クラウドアプリをドラッグ&ドロップで開発、セールスフォースが「Visual Process Manager」発表
クラウドのアプリケーション開発では、開発ツールもWebブラウザで動かす。米セールスフォース・ドットコムが発表したビジュアルな開発環境「Visual Process Manager」は、同社のクラウド中心の姿勢をさらに鮮明にする開発ツールであり、今後のクラウドアプリケーション開発ツールの方向性を示すものになりそうです。
Visual Process Managerは、画面上に用意されたアイコンをドラッグ&ドロップして設定していくことでアプリケーションの開発が行えるもの。フローチャートを描くようにビジネスプロセスに沿ったアプリケーションの開発が可能になります。
ドラッグ&ドロップで開発
Visual Process Managerの画面左側にはアイコン(ウィジェット)が並んでおり、そのアイコンをフローチャートのように並べて結び、処理内容を設定することでアプリケーションを開発していきます。
アイコンにはフォーム、クエスチョン、ロジック、結果を出力するメッセージング先として同社のChatter、Facebook、メール、ツイッター、SAP、などさまざまなものが用意されています。
例えばアンケートフォームでは、ある項目の回答内容によって続く質問がいくつかスキップされたり、質問が追加されたり、といった動作をフォームと条件分岐などのロジックで簡単に設定することが可能。できあがったアンケートフォームはアプリケーションに組み込むほか、Force.com Sitesの機能ネットで公開することもできます。
Visual Process Managerには、以下の4つの機能が備わっています。
- ドラッグ&ドロップのユーザーインターフェイスでアプリケーション開発を行う「Process Designer」
- 特定の手順に沿った操作画面(ウィザード画面)を開発できる「Wizard Builder」
- 開発したビジネスプロセスのアプリケーションを展開する前にシミュレートするための「Process Simulator」
- 実行エンジンとなる「Real-time Process Engine」
開発環境もクラウドの中へ
クラウドをプラットフォームとするための開発ツールに力を入れているベンダとして、セールスフォース・ドットコムとマイクロソフトの2社はその筆頭に挙げられるでしょう。そして興味深いことに両社のアプローチは正反対です。
マイクロソフトは、これまで築いてきた開発ツールの強みとユーザーベースを最大限に活かすために、Windows Azureの開発ツールにVisual Studioを採用。これまでVisual Studioを使ってデスクトップアプリケーションやWebアプリケーションの開発に慣れた開発者が、スムーズにクラウドアプリケーションの開発へと移行できるように気を配っています。
一方のセールスフォース・ドットコムは徹底的にクラウド中心のアプローチを採用。開発ツールもクラウド上で稼働するサービスとして提供しているため、Webブラウザがあれば開発から運用、利用までをすべて行える環境を実現しています。
(追記:同社はEclipse用プラグインなどの提供も行っていますし、記事「オフラインに対応するクラウドアプリケーション、SalesforceとAIRの組み合わせで実現」で紹介したようなツールもありますので、Webブラウザ用しかないわけではありません)
2つを比較すれば、もちろんVisual Studioのような専用ツールの方が機能が圧倒的に豊富で、高速に動作します。高度なプログラミングを行うプログラマーとしては専用ツールの方を好む人が多いでしょう。
しかし、クラウドのアプリケーション開発で今後想定されるのは、クラウドが提供しているさまざまなサービスをビジネスプロセスに沿って組み合わせ、業務アプリケーションを構築していく、マッシュアップ的な、あるいはコンポジットアプリケーション的なアプローチが増えていくことではないでしょうか。
しかもそうしたマッシュアップ的なアプリケーション開発では、エンジニアではなくビジネスプロセスを熟知したビジネスアナリストやビジネスマネージャによって行われることも期待されています。そうした開発者にとってWebブラウザから利用でき、ドラッグ&ドロップで開発できるスタイルは非常にフィットしそうです。
例えば今後、Force.comでサードパーティベンダがVisual Process Managerのアイコンとなるサービス、例えば与信管理、売上げ分析、見込み客抽出、宛名ラベル印刷などなどを提供し始めるとすれば開発可能なアプリケーションの種類は相当広がっていくことになるでしょう。
その意味で、今回セールスフォース・ドットコムが発表したVisual Process Managerは、専用の開発ツールが不要、専門のエンジニアでなくても開発できそうなアプローチ、そしてクラウドをベースとした拡張性を備えており、クラウド用アプリケーション開発環境の1つの進化の方向性として非常に可能性を感じさせるものになっています。