アイルランド政府はクラウド利用を警告、米空軍は軍用クラウドの設計発注へ
政府機関や公的機関は法的なアドバイスなしにクラウドコンピューティングを採用するべきではない。アイルランドの財務省はこんな警告を発したと、2月6日付けのThe Irish Timesの記事「Warning over cloud computing usage」で報じられています。
警告は電子メールで送付され、そのサブジェクトは「cloud computing warning」だったそうです。警告の理由としては、やはりセキュリティ上の懸念があげられています。
米空軍は防衛用のセキュアクラウドの設計へ
一方、米国では米空軍が、防衛や諜報に耐えるだけの能力を備えたセキュアなクラウドの設計とデモンストレーションをIBMに発注したことが発表されました。
このプロジェクトでは、IBMの研究所の専門家たちと空軍とが共同でこれまでにないレベルのあらゆる意味でセキュアなクラウドが実現できることを証明しデモンストレーションすることを目指しています。
米国はクラウドの採用に積極的です。昨年9月の記事「オバマ政権がクラウド調達によるコスト削減策を開始、日本は「霞が関クラウド」のままでいいのか?」では、米国政府がイノベーションを政府に取り込むことでコスト削減を積極的に行うという方針の下、クラウドによるサービスを庁月するためのポータル、「Apps.gov」を立ち上げたことを紹介しました。
先週、2月2日にPublickeyに掲載した記事「英国政府、独自のクラウドを計画。オープンソースの採用も。日本では長崎県が自治体クラウド開始」では、英国では政府が独自にクラウドを構築することを計画していること、また長崎県が独自に開発した自治体クラウドの提供を開始。また、北海道でも自治体クラウドの実証実験を今年4月から道内の18市町村で開始することが報道されています。
ITを積極的に利用することで効率化やコスト削減、そしてサービス向上を図ることは、どの先進国の政府でも大事な課題になっていますが、国ごとにさまざまな取り組みのスタンスがありますね。
ただ、アイルランドのようにクラウドの利用に対して警告を発することも、米空軍のようにクラウドのプロジェクトに取り組むことも、いずれもレベルは違えど基本的には「クラウドはまだセキュアではない」という認識をしている点では一致しています。
こうしたクラウドの課題をいかに解決していくのか、法的な枠組みや技術的な方法などの組み合わせは国ごと、地域ごとに異なるでしょうが、政府の採用や軍の取り組みは、クラウウドのセキュリティや信頼性の向上にとって大きな前進となりそうです。
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