「クラウド女子会」が都内で開催。Amazonユーザー会とAzureユーザー会が合同で
4月30日土曜日、女性限定のクラウド勉強会「クラウドってそもそもなんなの?(女子限定)」が開催されました。主催はJAWS-UGクラウド女子会とWindows Azureユーザー会女子部の合同で、会場となった品川にある日本マイクロソフトのセミナー会場には70名近い女性が集まりました(Amazonクラウドのユーザー会は「JAWS-UG」、Windows Azureユーザー会は「JAZ」と呼ばれています)。
勉強会の司会を担当したWindows Azureユーザー会女子部の安東沙織さんは、勉強会の冒頭で次のように挨拶しています。
「JAWSの方は女子会をやっているそうですが、JAZは人数の関係もあってできていないので、同じクラウドの勉強をするなら一緒にやりましょう、ということでこの女子会を企画しました。クラウドを使う女性が増えればいいなあと思います」
AmazonクラウドとWindows Azure、それぞれのメリットは?
勉強会のおもな内容は、Amazonクラウドのエバンジェリストである玉川憲氏と、Windows Azureのエバンジェリストである砂金(いさご)信一郎によるそれぞれのクラウドの解説と質疑応答。
玉川氏も砂金氏も主催者から「女子会にふさわしいクラウドの説明を」、という無茶振りを受けており、両者とも苦しみつつひねりをきかせた前振りを経て、自社のクラウドの解説を行いました(玉川氏のスライド、砂金氏のスライド)。
会場との質疑応答を詳しく紹介しましょう。
会場から AmazonクラウドとWindows Azureの、それぞれのメリットやデメリットを教えてください。
玉川 Windows Azureは、当然ながらWindowsで開発したりするのに非常に強いですね、逆にAmazonはWindowsでもLinuxでも何でも使えるので、オープンなところがいいところだと思います。
砂金 残念ながらLinuxのCentOSをWindows Azureで使う、という訳にはいかないので、Linuxを愛している人はAmazonという選択肢になると思います。でもLinuxを愛している訳ではなくて、例えば自分はPHPでプログラミングできればいい、クラウドでサービスが開発できればいい、という人にとってはOSはある意味でどうでもよくなってきているので、どのクラウドでも、Windows Azureでもいいのではないでしょうか。
ただ、マイクロソフトは単にWindows Azureをインフラとして使ってください、というだけではなくて、このサービスを盛り上げたいんだ、という相談をいただければ、販売チャネルの協力なり告知なり、いろんなリソースを調達したりと、マイクロソフトとしてお手伝いできることがあるので、そういうところも期待しつつご判断いただければと思います。
会場から 先日Amazon EC2が落ちて、つながらなくなってしまった、ということがありましたが、もしWindows Azureで同じようなことが起きたとき、Amazonとは違うこんな対応ができますよ、という話はあるのでしょうか?
砂金 正直ベースでは、Windows Azureも一時的に止まったりすることはこれまでもありました。司会の安東さんからも「Azureの管理画面でなんかくるくる回ってますが、これって(動作が)違ってますよね」みたいな障害をしっかり見つけられたりしていますし(笑)
いま「トラフィックマネージャ」というのがβ版で出てきていて、これはシンガポールとアメリカとヨーロッパを同じロードバランサーでさばいて、アクセスしてきた人のいちばん近いデータセンターにルーティングすることで負荷分散するといったものなのですが、有事のときには使えないデータセンターにはトラフィックを割り振らないということもできます。こういうのを鋭意準備中です。
Amazonクラウドの障害の件は、こうした障害対応ツールへの追い風になっていて、社内では優先度を上げて対応しようよ、ということになっています。クラウド業界全体が一丸となって、お客様から「障害があるから使えないよ」ということにならないように対応しようとしています。
会場から クラウドはすごく短時間でリソースを使える、という話がありましたが、最短でどれくらい、というのはありますか?
玉川 私は実際に(インスタンスを)ぽんと立てて、1秒くらいしか使わなかった、ということもありますが、Amazon EC2は1時間単位の課金なので、1時間めいっぱい使った方が得なんですね。1秒使って落として、またすぐ立てるとまた課金されて2時間分の課金になってしまうので。
またS3というサービスだと、保存するファイルのサイズと、それを保存している時間で課金します。だいたい1GBのファイルを1カ月おいておくと10円くらい、10日だと3円くらいですね。
会場から キャンペーンで使うときには1週間だけ、とかでもいいのでしょうか。
玉川 キャンペーン系はすごくクラウドに向いています。ウェブポという年賀状向けのWebサービスがありますが、これは年賀状シーズンしか使わないので、そのときだけしかサーバを増やさないとか、業務によって夜だけサーバを立ち上げるとか、それから負荷が読めずに最初に何台サーバを用意しておけばいいのか分からないとか、そういう場合などもクラウドだと対応しやすいですね。
携帯電話対応のツイッタークライアントなどを提供する「モバツイ」を運営している会社の人が面白いことを言っていたのですが、サッカー日本代表の試合があるときはつぶやきがすごく増えるので、試合時間前になるとAmazon EC2のサーバを数十台増やしておいて対応し、試合が終わると落とす、という使い方をしているそうです。
砂金 Windows Azureは後発というのもあって、Amazonの料金体系を一生懸命研究しているので、料金体系はほぼ同じです(笑)
ただ、時間ごとの課金は時計の0分から59分の区切りで行われるので、58分に立ち上げて3分に落とすと2時間分カウントされるという理不尽なことになりますから、その辺は気をつけないといけないですね。
司会 オンラインから質問がきています。「AWSはプライベートクラウドの将来をどう考えているのでしょうか」
玉川 一般に「プライベートクラウド」は、大きなサーバを売ってそこに仮想化技術が入っている、というものですが、私はそれはクラウドだと思っていないんですね。クラウドとは初期費用がかからない、使った分だけお金を払えばよくて、運用をまかせられる、というものです。だから最初に高いお金を出してサーバを買って、というのは単に仮想化と呼べばいい。クラウドの価値を求めているのに、いわゆるプライベートクラウドを買うとがっかりするのではないかなと思います。
一方、Amazonクラウドにはバーチャルプライベートクラウド(VPC)というものがあって、これはサーバのような箱を買うのではなく、Amazon EC2に一部隔離した領域を作り、そこに自社内からVPN接続して使う、社内のデータセンターを拡張するようなサービスです。(プライベートクラウドではなく、バーチャルプライベートクラウドならば)そちらの将来にはものすごく力を入れていこうと思っています。
砂金 プライベートクラウドに関しては、Windows Azureでは仮想マシンのイメージをWindows Azureにもってきて動かすVMRoleという機能があります。VMRoleを使うと、自分でWindows ServerにOracleをインストールして社内で動かしています、というのをある日クラウドにもっていくことができますし、逆にクラウドで運用しているけれどもそれを手元に持ってきたい、という人にもバカ受けしています。
例えば、クラウドで始めてみたけれど、手元のサーバに持ってきた方が、クラウドで5年使い続けるよりも実は安い、ということもあります。電気代や土地代が工場などと一緒に償却される、という会社ではあるんですね。
そうすると、Windows Azureとローカルのマシンの双方で行き来できる、全部クラウドに持って行くという勇気がある人はまだ多くないので、そういう人の一助になれば、という機能です。
司会 最後の質問です。これは私が聞きたいことでもあるのですが、砂金さんにはAmazonクラウドのうらやましいところを、玉川さんにはWindows Azureのうらやましい、と思うところを、それぞれ簡単に教えてください。
玉川 マイクロソフトは、まさに帝国なんですね。いくらでもリソースがあると。Amazonは小規模で日本のスタッフも少ないですし、こんなセミナールームも持っていないので、セミナーをやるときはお客様のセミナールームを借りたりしています。マイクロソフトさんは、こういうリソースがどーんとあってうらやましいです。
砂金 AWS(Amazon Web Service)がうらやましいのは「破壊者」なんですよね。守ったり、過去のしがらみにひっぱられたりしない。自分の目指すところにむかって邁進できるのはうらやましい。マイクロソフトはみんなで安心してクラウドへ移れるサポートをしながらクラウドへ進まなければならないので、そっちの対応でけっこう疲れ切っている、というのが本音だったりします。そこがAmazonさんのうらやましいところです。
被災地へ、女性ならではの支援物資も
勉強会の参加者には、東日本大震災の被災地へ女性ならではの支援物資を持ち寄ってほしいと事前に呼びかけられており、洗顔用品、化粧品、下着類、生理用品など、段ボール箱にして3箱分の支援物資が集まりました。
これらの支援物資はパソナテックが行っている復興支援プロジェクトを通して現地に届けられるとのことです。
ライトニングトークに続き最後の登壇者としてJAWS-UGクラウド女子会の小室文さんが挨拶、「クラウドを知って触って恩恵を受けている人はまだ少ない。そのクラウドのしっぽをつかんで核心に近づいたときには、雲から見下ろす新しい世界が広がると思うので、ぜひクラウドに足を踏み込んでほしい」と参加者に呼びかけました。
その後、勉強会はラウンジへ場所を移し、ケーキやプリンなどのスイーツと飲み物が参加者に振る舞われ、和気あいあいとした雰囲気で自由に情報交換を楽しみつつお開きとなりました。
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