セールスフォースが「Force.com vs Windows Azure」ビデオを公開。クラウド開発環境の明日はどっちだ?

2010年3月30日

米セールスフォース・ドットコムが、自社で提供しているクラウドでのアプリケーション開発環境であるForce.comの優位性を示すために「Force.com vs Windows Azure」という動画をYouTubeに先週投稿しました。

その動画では、Windows Azureは申し込みからアプリケーションのデプロイが終わるまで、1時間以上かかる12ステップ以上もの作業を行わなければならないのに対し、Force.comならばわずか数ステップのみの2分程度でまで済んでしまう、という点を主に訴えています。

まずは動画から、Windows Azureのステップを見ていきましょう。

Windows Azureでアプリケーションをデプロイするには、申し込みのあとSilverlightをインストールして、Visual Web Developerをインストールして、IISをインストールして、Azure Tool for Visual Studioをインストールして……と手順を紹介し、全部で72分もかかると説明。

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これに対してForce.comでは、アプリケーションをデプロイするのにわずか数ステップ。2分30秒でできる。と比較しています。

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開発環境の機能もクラウドの特徴も違うもの

たしかにWindows Azureの開発環境をローカルに構築するのには手間がかかります。一方でForce.comの開発環境はすべてクラウド上に用意され、Webブラウザがあればすぐに利用できます。しかもForce.comは無料で利用できるForce.com Free Editionもあるため、そうしたハードルの低さをアピールするには効果的なビデオといえるでしょう。

マイクロソフトを弁護するとすれば、両者の開発環境には機能の点で非常に大きな差があることを忘れてはいけない、という点。統合開発環境としての機能の違いだけでなく、ローカルでのWindows Azureアプリケーションのテスト環境まであることも大きな違いです。

また、Windows AzureはForce.comよりもクラウド内部に対して、例えば起動するインスタンスの種類や個数、ストレージなどのアーキテクチャをきめ細かく指定ができるため、その分手間がかかる、というクラウドそのものの性格の違いもあります。

それにしても少々皮肉に感じるのは、このビデオがWindows Azureの開発環境を構築しようとする人にとってなかなかよくまとまった資料になっていることです。ビデオ前半のWindows Azureの部分はマイクロソフトが解説用に作って公開するべきではなかったかと思うくらい、簡潔に手順がまとまっています。

これからの開発環境はクラウドで提供されるようになるのだろうか

しかしこれほどの両者の開発環境の違い、あり方の違いをあらためて見てみると、一体これからクラウドの開発環境はどのように進化していくのだろうか? という疑問もわいてきます。引き続きローカルの開発環境は充実していくのでしょうか? それとも、開発環境もクラウド上で利用することになっていくのでしょうか?

セールスフォース・ドットコムは明確に、開発環境もクラウドにあるべきだという考えでしょう(Eclipse対応のローカル開発環境も用意はされていますが)。IBMも「Development and Test Cloud」という開発ツールをクラウド上でベータテスト中です。

多くのソフトウェアがローカルアプリケーションから、クラウドで提供されるサービスへと置き換えられようとしている中で、開発環境も例外ではないと考えるのが自然でしょう。理想をいえば、Force.comのように手軽にサービスとして利用でき、しかもWindows Azureの開発環境のようにリッチであることが望ましいといえます。

「ソフトウェア+サービス戦略」に沿って、ローカルアプリケーションの重要性も訴えているマイクロソフトは、すべてがサービス化するという流れにすぐに同意することはないにせよ、Windows Azureの開発環境のハードルが(すでにVisual Studioに慣れ親しんだデベロッパー以外は)高いという部分については同意せざるを得ないと思います。

そして、Google Appsが登場したことでMicrosoft Officeがサービスとして提供されるように、他社の開発環境がサービス化されることに対抗してVisual Studioもサブセット版がサービス化されることも可能性としてはありえます。マイクロソフトから今回のビデオの逆襲が行われるのを楽しみに待つことにしましょう。

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