メタクラウドAPIのDeltacloud、DMTF標準へ申請。シトリックスもOpen Cloudでクラウドの相互運用を目指す
WindowsやLinuxなど、OSの種類やバージョンが異なるごとにAPIが異なるのと同様に、クラウドもAmazon EC2やGoogle App Engine、Windows Azure、Force.comなどサービスが異なれば、プログラムからクラウドの機能を呼び出すAPIも違うものになっています。
こうしたクラウドごとに異なるAPIを抽象化し、1種類のAPIにまとめて操作する、いわゆるメタクラウドAPIを開発しようしているプロジェクトは複数存在しており、「δ-cloud」(Deltacloud)もその1つです。
Deltacloudは昨年レッドハットが開始したプロジェクトで、オープンソースとして開発され、今年7月にはApacheのプロジェクトに移管されました。
そして8月25日、レッドハットはDeltacloudを標準化団体のDMTF(Distributed Management Task Force)の標準に申請したと発表しました。
DMTFはこれまで主に仮想マシンのための共通ファイルフォーマットであるOVF(Open Virtualization Format)などを策定してきています。DMTFへの申請は、レッドハットがDeltacloudを、仮想化をベースとしたクラウドの管理API標準にしようとする意図の表れでしょう。
Deltacloudとは、REST形式のIaaS管理API
Deltacloudは、主にIaaSクラウドを操作するためのREST形式のAPIを備えており、インスタンスの作成、開始、停止、リブート、インスタンス情報のリストアップなどの操作が可能。ストレージに対しても、コンテナの作成、更新、削除、読み取り、Blobの作成、更新、削除、読み取りといった操作が可能。
対応するクラウドは、Amazon EC2、GoGrid、OpenNebula、RackSpaceや、Red HatのクラウドインフラとなるRed Hat Enterprise Virtualization Manager(RHEV-M)にも対応。またVMwareのvSphereによるvCloudにも対応予定としています。
Deltacloud以外のメタクラウドAPI
メタクラウドAPIの開発はDeltacloud以外にも行われています。それらを見てみましょう。
PHPのツールベンダとして知られる米Zend Technologiesを中心に、マイクロソフトやIBMが協力して昨年開始された「Simple Cloud API」がありますが、昨年の発表以来目立った動きはほとんどありません。
同様にCloudkickによって進められている「libcloud」もメタクラウドAPIとして開発されており、Apacheのインキュベーションプロジェクトになっていますが、こちらも最近は動向がほとんど聞こえてきません。
Deltacloudと同様にメタクラウドAPIを目指してApacheインキュベーションプロジェクトとなっている「Apache Nuvem」もあります。
APIではなく、クラウドインフラストラクチャそのものをオープンソースとして開発しようとする動きは活発です。クラウド事業者が使えるクラウドインフラとしてオープンソースとして開発されているのが、7月にRackSpaceとNASAが中心になって発表した「OpenStack」。
そしてAmazon EC2とAPI互換のクラウドインフラとしてオープンソースで開発されているEucalyptusは商用としても販売されており、6月には新バージョンの2.0もリリースされています。
オープンソース以外にも、例えばRightScaleは商用のサービスとして複数のクラウドを管理するサービスを提供していますし、Cloudkickも複数クラウドに対応した管理ダッシュボードサービスを提供するなど、商用サービスでもクラウドにまたがるメタクラウドAPIやサービスを提供する動きは広がっています。
シトリックスもXen Cloud Platformでクラウドの相互互換性強化へ
この記事を書いている途中で新しいニュースが入ってきました。米シトリックスが、オープンなクラウド環境を目指したXen Cloud Platform(XCP)というプロジェクトを発表しています。オープンソースの仮想化ハイパーバイザのXenをベースに、さまざまなクラウドの相互運用性を実現することを目指しているようです。
追記 8/31)上記のXCPのリリースは一年前でした。最新のOpen Cloudのリリースと混同しており間違えました。すいません。XCPに関する部分は削除し、Open Cloudに関する以下の説明と入れ替えさせていただきます。
米シトリックスが、オープンなクラウド環境を目指したCitrix Open Cloudというプロジェクトを発表しています。Open Cloudはクラウドプロバイダーのためのプラットフォームで、今後はオープンソースのOpenStackとの統合などを目指していくとのこと。
シトリックスはRackspaceとNASAを中心としたオープンソースによってクラウド基盤を開発するプロジェクトのOpenStackにも参加しており、XenCenterによるOpenStackとXenServerの統合管理デモンストレーションを今週サンフランシスコで行われるVMworldで行うとブログで明らかにしています(VMworldはVMware主催のイベントなので、おそらくVMwareも含めた統合管理なのでしょう)。
クラウドの相互運用について、各社の動きがにわかに激しくなってきたようです。
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