SAP、米欧同時開催の「SAPPHIRE NOW」でサイベース買収とクラウド戦略を語る
大手業務アプリケーションベンダのSAPが、同社のプライベートイベント「SAPPHIRE NOW」を米オーランドと独フランクフルトの2カ所をインターネットで結んで同時開催しています。
SAPは2月7日にレオ・アポテカー氏をCEOから解任し、ビル・マクダーモット(Bill McDermott)氏とジム・スナーベ(Jim Hagemann Snabe)氏の2人が共同CEOに就任。先週にはデータベースベンダのサイベースを買収するなど、ここ数カ月で大きな変化を経験してきました。
着任して100日となる共同CEOがどのようなビジョンを語ったのか、日本時間で5月18日深夜に行われたキーノートの内容をまとめました。
Unwired Enterprise、モビリティの時代
キーノートに最初に登場したのは、オーランドの会場からビル・マクダーモット氏。
「いまデータの爆発が起きており、データが18カ月ごとに倍になっている。まさに変化の時である、今日のデータは昨日のテクノロジーを超えてしまっているのだ」
「そのゲームを変えてしまうのが、インメモリテクノロジー。高速にデータの分析を実現する。これがSAPがリアルタイムと呼んでいるものだ。SAPはこの分野でもっとも進んでいる技術を持つ」
「例えばP&Gは世界180カ国で活動し、22のブランドを抱えているが、CEOは毎週、グローバルに散らばるリーダーたちと仮想の役員会議室でビジネスの状況をリアルタイムに見ている」
「こうした分析、洞察が、企業を変え、人々を前進させていくのだ」
「そしてUnwired Enterprise、モビリティの時代だ。中国はPCジェネレーションをスキップし、モビリティの時代に入っている」
「モビリティは情報分析を手のひらで行うことを可能にする。そしてそれが新しいカテゴリのビジネスアプリケーションを生むことになる」
「リーディングカンパニーはモバイルカンパニーにならなければならない。Unwired Enterpriseはビジネスを変える。顧客はどこからでもいつでもあなたの会社にアクセスできるようになる。そして、あなたがもしそれをやらなければ、ほかの誰かがやるだろう」
「Unwired EnterpriseのためにSAPは大胆なステップを提供する。サイベースを買収したことにより、唯一、エンタープライズアプリケーションと次世代のビジネスインテリジェンスをいつでも、どこでも、どのデバイスでも提供できる企業になったのだ」
「サイベースはビジネスをモバイル対応に変える。注文も支払いも何もかも」
On Premis、On Demand、On Deviceのオーケストレーション
続いて、フランクフルトの会場から、ジム・スナーベ氏。
「SAPはOn Premisソリューションを提供し続けると同時に、On Demandソリューションも提供していく。On Deviceなアプリケーション、インフォメーション、コラボレーションのツールも提供する」
「この3つ(On Premis、On Demand、On Device)のオーケストレーションも提供する」
「On Premiseはわれわれのホームグラウンドであり、ビジネスドライバーだ。非常に強力なポジションにいる。このリーダーシップを維持し強化する」
「ここに位置する製品がSAP Business Suite 7だ。今年の後半にはインメモリを使った技術で革新を提供する予定。運用コストを削減する。BI機能にインメモリテクノロジーを実装する」
「On Demandでは2つのアプローチを行う。1つはLine of Businessの拡張による小さなステップ。SFA(セールスフォースオートメーション)のような、ノンクリティカルな部分での参入。ここでの差別化は、On Premiseとのインテグレートだ。オーダー、デリバリ、インボイス、ペイメントの強力なパイプラインを実現する。年内に発表する予定だ」
「On Demand SFAツールは、パイプラインをトラックする。そしてモビリティ、バックエンドのインテグレーションを実現する」
「2つ目は、企業の経営をカバーするOn Demand Suiteのアプローチ。ベストプラクティスを集めたアプリケーションだ。Business ByDesignを7月にはボリュームプロダクトとして発表する」
「StreamWorkは、Facebook for Enterpriseのようなものになるだろう」
「On Demandでのエコシステムを構築していく。そのために、インテルやシスコ、リム、サイベース、VMwareのような強力なパートナーを求めている」
モバイルでの跳躍とクラウドでの前進なるか
キーノートで注目したのは、サイベースの買収によるモバイル分野への進出と、インメモリテクノロジーによるリアルタイムな情報分析、そしてOn Demandと呼ばれるクラウド分野への挑戦です。
この記事で紹介したように、キーノートではサイベース買収におけるこれからの同社のビジョン、そしてクラウド戦略のロードマップが語られました。同社の今後の取り組みがイメージできるものになったといえます。
一方で、クラウドで出遅れていることを巻き返し、またサイベース買収で何をするのかを印象づけるために、具体的な形でのロードマップや製品紹介が行われるのではないかと期待していた部分ではやや肩すかしの感がありました(本当にほんの少しだけのデモはありましたが)。SAPは以前から製品を具体的に語ることの少ない企業でしたので、この辺はいままで通りなのかもしれません。
今年後半にはオンプレミス、オンデマンドのいずれも新しい製品の登場が予定されています。そのときにはここで語られたことがどこまで実現されるのか、新CEOの手腕が問われることになるのでしょう。
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