「データベースのスケーラビリティの解決」のためにGemStoneを買ったVMwareの狙い(後編)
先月から今月にかけてVMwareは、セールスフォース・ドットコムとVMforceを発表し、そしてグーグルとも共同でGoogle App EngineにSpringフレームワークを対応させることなどを相次いで発表してきました。
- Javaをクラウドに乗せる「VMforce」、セールスフォースとVMwareが共同提供
- グーグルとVMwareが、クラウドとオンプレミスのJava互換実行環境を実現。SpringとGWTの統合ツールも提供
(この記事は「『データベースのスケーラビリティの解決』のためにGemStoneを買ったVMwareの狙い(前編)」の続きです)。
Open PaaS戦略に足りないのがデータベース
VMwareは、「Open PaaS」戦略を明らかにしています。記事「VMwareの「Open PaaS」戦略、VMwareはJavaプラットフォームベンダへ変身するのか」でも書きましたが、その狙いはSpringフレームワークをミドルウェアとして、パブリッククラウドでもプライベートクラウドでも互換性のあるJavaアプリケーション実行環境を構築することです。
これは、VMware CTO Steve Herrod氏がVMforce発表後に、Open Paas戦略を説明するためにブログで用いた図です。
そして、グーグルとの協業を発表した後には、今度はこのような図をブログに載せていました。
グーグルとセールスフォース・ドットコムを同じ図の中に描かないのは両社に遠慮したからでしょうか? ここから分かるとおりVMwareの戦略ははっきりしており、VMforceやGoogle App EngineやvSphereなどすべてのクラウドに対して、VMwareのミドルウェアを乗せることでアプリケーションのポータビリティを実現する、というものです(ちなみにAmazonクラウドに対しても、Springフレームワークをはじめとするコンポーネントを自動で展開するCloudFoundryというサービスをSpringSourceがβ公開中です)。
SpringSourceの買収によりJavaのミドルウェアであるSpringフレームワークを手に入れたVMwareにとって、このOpen PaaS戦略を実現する上で足りないのが、vSphere上で動作するクラウド対応のデータベースです。クラウドにふさわしいスケーラブルで高速に動作し、分散環境に対応したデータベースを手に入れることをVMwareは望んでいます。
vSphpere対応のスケーラブルなデータベースが登場する
前回の記事で紹介したGemStoneの買収と、それに先立つインメモリデータベースの「redis」「RabbitMQ Technologies」の取り込みは、VMwareにとってクラウド対応データベースを実現するために必要なアクションだったといえます。
VMwareからはいずれ、vSphere対応の(あるいはvSphereに限らずクラウド対応の)スケーラブルなデータベースソフトウェア(あるいはスケーラビリティを実現するミドルウェア)が登場することでしょう。
VMwareは一段高いレイヤの仮想化ベンダになろうとしている
VMwareの戦略をこうして俯瞰してみると、まるでサーバのハードウェアをハイパーバイザによって仮想化し、その上で動作するソフトウェアからはサーバの違いを隠蔽して互換性を実現したのと同じように、クラウドを新たなコンピュータハードウェアと見なし、その上のミドルウェアによってクラウドを仮想化し、ミドルウェアから上のレイヤで動作するアプリケーションからはクラウドの違いを隠蔽して互換性を実現する。つまり、クラウドに対する仮想化ベンダになろうとしているのではないか、と思えてきます。
そう考えれば、VMwareのOpen PaaS戦略は非常にVMwareらしい戦略だといえないでしょうか(もちろん「クラウドを仮想化する」というのは表現の一種に過ぎず、もしかしたら「クラウド対応OS」とか「クラウド対応ソフトウェアプラットフォーム」といった言い方をVMwareは選ぶのかもしれませんが)。
VMwareがSpringSoruceを買収したときには、なぜ仮想化ベンダが突然Javaフレームワークのベンダを買収したのか不思議に思いましたが、一連の買収とクラウドベンダとの連係をこうして並べて考えてみれば、同社はクラウドという新たなコンピュータに対するより高いレイヤにおいての仮想化(的なもの)を実現しようとしており、それによってクラウドのプラットフォームベンダになろうとしているのだ、という大きな戦略が見えてきます。