「昔々、OSは重要なものだった」 ジャン=ルイ・ガセー氏が考える、新しい時代のOS
アップルコンピュータの技術担当で、その後Be社を設立してBeOSを開発したジャン=ルイ・ガセー氏。ブログMonday Noteで、「The OS Doesn’t Matter…」(OSは重要ではない)というエントリをポストし、従来のOSに代わる新しいOS像についての意見を表明しています。
ユーザー体験と開発ツール
ガセー氏のエントリは「Once upon a time, operating systems used to matter a lot; 」(昔々、オペレーティングシステムは重要なものだった)という一節で始まっています。当時、コンピュータで何ができて何ができないのかを決定づけているのがOSでした。
そして「Today, there’s only one operating system: Unix. 」(今日、ただ1つのオペレーティングシステムが存在する。UNIXだ)と、ガセー氏は現状を解説します。ガセー氏いわく、Linuxはもちろん、Mac OS XもUNIXベースのOSであり、iOSもAndroidもUNIXをベースにしたもの。ただし、Windowsだけは例外だがPCは踊り場にきているとしたうえで、急成長中のクラウドもUnix/Linuxの世界だと紹介。つまり、ほとんどOSは似たようなものになってきているのだ、というのがガセー氏の現状認識。
そしてこれからの技術的なチャレンジは、UIと開発ツールにあるとガセー氏。
The technical challenges have migrated to two areas: UI (User Interface, or the more poetic—and more accurate—UX, for User Experience) and programming tools.
技術面でのチャレンジは2つの領域に移っていく。UI(ユーザーインターフェイス、もしくはもっと情緒的、あるいは正確に言えばユーザー体験)と開発ツールだ。
その理由として、ソフトウェアやハードウェアの競争は、ユーザーにいかにスムーズで直感的なユーザー体験を提供するかにかかってきていること、そしてAPI、IDE、フレームワークが開発者の実現することを決定するようになってきていることを挙げています。
This is today’s OS. User experience. Development tools.
これが今日のOSなのだ。ユーザー体験と開発ツールが。
仮想化とフレームワーク
ガセー氏とは別の視点でOSの重要性の低下を示したのは、元マイクロソフトで現在はVMwareプレジデント&CEO ポール・マリッツ氏。
マリッツ氏は9月のVMworldで、「ハードウェアのオーケストレーションは仮想化レイヤが担い、アプリケーションのための抽象化レイヤはフレームワークが担うようになる」と発言しました(参考:[速報]VMworld 2010、クラウド時代の新たなスタックが登場し、OSは消えていく)。
つまりいままでOSが行っていたリソース管理は仮想化レイヤであるハイパーバイザが行っており、APIの提供はフレームワークが行うようになるためOSの重要性は低下していくとしたのです。
ジャン=ルイ・ガセー氏とポール・マリッツ氏はそれぞれ別の視点ながら同じ結論にたどりついています。OSの重要性は低下していき、重要な部分はほかへ移っていくと。
ジャン=ルイ・ガセー氏の念頭には、おそらくPCやモバイルデバイスなどがあり、とポール・マリッツ氏の念頭にはおそらくサーバやクラウドがあるのだと思われます。そのいずれの領域でも同じ方向に進んでいるように見えるのはとても興味深い現象ではないでしょうか。