「100%の仮想化を目指す」というVMwareの意図とは? 同社シニアバイスプレジデントに聞く
VMwareが先月発表した仮想化インフラの「vSphere 5」。新バージョンの登場は、クリティカルな業務アプリケーションから中小規模のシステムまで、あらゆるシステムを仮想化することを目指しています。
そのために同社がとった戦略と製品について、同社の仮想化・クラウドプラットフォーム事業部門 シニアバイスプレジデントのラグー・ラグラム(Raghu Raghram)氏にインタビューを行いました。
クリティカルなアプリケーションで仮想化が進んでいない理由は?
─── vSphere 5の発表にあたり、VMwareは「100%の仮想化を目指す」という説明をしました。これは何を意味するのでしょうか?
ラグラム氏 VMwareが目指す100%の仮想化とは、x86プロセッサの上で稼働するすべてのソフトウェア、すべてのアプリケーションを仮想マシンへ載せていくこと、と定義しています。
すでにVMwareの技術的には95%以上のアプリケーションを仮想環境で動作させる能力があり、そこに含まれないいくつかの特殊なハイパフォーマンスを要求するようなアプリケーションについても、仮想化プラットフォームを進化させていくことでサポートすることを目指しています。
─── データベースや業務アプリケーションのようなミッションクリティカルなアプリケーションは、仮想マシン上での利用率が伸びているとはいえ、まだ全体的には低いままです。理由をどのように分析されていますか?
ラグラム氏 3つあると考えています。まず、1つ前のバージョンであるvSphere 4をリリースするまで、仮想化プラットフォームの能力がミッションクリティカルなアプリケーションをサポートするに至らなかったためです。しかしvSphere 4、そして今回のvSphere 5のリリースで、この課題はすでに解決されています。
2つ目は、顧客が仮想化を採用する過程で、まずはファイルサーバなどIT資産で容易に仮想化できる部分から取り組んでいるためです。ミッションクリティカルなアプリケーションが仮想化プラットフォームへ移行するには、まだ時間がかかるのでしょう。
3つ目は企業内での管理運営の課題で、仮想化を扱っているIT部門と業務アプリケーションの担当部門は別のセクションであるケースでは、仮想化への移行に時間がかかると考えています。
しかしこれらの課題はいずれも解決していくでしょう。
クリティカルなアプリケーションをサポートするための性能の面でいえば、vSphere 5ではvSphere 4以上に性能やスケーラビリティを高め、仮想CPUは最大8から最大32へ、メモリは256GBから1TBへと拡大し、ネットワーク性能も高めています。さらにストレージI/Oコントロール、ネットワークI/Oコントロール、リソーススケジュールなどの機能も強化しています。
複数のハイパーバイザ環境にどう対応していくのか?
─── クリティカルなアプリケーションの仮想環境については、ライセンスなどのビジネス環境にも課題があるように思います。例えばオラクルのOracle Databaseは自社の仮想環境(OracleVM)でしか動作を保証していませんね。こうしたビジネス環境での課題についてはどう考えていますか?
ラグラム氏 オラクルは確かに自分たちの仮想化製品を使わせたいと思っていて、VMwareの仮想環境で問題があった場合には、物理サーバの環境でそれを再現しなければなりません。
しかし多くの顧客はOracleの実行環境としてVMwareを選択していて、いままで問題に遭遇したことはないと聞いていますし、顧客は(Oracleの仮想環境としてもVMwareという)ベストな仮想化プラットフォームを選択すると考えています。
─── 多くの企業はVMwareの製品以外にも、複数のハイパーバイザを企業内のシステムで使っているのが現状です。マルチプルハイパーバイザ環境に対して、VMwareはどう対応しようとしているのでしょうか。
ラグラム氏 複数のハイパーバイザ環境へは、OVF(Open Virtualizatio Format)のようなインターオペラビリティへの対応に力を入れています。また管理ソフトウェアの実験的なツールで複数のハイパーバイザのサポートも試しています。
ソフトウェアでストレージを実現する意味とは?
─── vSphere 5の発表の中でも、共有ストレージをソフトウェアで実現する「vSphere Storage Appliance」に注目しています。この製品をリリースする目的について、あらためて教えてください。
ラグラム氏 仮想化が広まっていくと同時に、中小規模の顧客が増えてきました。それらの顧客は大企業とは異なり、ネットワークストレージに関するスキルがそれほど十分なものではないことが分かったのです。
一方でvSphereの主要な機能、例えばVMotionなどの機能を利用するには共有ストレージが必要です。
そこで、ソフトウェアによってローカルストレージをネットワーク上の共有ストレージに見せることで、vSphereのあらゆる機能を実現しつつ、物理的なネットワークストレージを不要にしてシンプルな構成で仮想化を走らせることができる、複雑さを減らしコストも下がる、というのがvSphere Storage Applianceをリリースする目的です。
─── サーバやローカルストレージの性能が上がってくれば、さらにハイエンドな共有ストレージの置き換えにもつながるでしょうか?
vSphere Storage Applianceのいまのアーキテクチャを考えると、大規模なストレージに要求されるようなトラフィックのハンドリングができるとは考えていません。やはり中小中堅規模に適しているでしょう。