Amazon.com、社内システムをクラウドへ移行中。オンプレミスからクラウド移行へのケーススタディ
「ドッグフードを食べる」とは、開発中の自社製品の使用をマイクロソフト流に言った言葉ですが、それを「自分たちのシャンパンを飲む」(drink our own champagne)と言い換えたのは、社内システムを自社サービスであるAmazonクラウドに移行しているAmazon.comのIT部門ディレクター Jennifer Boden氏。
Amazon.comは、社内システムとしてオラクルのeBusiness Suite、BMCソフトウェアのRemedy AR System、マイクロソフトのSharepointやExchange Serverなどをオンプレミスで使用していましたが、これをAmazonクラウドへ移行したとのこと。
SearchCloudComputing.comの記事「Amazon.com attempts IT switch to cloud computing」がその様子を伝えており、Jennifer Boden氏によるプレゼンテーションもSlideshareで公開されています(本記事末に埋め込んでいます)。
一般の企業にとって、オンプレミスからクラウドへの移行の参考になるケーススタディですので、以下にその内容を紹介しましょう。
業務アプリケーションが移行の対象
Amazon.comの従業員が利用する目的で構築された社内システムは、一般の企業のそれと変わらず、LinuxやWindowsのサーバ群と、多数のWindowsデスクトップ製品で構成されており、先に紹介したような業務アプリケーションがバックエンドでは稼働しているとのこと。
オンプレミスからクラウドへの移行は、財務経理、人事、開発ツール、ナレッジマネジメント、業務ツールなどが対象となっています。
クラウドへ移行する最大の理由はTCO(総所有コスト)の削減です。これはジェフ・ベゾスCEOからの命令でも、Amazonクラウドの利用促進のためのマーケティングでもなく、ビジネス上の判断としてクラウドへの移行を決断したとBoden氏。移行プロジェクトは数年がかりだったとのこと。
これが移行前の、オンプレミスでの運用の状態。
移行後は社内システム用のネットワークをAmazon VPC(Virtual Private Cloud)の中に拡張し、Amazon VPC内で社内システムを稼働します。クラウドへの移行は、AmazonクラウドのAmazon VPC(Virtual Private Cloud)のサービスが開始されたことで現実的になったとのこと(参考:Amazonがプライベートクラウドのサービスを開始、「プライベートクラウド」がバズワードから現実に)。
クラウド移行への手順
フェーズ1としてまず最初に行ったのは、サーバの仮想化とコンソリデーション。また、データの仕分け、アプリケーションの可用性(SLA)の見極め、依存関係の把握、コンプライアンス、ハードウェアの利用状況、現在のTCOの確認。
そしてベンダとの協力。クラウド対応ライセンスモデルの適用、ベンダ要求に対応したAmazonクラウドサポートの拡張、性能テスト。
フェーズ2は移行試験。IT部門スタッフが実際にAmazonクラウドに慣れること、いくつかのパイロットプロジェクトで技術的な確認、レガシーアプリケーションがクラウドで動作するか、性能試験などを実施。
そしてフェーズ3で実際に移行本番へ。
移行はまだ進行中で、よく分かっている社内開発のアプリケーションや、人事のような比較的シンプルな業務アプリケーションから移行を始めているとのことです。
移行の経験から学んだことは、早期にセキュリティについて着手すること、そしてセキュアなストレージの標準化と、Amazonクラウドの機能であるAWS Auto Scalingと自社の運用システムとを統合することなどだとしています。
今回の移行は社内システムとしてAmazonクラウドが特別扱いしたわけではなく、一般ユーザーと同様にサインアップし、利用しているとBoden氏は説明しています。
このケースは一般ユーザーがオンプレミスからクラウドへ移行する際にも参考にできるよいケーススタディではないでしょうか。
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オンプレミスからクラウドへの移行については、佐川急便グループの事例も合わせてご覧ください。