2011年、Publickeyの予想。「クラウドで基幹業務」「Web技術がネイティブ化」「アジャイルの価値」
海外の予想記事をまとめて紹介したあとで、自分の予想記事を公開するのは後出しじゃんけんのような気もしますが:-) Publickeyでも2011年を予想しました。
今年、Publickeyで注目したいのはパブリッククラウド、Web標準、アジャイル開発、NoSQL、そしてエンタープライズソーシャルです。
パブリッククラウドを基幹業務に利用する事例が登場しはじめる
昨年はクラウドが注目され、クラウド事業者が国内で本格的に活動を開始した年でした。それに合わせるようにすでに国内企業でも、パブリッククラウドを自社の基幹業務のためのプラットフォームとして利用することができるかどうか、調査や検討が始まっています。大企業も例外ではありません。
パブリッククラウドの最大の懸念はセキュリティですが、国内のデータセンター設置などを含めたクラウド事業者の努力などによってその懸念は徐々に払拭されようとしています。
これまでパブリッククラウドは、ソーシャルゲームのようなコンシューマの用途か、セールスフォース・ドットコムのような情報系システムが目立った使われ方でしたが、2011年には基幹業務の一部をパブリッククラウドで実行する事例がメディアでよく見られるようになるでしょう。
Webアプリケーションとネイティブアプリケーションの区別がなくなっていく
いままでネイティブアプリケーションとして書かれていたソフトウェアが、Webアプリケーション、あるいはHTML/CSS/JavaScriptなどのWebテクノロジーを用いて書かれるようになるでしょう。
最初にそれが起きるのはモバイルデバイスにおいてです。iOS対応のアプリケーションはObjective-Cで書くことが主流ですが、Titanium MobileのようにJavaScriptでモバイルアプリケーションが開発できるツールや、HTML5のオフラインキャッシュ機能などが広く用いられるようになり、多くのアプリケーションがより簡単なWebテクノロジーで開発されるようになるでしょう。
この現象はデスクトップアプリケーションにも波及していきますし、Node.jsのようにサーバサイドでJavaScriptが使えるフレームワークも登場しています。2011年は、Webテクノロジーがあらゆる場面で使われるようになっていきます。
アジャイルの価値をユーザー企業が認めはじめる
ソフトウェア開発の外注化がコストなどの面で減少し、企業の情報システム部門が自分たちで自社のコアコンピータンスとなる業務アプリケーションの開発を直接行うようになっています。しかも開発サイクルは以前より短く、かつその要件がつねに動いています。
こうした状況に直面した情報システム部門は、自分たちで積極的に問題解決をはかる必要に迫られ、そしてアジャイル開発の価値を発見し、それを認めはじめる年に、2011年はなるのではないでしょうか。そこからマネジメント層にもアジャイル開発のよさが徐々に浸透していくことにもなるのではないかと思います。
NoSQLブームはいちだんらく
NoSQLは、データベースの分野に久しぶりに登場した大型のテクノロジートレンドでした。それゆえに、NoSQLとはなにか? どんな仕組みなのか? なにに使えるのか? といった技術者の好奇心や知識欲を大いに刺激したところがあります。
しかしそれらの疑問が徐々に氷解して、NoSQLも使いこなすためには適切な用途を選択し、きちんと設計し、運用していかなければならないものであり、それは既存のリレーショナルデータベースと何ら変わらないことが理解されつつあります。2011年はそうやって冷静にNoSQLをとらえ直すことになることになるでしょう。
しかし一方で、NoSQLを適切な用途に利用した実装というのも登場することになり、1つのジャンルとして実体を持ち始めることにもなるでしょう。
エンタープライズ内ソーシャルが流行する
企業内ツイッターは流行の兆しを見せています。国内で先鞭を付けたのはセールスフォース・ドットコムのChatterでしたが、今年は多くのソフトウェア企業が同様の機能、つまり企業内ツイッター的機能を備えたアプリケーションを投入してくることでしょう。
企業内ツイッターの機能を開発中なのは(あるいはすでにリリースした企業も含め)、Publickeyで紹介しただけでもマイクロソフト、シスコ、IBM、SAP、国内でもNTTデータイントラマートが開発中ですし、YammerやYouRoomなどサービスを提供しているところもあります。
企業内ツイッターは、企業内ブログや企業内ソーシャルネットワークよりも社員にとってずっとハードルが低く、その一方で効果が目に見えやすいので、多くの企業でこれまでよりずっとうまくいくソーシャル基盤になるでしょう。
と同時に、いまや消費者の側がツイッターのようなソーシャルツールを使ったコミュニケーションに慣れてきているときに、企業側がそうしたツールに不案内なわけにはいきません。コンシューマ系の商品を扱っている企業を中心に、ネット上でのソーシャルコミュニケーションに企業が本格的に参加する年にもなるはずです。
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