PaaSに必要なピースを埋めるため、VMwareはSUSE Linuxをバンドルする

2010年6月17日

VMwareはノベルと戦略的な提携を発表。VMwareにSUSE Linux Enterpriseをバンドルし、サポートも提供すると発表しました。また、同社の仮想アプライアンスはSUSE Linux Enterpriseベースで標準化されていくとのこと。

VMwareとNovell、戦略的パートナシップを拡張しVMware vSphere™ 環境向け SUSE® Linux Enterpriseの提供・サポートを開始

ノベルもこの戦略提携に合わせて、SUSE Linux EnterpriseをVMwareに最適化するため、カーネルにVMware Virtual Machine Interface(VMI)のサポートを組み込んだことを発表しています。

つまり、VMwareとSUSE Linux Enterpriseは、マイクロソフトにおけるWindows ServerとHyper-Vの関係、あるいはレッドハットにおけるRed Hat Enterprise LinuxとKVMの関係のようになるのでしょう。仮想化ハイパーバイザーと密接に動作するOS、という関係です。

「前から仮想化はOSの機能だって言ってたじゃん!」とMS

VMWare figures out that virtualization is an OS feature - Windows Virtualization Team Blog - Site Home - TechNet Blogs

「VMwareのやつらは仮想化の機能はサーバOSの一部だってやっと気付いたのか? そうだって何年も前から言ってたじゃないか!」とマイクロソフトの仮想化ブログにポストされたエントリ「VMWare figures out that virtualization is an OS feature」(VMwareが仮想化はOSの機能だと示している)で毒づくのは、マイクロソフトでServer and Tools担当のPatrick O’Rourke氏。

The vFolks now plan to ship a full version of a server OS with vSphere, and support it, to fulfill their application development and application deployment plans.

vのやつら(VMwareのこと)は、フルバージョンのサーバOS(つまり仮想化ハイパーバイザ込みのSUSE Linuxのこと)をvSphereで出荷し、サポートしようと計画している。それは、彼らのアプリケーション開発環境と運用環境の不足分を埋めるためだ。

Rourke氏の予想はまったくその通りでしょう。

仮想化ハイパーバイザーとして成功し、それを高度な管理ツールによってリソースプール化を実現するソフトウェアへと進化させたことで、VMwareはIaaS(Infrastructure as a Service)のクラウドベンダへと転身しました。

そして次の段階としてSpringSourceを買収してPaaS(Platform as a Service)のプロバイダになろうとするとき、ハイパーバイザとJavaVMのあいだにあるOSを埋める必要がありました。VMwareがPaaSをフルスタックで提供できるベンダになるにはハイパーバイザに最適化されたOSが不可欠だったのです。

ノベルとの戦略的提携でSUSE Linux Enterpriseを得たVMwareは、ハイパーバイザ、OS、ミドルウェアが揃いました。これはVMwareにとって、Hyper-V、Windows Servere、.NETを擁するマイクロソフト、OracleVM、Solaris/Oracle Enterprise Linux、Fusion Middlewareを擁するオラクルと戦う準備ができつつあることを意味するでしょう。

PaaS/SaaSのプレイヤーの準備が整ってきた

自社クラウドを持たず、グーグルやセールスフォース・ドットコムといったパブリッククラウドベンダと組みつつ、VCE連合(VMware、Cisco、EMC)にノベルも巻き込んでプライベートクラウドで戦おうとするVMware。

自社クラウドのWindows Azureを急速に立ち上げ、Windows Serverと.NETでパブリッククラウドとプライベートクラウドの互換性を武器にするマイクロソフト。

そしてパブリッククラウドには目もくれず(というとやや語弊がありますが)、サンマイクロシステムズのハードウェアと仮想化からアプリケーションまで揃えたオラクルのソフトウェアの完成度の高い組み合わせというオラクル。

そしてメインフレームからコモディティハードウェアまで、OSからミドルウェアまで、パブリッククラウドからプライベートクラウドまで、クラウドのためのあらゆる選択肢を備えているがゆえに、あまり統一したメッセージが伝わってこないIBM。しかしその実力は誰もが認めるところ。

そのほかベンダを挙げていけばきりがないので割愛しますが、エンタープライズITにとって、最大の市場はパブリッククラウド、プライベートクラウドのいずれもPaaS/SaaSのレイヤだと僕は考えています。セールスフォース・ドットコムが先行してきたこの市場に、徐々にそのほかのプレイヤー達の準備が整いつつあります。

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