サーバは「単体」から「群体」へと進化中
ハードウェアとしてのサーバの進化が、いま曲がり角にきているのではないかと思っています。それは単体としてのサーバから、群体としてのサーバへ進化への曲がり角です。
例えば、クラウドでは「サーバは故障するもの」という前提でシステムが構築され、あるサーバが故障してもアプリケーションの実行には何の支障もないように設計されています。アプリケーションから見たハードウェアの単位が「サーバ群」になっていて、その中の個々のサーバの故障は無視される、という状況になっているのです。
企業の情報システムの中でも個々のサーバの存在感は仮想化によって徐々に薄れつつあります。業務アプリケーションを稼働しているサーバは、仮想化によって作られたどこかのサーバ内で稼働する仮想イメージの中であって、今日はサーバAで稼働していたけど、明日はLive Motion機能などによってサーバBへ移動している、ということもありえます。
アプリケーションは「このサーバで稼働」するのではなく、「サーバ群の適切な場所で稼働する」ものになろうとしています。
単体のCPUの性能向上が徐々に頭打ちになり、そのブレイクスルーとしてマルチコア化やクラウドのような分散処理へと向かう流れも、これを牽引していると思います。
以前からなんとなくこういう方向に向かっていることは気になっていたのですが、ブログ「Simple is Beautiful」の2月9日のエントリ「仮想化はクラウドの一部なのか?」に書かれた文が、そうした考えをはっきりと言語化してくれた気がしました。
「クラウド的な使われ方」では費用対効果として一定の性能と信頼性さえ得られればよいと割り切り、ハードウェアを単体として使用するのではなく群体として使うことになります。
「ハードウェアを単体として使用するのではなく群体として使う」というのは、いまサーバの進化が進んでいる方向を示す言葉として非常に適切な表現ではないでしょうか。
最初から「群体」として動作するサーバ
シスコがサーバ市場へ参入してきたのは、このような技術の変化を読み取ってのことだと思います。それも、技術が変化するタイミングをチャンスとして見ただけではなく、群体として動作するサーバは当然のことながら多数のCPUとストレージなどをネットワークが結びつけているわけで、そこに同社の強みが活かせるためです。
単体としてのサーバをうまく作るには、マザーボードを中心とした設計が重要でした。しかし、群体としてのサーバをうまく作るにはサーバやストレージを柔軟に結びつけるネットワークが重要なカギとなるはずです。
シスコのサーバ「シスコ ユニファイド コンピューティング システム」のカタログを開くと、それがデータセンター向けの製品であり、1つ目の特徴として「サーバ、ネットワーク、ストレージアクセスをひとつに統合」と書いてあります。最初から群体として動作することを想定しているのです。
そしてデルもどうやら群体サーバに参入する模様です。Computerworld.jpの記事「デル、クラウド基盤向け高密度サーバを計画中」では、まだ詳細は不明ながら「CloudEdge」ブランドのサーバを今年後半に投入すると報じられています。
群体サーバでは、信頼性を確保するのはソフトウェアの仕事になります。ハードウェアの上に、仮想化ソフトウェア、ネットワーク管理、ストレージ管理、障害管理などのソフトウェアを組み合わせた全体として、はじめて満足に群体として稼働するシステムになるはずです。場合によってはこの上にOS、ミドルウェアまで載せて1つのプラットフォームとして考えるべきなのかもしれません。いずれにせよ、群体サーバはソフトウェア込みで設計されるはずです。
だからどうなる、という結論めいたことが今回のエントリでは書きにくいのですが、いま「サーバ」と呼ばれているものはこんな風に大きな変化の曲がり角にいて、シスコのサーバへの参入、ヒューレット・パッカードの3COM買収、オラクルのサン・マイクロシステムズ買収、ブロケードの身売り話、FCoEによるSAN、LANの融合など、いま起きている多くのことと結びついているのではないかと、そんな風に現在の市場をウォッチしています。