最近盛り上がってきた「かんばん」、ソフトウェア開発における「かんばん」(Kanban)とは何か
ここ数カ月、ソフトウェア開発の話題で「かんばん」(英語でも「Kanban」)という言葉を目にする機会が増えてきました。かんばんとは何で、どのようなものなのでしょうか? 勉強がてら、いくつかのサイトを紹介していきましょう。
ビギナー向けの「Kanban101」
今年3月にかんばんビギナー向けのサイト「Kanban101」が立ち上がりました。このトップページがかんばんの特徴をよく表しています。
ソフトウェア開発におけるかんばんとは普通に日本語の「かんばん」のことで、誰でも見えるところに置かれて、ホワイトボードや黒板になっていて、記入したり、この画面のようにポストイットを貼って運用するのが一般的です。
かんばんの効果とは、このかんばんを模した画面に書かれているように「仕事のみえる化」「仕掛かりを減らす」「流れを見えるようにする」ということ。このサイトは英語ですが説明がとても簡潔で分かりやすいものになっています。おすすめです。
詳しく知りたい人にはInfoQの記事
そもそもかんばんは、トヨタ生産方式(TPS)がオリジナルです。トヨタの生産現場で使われていたかんばん方式をソフトウェア開発に応用したのがソフトウェア開発におけるかんばんになるのですが、その経緯と効果について少し突っ込んだ記事を読んでみたい方は、5月9日付けでInfoQに掲載された平鍋健児氏の記事をぜひ。
この記事では、
- 生産現場において下流プロセスが上流プロセスに対して必要な部品を生産するための情報伝達手段として「かんばん」が使われること
- 下流プロセスが上流に指示して部品を生産することで上流プロセスでの過剰な生産によるムダが省けること
- かんばんを使うことで現場の進捗状況などが現場のだれにでも把握できること
- 現場のだれもが状況を把握できることで、中央からの指示ではなく現場での自律的な改善が期待できること
といったかんばん方式の効果が説明されています。
またInfoQでは5月10日付けの記事「かんばんとスクラム 両者のよさを最大限ひきだす」では、書籍「Kanba and Scrum, making the most of both」(かんばんとスクラム 両者のよさを最大限ひきだす)の日本語訳PDFを無料で配布しています。
この書籍は以下の内容を含んでいるとのこと。
- かんばんとスクラムの一言説明
- かんばんとスクラム、その他のアジャイル方法論との比較
- 実践例と落とし穴
- マンガと図で描かれた日々の仕事
- スクラム組織におけるかんばんの実践例の詳細なケーススタディ
スクラムとかんばんは対立するか?
かんばんは、かんばんを用いてプロジェクトチーム内部の作業を見える化することといえそうです。一方でスクラムは、スプリントと呼ばれる期間(通常は1カ月)はチームが開発作業に集中できるよう、外部から突然の仕様変更と言った干渉を受けないようにプロジェクトマネージャがチームを守ることが大事であるといわれています。
つまり、スクラムではチームが外部からはブラックボックスになっており、一方でかんばんはチーム内部がガラス張りで見える化されていることになります。ということは両者は対立する概念ではないか? という議論があることを、6月5日付けのVersionOneの記事が伝えています。
もちろん両者は両立するはずで、この記事も後半ではそのことについて説明していますし、だからこそ前述の無料配布されている書籍「かんばんとスクラム 両者のよさを最大限ひきだす」では、この両者の組み合わせそのものがテーマになっている、というわけです。
かんばんを用いたプロジェクト管理ツール
プロジェクト管理ツールにも、かんばんを用いたものが先月登場しました。それが「flow.io」です。かんばんをベースにしたリーンプロジェクトマネジメントツール。Webベースなので、Webブラウザがあれば動作するようです。個人利用、あるいはオープンソースのプロジェクトであれば無料で利用可能。百式でも紹介されていました。
かんばんを使ったプレゼン
マイクロソフトのエバンジェリスト長沢智治氏は、ブログ「ITとビジネスの可能性」にポストした記事「「タスクかんばん」を模した変なプレゼン アジェンダの PPT を公開します♪」で、かんばんを用いたプレゼンテーションを紹介しています。
これは、かんばんについて説明したプレゼンテーション、ではなく、プレゼンテーションの見せ方にかんばんを用いたものです。プレゼンテーションで何が説明されるのか、いまどこまで進捗したのかといったことが、かんばんによって示されていると。
これがかんばん方式のプレゼンテーションの外観です。
また、平鍋氏のブログ「An Agile Way」では、「「かんばんゲーム」を新入社員教育で使っています。」というエントリでかんばんが新入社員教育に使われている様子が紹介されています。
日本でのかんばんの発信源が平鍋氏だとすれば、海外ではかんばんを解説した書籍「Kanban, Successful Evolutionary Change for Your Technology Business」の著者David J. Anderson氏が発信源といえそうです。「David J. Anderson and Associates」のWebサイトには、Kanbanをテーマにしたエントリが数多くポストされています。
4月8日のエントリ「Five Core Properties of a Kanban Implementation」では、かんばんを用いて成功しているチームが共通して備えている5つの属性を挙げています。
- Visualize Workflow(ワークフローの見える化)
- Limit work-in-progress(仕掛かりの制限)
- Measure & Manage Flow(測定とフローの管理)
- Make Process Policies Explicit(プロセスポリシーの明確化)
- Use Models to Recognize Improvement Opportunities(モデルによる改善機会の認識)
かんばんのバイブル
かんばんはトヨタ生産方式が起源であり、その原典が1978年に書かれた大野耐一氏のこの本です。ソフトウェア開発の分野では、リーンやかんばんのバイブル的な書籍として読まれています。
トヨタ生産方式は、いまや1世紀の伝統をもつフォード式生産方式を超えようとしている。逆転の発想によるケース中心の実践書。
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