日本市場で最初のAndroid3.0搭載タブレット「Optimus Pad」に触れてみた
Android3.0、コード名「Honeycomb」を搭載したタブレットを触れる機会があったので、その第一印象を記してみたい。機種はNTTドコモがこの2月24日に発表し、3月中に出荷予定の「Optimus Pad」である。日本市場で最初に発表されたAndroid3.0搭載機だ。
iPadと比べると、より小さく、より横長の画面
Android3.0は、タブレット型のスマートデバイスをターゲットとしたOSである。2011年1月開催のInternational CESで初めて披露された(関連記事)。この時のデモ機はMotorolaのタブレット「Xoom」だった。このXoomは、米国で2月24日より出荷中である。
XoomはAndroid3.0のリファレンス機と考えられている。今回試したOptimus Padのディスプレイが8.9インチなのに対して、Xoomのディスプレイは10.1インチとより大きい。ただ、Tegra2プロセッサとWXGA解像度のディスプレイを搭載、物理ボタンなし、という点では共通している。登場時期も近い。Optimus Padで得られるユーザー体験は、Android3.0搭載デバイスのリファレンス機で得られる体験と大きくは違わないものと期待できる。
このOptimus Padに最初に触れたのは、2月24日に開催されたNTTドコモの発表会の会場だった。ただし、その場では短時間しか触れることができなかった。そこで、翌日に有楽町にある「ドコモスマートフォンラウンジ」の展示機をさらに試してみた。
筆者が抱いた印象は次のようなものだった。
- iPadと比べると、より小さく見え、より横長の画面である。iPadがシルバーの外装なのに対して、Optimus Padは外装デザインを黒一色でまとめており、数字以上に小さめに見える。
- 物理ボタンがない。いままでのAndroid端末は、「Home」、「Back」、「Menu」、「検索」と各種のボタン(物理ボタンまたはタッチパネル式の操作部)を設けていた。Android3.0タブレットでは、これらのボタンはなく、その代わり画面左下に触れると画面上に基本的な操作ボタンが表れる。向きを変えながら使うタブレット端末では、この方が使いやすい場合もあるだろう。
- ソフトキーボードは思ったより使いやすかった。iPadのソフトキーボードよりやや大きめな印象である。日本語入力ソフトとしてiWnnが入っている。
- ブラウザには「タブ」が備えられた。PCのブラウザにより近い操作性になった。
- 動作は全体に軽快。Google Map5.0で追加された3D機能を試してみても、スムーズに操作できる(記事末の動画を参照)。
- GMail、YouTubeなどGoogle製のアプリの一部では、タブレットの横長画面を生かした新たなUI(ユーザー・インタフェース)を搭載している。
Android3.0はUIの設計思想を一変させている
ここでOptimus Padのスペックを確認しておくと、最大1GHz動作でデュアルコアのNVIDIA Tegra2プロセッサ、8.9インチWXGA(1280×768画素)のディスプレイを搭載し、外形寸法は150×243×12.8mm、重量は620gである。NTTドコモによれば、Optimus Padはテザリングへの対応を予定する。つまり、モバイルWiFiルーターとしても機能するようになる予定だ。
比較のため、現行のApple iPadのスペックを見てみる。最大1GHz動作でシングルコアのA4プロセッサ、9.7インチ、XGA解像度(1024×768画素)のディスプレイを搭載し、外形寸法は242.8×189.7×13.4mm、重量は730g(WiFi+3Gモデル)。iPadと比べてみると、Optimus Padは長辺がほぼ同じ、幅はわずかに狭く、画面解像度は長辺の方向に多く、プロセッサはかなり強力、という内容となっている。ディスプレイが横長なので、HD動画の再生などではOptimus Padの方が広く画面を使える。
Optimus PadはGoogle公式アプリ(Gmail、Google Map、Googleカレンダ−、YouTube)を使う限りにおいて、タブレット端末の機能を従来のAndroidタブレットよりよく引き出した使い勝手を提供してくれるだろう。デザインや操作性を一新したUIと強力なプロセッサは、「新しいデバイスを操作している」と感じさせてくれる。その一方、従来のAndroidアプリの中には、うまく機能しないアプリも出てくるかもしれない。今までのAndroid搭載デバイスで慣れ親しんだ操作法が使えないことに戸惑う局面が出てくるかもしれない。
Android3.0は今までのAndroidとはUIの設計思想を一変させている。アプリが利用できるUI要素にも大きな追加・変更が手が加わっている。この点は、Androidアプリ「Libraroid」や「Suica Reader」の作者であるあんざいゆき氏のBlogに詳しい。例えば、「複数のウィジェットがそれぞれタッチ入力を同時に受け付ける」ことが可能となった。こうした新機能を使うことで、今までにはない種類のアプリが登場してくるだろう。
筆者の印象を一言でまとめると「かなり大胆にUIを変えてきたなあ」というものである。Android3.0は、従来のAndroid2.x系統に「似せない」ように作られているのではないかとすら思える。Android3.0の実質的な開発元である米Googleには、新たなOSと強力なプロセッサを搭載した新たなスマートデバイスへの自信があるのだろう。そして、Androidのエコシステムは当分の間は急激な技術の進化、市場の成長、ベンダー間の激しい競争が続くのではないかと予感している。成熟よりも進化・成長・競争 ── それがAndroidの姿である。
Optimus Padで、Google Map5.0で追加された3D機能を試した動画(18秒)。
(著者の星 暁雄(ほし あきお)氏はフリーランスITジャーナリスト。IT分野で長年にわたり編集・取材・執筆活動に従事。97年から02年まで『日経Javaレビュー』編集長。08年にインターネット・サービス「コモンズ・マーカー」を開発。イノベーティブなソフトウエア全般と、新たな時代のメディアの姿に関心を持つ。 Androidに取り組む開発者の動向は要注目だと考えている)