グーグル、世界中のショッピングデータから独自の景気動向指数を算出。カルビーは降雨量や気温からジャガイモの品質を算出。「これがデータの威力」
グーグルが世界中から集めてきた膨大なオンラインショッピングデータから、独自の景気動向指数として「グーグル物価指数」の算出を社内で始めていると、英Financial Timesが記事「Google to map inflation using web data」で伝えています(日本経済新聞による日本語訳「[FT]米グーグル、物価指数の社内運用開始」)。
記事によると、政府が発表する従来の「消費者物価指数(CPI)」は各店舗からデータが手作業で集められ、数週間遅れで発表されているが、グーグルのチーフエコノミスト Hal Varian氏はオンラインデータを利用すれば経済統計が迅速に集計できることに着目し、開発したとのこと。
Mr Varian emphasised that the GPI is not a direct replacement for the CPI because the mix of goods that are sold on the web is different to the mix in the wider economy.
ただしVarian氏は、GPIがすぐにCPIに取って代わるわけではないと強調する。その理由として、Webで販売されている商品の割合は、広く実際に販売されているものの割合とは異なることを挙げている。
このニュースは、グーグルのように大規模にデータを集める能力が、さまざまな分野に影響を与える可能性について考えさせられます。何より、グーグルに「チーフエコノミスト」という肩書の社員がいるのですね。グーグルは一体どこまでその能力を広げていくのでしょうか。
カルビー、ジャガイモの品質を計算式で表す
データの分析が変革をもたらす例をもう1つ紹介しましょう。昨日10月14日に行われた「データ主導のビジネス変革セミナー」(主催ITpro、インフォマティカ・ジャパン)の基調講演では、カルビーでCIOを務めた中田康夫氏が登壇。「データ駆動型経営への挑戦」という講演を行いました。
講演のはじめに中田氏は1つの数式を示しました。
12.145+0.00117×冬の降雨量+0.0614×育成期平均気温+0.00386×収穫期降雨量
この数式は、ワインの品質を表す「アッシェンフェルターのワイン方程式」と呼ばれる数式なのだそうです。
アッシェンフェルターというのは統計学者の名前で、ワインの品質を冬の降雨量、育成期平均気温、収穫期降雨量という3つのファクターで表すこの方程式にたどり着くまで、さまざまなデータを分析したとのこと。
「この数式を用いることで、ワインの専門家ではなくともデータさえあればだれでもワインの品質を示すことができるようになる」と中田氏は説明。「しかもワインの専門家は品質を調べるのにワインを仕込んでから3カ月くらい時間かかるが、この数式なら収穫時に品質が分かる」。
そして、カルビーでもポテトチップスなどの原料となるジャガイモの品質を、同じように数式で導いているのだそうです。
「これがデータの威力。データを適切に使うと専門家を超えられる」(中田氏)
中田氏の講演は、企業の経営でもデータによる意志決定が重要であり、KPI(Key Performance Indicator)の設定、データの見える化、データを分析するノウハウについて話が深まっていくのですが、ここでは割愛します。
グーグルの景気動向指数にしても、ワインやジャガイモの品質を表す方程式にしても、いままで特定の専門家の能力に依存していた分析を、膨大なデータの統計分析によって置き換える試みだといえそうです。以前の記事「次の10年、「統計分析」こそテクノロジー分野でいちばんホットな職業になる」にあるように、統計分析はこれからいろんな分野を変えていきそうですね。