技術もビジネスも理解する人材「ギーク・スーツ」が日本でなぜ育ちにくいか? 野村総研のまじめな研究
野村総合研究所から『「ギーク・スーツ」の育成メカニズム インド、米国、フィンランドに見る「ITとビジネスのプロ育成」』(pdf)という論文が公開されています。
公開されたのは2009年のようですが、ブログ「森崎修司の「どうやってはかるの?」」のエントリ「ギーク・スーツ」で一昨日その存在を知り、読んでみました。
ネット上では以前から、技術側の「ギーク」とビジネス側の「スーツ」の関係がよく話題になっています。ギークが幸せになるには技術を理解したスーツが欠かせず、またスーツがビジネスを成功させるためにはギークがビジネスを理解する必要がある、というのが多くのそうした議論の着地点であると思うのですが、ではそのような状況をどうやったら実現できるのか? についてはなかなか具体的な提案がなかったのではないかと理解しています。
野村総研のこの論文では、外国ではどのようにして技術とビジネスを理解した「ギーク・スーツ」を育成しているかを軸に、日本での問題点とそれを解決するための提案をしています。
日本はギーク・スーツが生まれにくい
論文の冒頭にある要約で内容を把握できるので、引用しましょう。
1.企業や社会にIT(情報技術)を利活用していくためには、ITとビジネスの両方を理解する人材、「ギーク(Geek)・スーツ(Suit)」が必要である。日本は、ギーク・スーツが生まれにくい構造を持っている。
論文では技術とビジネスの両方を理解する人材を「ギーク・スーツ」と名付けています。そして日本はこの「ギーク・スーツ」が構造的に生まれにくいと指摘。
インドでは大学や専門学校でギークの育成を目的としながら、企業や財界と接する機会を用意してスーツ的素養を育んでおり、米国では、大学での複数専攻の履修、企業へのインターンシップなど、学生に対するビジネスセンスを持たせる施策が容易されていると指摘。フィンランドでは、大学の合併による学際的な研究、学生と企業の共同研究などでギーク・スーツの養成を図っているとのこと。
日本においての解決策は、大学を活用することだと提案しています。
5.日本においては、大学という場を有効に活用すべきである。企業で活躍するギークやギーク・スーツと学生を対面させ、海外のライバルの存在を感じてもらいながら、ビジネスとの接点を拡大した教育が必要である。
論文では各国のギーク・スーツ育成がどのように行われているのかを中心に詳しく論じられています。無料で公開されているので、興味のある方はぜひ目を通してみてください。
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