クラウドポータビリティを実現するRightScaleの「ServerTemplates」テクノロジー

2010年3月3日

3月2日、都内でイベント「クラウドネットワークシンポジウム」が開催され、招待講演として米RightScaleのCEOであるMichael Crandell氏が講演を行いました。

fig 3月2日都内で開催された「クラウドネットワークシンポジウム」で講演するRightScaleのCEO Michael Crandell氏

RightScaleは、記事「[速報]クラウドサービスの米RightScaleが日本への進出を表明、年内にも」でお知らせしたように、日本進出を具体化させようとしているクラウドサービスベンダで、同社独自のテクノロジー「ServerTemplates」によってクラウドのポータビリティや統合管理を実現しています。

この記事ではCrandell氏の講演の内容を、ServerTemplatesを中心に紹介していきます。以下はCrandell氏の発言の内容をまとめたものです。

クラウド間のポータビリティは必要だ

RightScaleは現在2万ユーザーを抱え、90万以上のサーバを運用している。

米ソニーミュージック社はアーティストのサイトをクラウド上で運用している。構成は、ロードバランスの裏に複数のアプリケーションサーバ、その裏に複数のマスターデータベースと外部課金システムへの接続などがされている。

例えばこれを2つのクラウドに分けて運用しようとすると、非常に複雑なことになる。クラウド間のデータベース連係などをしようとすれば、クラウド間での暗号化した通信が必要だが、SSLへの対応、IPアドレスをデータセンターにまたがって割り当て可能か、などクラウド間の能力や機能が違うので、APIが用意されていたとしても相互運用性が担保されるわけではない。

しかしクラウド間のポータビリティは必要だ。マルチクラウド・アクセスの環境が望ましく、クラウドを変えるからといって移行作業は発生させたくないし、複数のチームや企業がさまざまなクラウドで作業していても、情報などのリソースは容易に共有できるのが理想だ。

どのクラウドでサーバ起動するかによって振る舞いを変えられる

それに答えるのが、RightScaleの「ServerTemlates」というアプローチ。これはサーバがどのように機能するかを定義したもの。サーバが起動したときに、どのクラウドやデータセンター内でそのサーバが起動したのかによって動的にその設定を変えることができる。

例えば、MySQLのデータベースサーバをバックアップ付きで運用するとしても、Amazon EC2では、ストレージをAmazon S3としてそのバックアップ機能との組み合わせにするか、Amazon EBSとスナップショット機能の組み合わせにするかという選択肢があるし、RackSpaceクラウドでは、CloudFilesとバックアップ機能にするという組み合わせがあり、クラウドごとに独自の機能やアーキテクチャを提供している。

つまり、似たような機能でもクラウドごとに実装や機能が異なるのだ。こうなるとユーザーとしてはわざわざ自分たちのアプリケーション設定をクラウドごとに書き直す必要があるし、それによって固有のクラウドに囲われてしまうといことになる。

そこでわれわれの技術、ServerTemplatesは、クラウドのシステム固有のコンポーネントをサブシステムに変えてしまい、サーバが起動するときにそのクラウドに合わせてサブシステムをダイナミックに変える。設定はあらゆるレイヤを対象にしており、例えばそのクラウドのバックアップストレージに対応するように上位のアプリケーションの設定も変えていく。

最終的になにが実現できるかといえば、複数のクラウド上のサーバやアプリケーションのユニファイドマネジメント(統一管理)。1つのウィンドウからAmazon EC2、Rackspace、Eucalyptusのように別々のクラウド上のサーバを統合化して管理できる。

RightScaleの事例として、株価情報をモバイル端末向けに提供している会社がある。株価情報は朝や昼はよくアクセスされるが、夜になるとほとんどアクセスがなくなる。これに合わせてサーバ数を変えることでコスト削減を実現している。

Facebookで動作する人気ゲームトップ12のうち10はRightScaleを利用している。人気のあるゲームは毎日1500万人も利用している。

(講演の内容はここまで)

スケールする付加価値

クラウドは規模の経済が働き、多くのクラウドベンダーが規模を追求してコストを下げていくという競争に巻き込まれています。そうした低コストのクラウド、特にIaaSやHaaSと呼ばれるサービスの上にポータビリティや自動化、管理の容易化などの付加価値を載せていくRightScaleのようなサービスは、クラウドをベースとした新しいビジネスです。

今後、クラウドがプラットフォームとして認知され利用されて行くにつれて、そこに対する付加価値ビジネスのニーズも増え、多様化していくことは確実で、いまのSIerのようにポピュラーなものになっていくことでしょう。その中でRightScaleのユニークさは、その付加価値をServerTemplateという技術に落とし込んで汎用かつスケーラブルなものにしている点です。

クラウドに対する付加価値ビジネスの方向性を示しているパイオニア的存在として、RightScaleは注目すべき存在だと思います。

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Junichi Niino(jniino)
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