マイクロソフト、Hyper-Vでクラウドを構築するための「Hyper-V Cloud」を発表。ライバルのVMwareはHyper-Vのサポートを画策か?
マイクロソフトは、同社の仮想化ソフトウェアであるHyper-Vを用いて企業が迅速にプライベートクラウドを構築するためのプログラム「Hyper-V Cloud」を、8日にドイツのベルリンで開催された同社のイベントで発表しました。
これまで、マイクロソフトのHyper-VやWindows Server、System Centerなどを用いてプライベートクラウドを構築する場合には、顧客自身やSIerがサーバやストレージなどを選定し、ネットワーク構成やストレージの構成を考えて組み合わせなければなりませんでした。Hyper-V Cloudでは、「Hyper-V Cloud Fast Track」と呼ばれる、マイクロソフトがハードウェアベンダとパートナーシップを結び、あらかじめ検証された幅広い参照構成(つまり情報)を準備。顧客がそれを参照することで迅速にクラウド構築が実現できるとされています。
その最初の取り組みとして、マイクロソフトとヒューレット・パッカードがサーバにHP BladeSystem Matrix、ソフトウェアとしてSystem CenterやWindows Server、Hyper-Vなどを用いた構成の「HP Cloud Foundation for Hyper-V」の参照構成を提供するとのことです。
ゆるやかな垂直統合連合か
いまや多くのシステムベンダが垂直統合を志向しています。オラクルがサン・マイクロシステムズを買収したのがその典型であり、VMware、シスコ・システムズ、EMCのVCE連合もそれを目指したもの。
今回のHyper-V Cloudも、マイクロソフトとヒューレット・パッカードの2社が軸となり、VCE連合のようにHyper-V連合を構築しようとする動きに見えます。ただしVCE連合の緊密な関係に対し、マイクロソフトは幅広いパートナーとの連係が強味ですので、もっとゆるやかな連合です。
こうなると、シトリックスやレッドハット、デルといった、クラウドへの取り組みを見せつつ特定の関係をそれほど強く持たないベンダがどのような動きを見せるのかも今後のポイントでしょう(もしかしたらオープンソースのOpenStackなどが新たな軸として浮かび上がるのかもしれません)。
ハイパーバイザはコモディティ化していく
一方で、ハイパーバイザは多くのベンダで無料で提供されており、またOpenStackのようなクラウド構築ソフトウェアのオープンソース化も高まってきていて、クラウドインフラそのものが徐々にコモディティ化していく動きもあります。
Virtualization.infoの記事「VMware社がHyper-VとXenのサポートを計画中か?」では、vSphereにはハイパーバイザにHyper-VやXenをサポートするための内部パラメータがあるようだと報じています。ハイパーバイザはもうVMware製でなくともいい、というわけです。
実際にVMwareが他社のハイパーバイザをサポートするのかどうかはまだ分かりませんが、VMwareはすでに仮想化ハイパーバイザやクラウドインフラのコモディティ化を見据えて、Integrienの買収などによる高度な管理や、SpringSourceやGemStoneなどの買収によって構成したvFabricのようなクラウド用ミドルウェアへの投資を本格化させています。
いまはまだ多くのベンダの製品が、いかにクラウドを構築するか、という点に焦点を当てていますが、来年にはそれをサービスとして提供するための管理ツールやミドルウェアの重要性へと各社の焦点、そして顧客の興味も移っていくことになるでしょう。