、その適切なプラットフォームとしてWindows Azureを選択した)に、それが明確に示されています。
それから1年2カ月後となる今年の9月、同社はセールスフォース・ドットコムのイベント「Dreamforce'11」でForce.com上のERPソフトウェアの「InForce」を発表します。基調講演ではセールスフォース・ドットコムのCEO マーク・ベニオフ氏と、インフォアのCEO チャールズ・フィリップス氏がにこやかに握手を交わす姿が見られました。
セールスフォースから投資を受ける
そして今回、日本国内でInForceを提供するに当たり、米セールスフォース・ドットコムが米インフォアに投資したことを発表(インフォアは非公開企業)、またインフォアはセールスフォース・ドットコムのグローバルなリセラーとなりました。
「マイクロソフトとの取り組みが白紙になったわけではない」(日本インフォア社長 村上智氏)とはいえ、投資を受けグローバルなリセラーとなり、グローバルな製品展開を開始したことを考えれば、インフォアがクラウドプラットフォームの選択をWindows AzureからForce.comへと切り替えたことは明白です。
村上社長は次のように理由を語っています。「昨年に新CEOのチャールズ・フィリップスが就任してから、戦略を全体に見直し、大幅に変更することになった。ローソンソフトウェアの買収も、このクラウド展開もその変更によって起きたこと」
米インフォアCEOのチャールズ・フィリップス氏といえば、過去にオラクルで7年間社長を務めた人物。そして米セールスフォース・ドットコムCEOのマーク・ベニオフ氏もオラクル出身。いわば二人はツーカーの仲です。
インフォアの将来を大きく左右する可能性のあるクラウド戦略を進める上で、このCEO同士の信頼関係がWindows AzureからForce.comへとクラウドプラットフォームを切り替えることになった理由になったことは想像に難くありません。そしてインフォアはSAP、オラクルに次ぐ世界第三位のERPベンダといわれています。インフォアの戦略変更によりセールスフォース・ドットコムが得たものは、非常に大きかったといえるでしょう。