セールスフォースのChatterは、同社エグゼクティブの仕事をどう変えたか?
セールスフォース・ドットコムの新しいサービス「Salesforce Chatter」が4月15日、同社が東京で開催したイベント「Cloudforce 2 Tour Tokyo」の基調講演で紹介され、日本でも正式発表となりました。
基調講演の内容は、そのちょうど1週間前にニューヨークで開催された米セールスフォース・ドットコムのイベントでマーク・ベニオフ氏が行ったものと同じ内容でした。
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また、Chatterのプライベートベータも国内で開始され、その最初の事例については以下の記事で紹介しました。
東京でのイベントで基調講演を行った米セールスフォース・ドットコムのプレジデント兼チーフ・セールス・オフィサーのフランク・ヴァン・ヴィーネンダール氏に、Chatter開発の意図、それがどう仕事を変えたか、などについてインタビューしました。
いちいち「あれはどうなった?」と聞かずに済むようになった
―― FacebookやTwitterといったサービスが注目されたのは、この2~3年のことだと思います。だとするとChatterの開発もそれ以後ですよね? いつごろ開発が始まったのですか?
だいたい1年ほど前と記憶しています。弊社では、Amazon、eBayといったコンシューマサービスで起きていることを以前から注意深く見ていました。その中で大きく成長していたのがFacebookでした。
Facebookは、個人のプロフィール、情報のフィード、そしてコラボレーションをうまく統合することに成功していました。私の息子もFacebookを使っていますが、もうメールを使っていません、そういう連絡も全部Facebookでやっているのです。ユーザーのパラダイムが変わってきたのです。
生産性の向上、あふれかえる情報への対応、そしてリアルタイムなコミュニケーション。それをFacebookのようなやり方でエンタープライズでも利用できないかと考えたのがChatterなのです。
―― ベニオフCEOはニューヨークのイベントで「Chatterを使ったこの1カ月で、それ以前の3年分よりも多くの社内で起きていることを知ることができた」と言っていました。また、あなたも先ほどの基調講演で「日常の仕事の半分はChatterを使ってモバイルフォンでこなしている」とおっしゃっていましたね。具体的にChatterで仕事はどう変わったのか、教えていただけますか?
私は仕事柄かなりの頻度で出張してます。しかし疲れた足取りでホテルにもどらなくても、いつでもモバイルフォンで情報を見ることができ、必要なら承認処理もしますし、ダッシュボードも見ることができます。
Chatterは人だけでなくアプリケーションにもつながります。重要顧客、重要な商談について、いちいち担当営業やスタッフに聞かなくとも、情報をフォローするだけで状況が分かるのです。いままで状況を知るためにはあちこちに「あれはどうなった?」とたくさんのメールを出して聞かなければなりませんでした。しかしそうしたメールも不要になり、メールそのものが減りました。
―― 個人の仕事の変化だけでなく、会社そのものには変化がありましたか?
セールスフォースには4000人以上の社員がいます。10人程度の会社のように簡単にお互いを知るというわけにはいきません。今回Chatterを導入したことで社員がお互いのことを以前より簡単に知ることができ、接点が多くなりました。
プロフィールを見れば、どういう大学へ通ったのか、前職は何だったのか、など、コネクションがすく見つかります。これはとても大きな価値だと感じています。
弊社がChatterを導入してからまだ数カ月ですが、もう大きな変化がおきているといっていいでしょう。私のことを2200人がフォローしています。私がどこへ行き、何をしているかを知り、必要があれば助けてくれます。そのためにメールのような方法を使う必要はなく、簡単に情報共有ができるのです。メールでこれをやるのはまず無理でしょう。
―― Chatterからは離れて、Salesforce CRMに関連しておうかがいします。こうした営業支援のサービスを利用者が活用するには、営業の前段階としてリードジェネレーションのようなマーケティング支援も重要だと思います。この部分については自社で強化していくのでしょうか? それともサードパーティなどと協業していくのでしょうか?
セールスフォースにもマーケティングを支援するサービスはすでに用意しており、またAppExchangeにもサードパーティのアプリケーションとしてマーケティングを支援するサービスが提供されています。基本的にはそうしたサードパーティたちと協力してやっていくつもりです。
―― そうしたサードパーティのアプリケーションが充実してくると、今後セールスフォースが新たに展開を開始する分野とサードパーティのアプリケーションがバッティングする可能性が高まってくると思います。サードパーティとの領域の重なりやバッティングについて、何か方針や戦略はありますか?
おっしゃるとおり既存のサービスでもサードパーティとオーバーラップしているものはありますし、今後も出てくるかもしれません。しかし、基本的にオープンマーケットは顧客にとってよいものだと考えています。
私たちもできるだけ今後の方向性を示し、サードパーティとのオーバーラップを避けることはできるでしょう。しかしサードパーティに対してAppExchangeがオープンな姿勢を取るかぎり、完全に避けることはできません。それでもオープンなマーケットにしているのは顧客にとってそれが重要だと考えているからです。
オーバーラップを避けるよりも、大事なことはクラウドには勢いがあり、市場も成長しており、パートナーも成長しており、そうした成長にフォーカスすることだと考えています。
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