日本のアジャイルは海外と比べると周回遅れか、アジャイル開発が国内で普及するには? IPAの報告書から
海外ではアジャイル型開発の採用は開発企業のステータスとしての側面があり、現在のアジャイルの次にくるものの議論が始まっている。我が国の状況は周回遅れとも表現されることが少なからずあった。
日本のエンジニアが生き生きと働くためにどうすればよいのか? その一環として独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表した「非ウォーターフォール型開発に関する調査」では、まとめとしてこのような説明が掲載されています。
アジャイル開発普及のための3つのポイント
こうした状況を脱し、国内でアジャイル開発を普及するためにどうすればいいのでしょうか? 発表されたIPAの報告書では次の3つの指摘がありました。
(1) ビジネス等のコンテキストに応じた開発方法の選択
開発するソフトウェアの特性やプロジェクトに与えられる制約などを踏まえ、妥当な開発手法を定めた結果として、ウォーターフォール型開発色が強い場合もあれば、その逆の場合もある。コンテキストに応じた適切な開発方法を選択すべきだ。
(2) プラクティスの活用
アジャイル型の様々な手法において提唱されているプラクティスは多数ある。それぞれのプロジェクト・組織(企業)で、自らの開発にあった方法をアジャイル型の開発プラクティスを参考にして利用するのがよいだろう。
(3)新しい手法に対する正しい理解の促進
ウォーターフォール型の開発であってもアジャイル型の開発であっても、手法ありきではなく、プラクティスの意図や、なぜそのようなプラクティスが提唱されているのかといった背景についても理解を深めなければ、期待する効果を得るための真の条件や正しい取り組み方は見えてこない
アジャイル開発のための契約の課題
アジャイル開発では、顧客とコミュニケーションをとりながら、短い周期での開発を繰り返すことになるため、従来の納期や金額があらかじめ決まっている契約とは異なる内容の契約が求められています。
IPAの調査では、そうしたアジャイル開発を行う際に契約で記載するべき事項についても挙げています。エグゼクティブサマリーから引用しましょう(研究会の資料ではアジャイル開発が「非ウォーターフォール」として記述されています)。
利害関係者とその役割
非ウォータフォール型開発では、発注者といえども果たすべき役割があるので、その内容を明記する。併せて、コミュニケーション計画も契約時に明らかにする反復に関する考え方
反復は非ウォータフォール型開発のベースであるので、1回の反復期間およびその実施内容反復における発注側の役割、など完成責任の考え方
反復への発注側の積極的な関与など、発注側が実施すべき責任を適切に果たすことを条件 に、準委任契約であっても受注側での開発責任があるインセンティブの付与
開発プロジェクトの早期終了を実現するために、発注側、受注側双方が目標を共有することが重要な意味を持つ。このために、目標達成に向けた受注側のインセンティブを契約上で明記する
この研究会は座長を財団法人・京都高度技術研究所 顧問の松本吉弘氏が務め、委員には豆蔵の羽生田栄一氏、チェンジビジョンの平鍋健児氏ほか、ディー・エヌ・エー、富士通、楽天、日本電気、日立製作所などから11人が参加して行われています。
いままで日本のアジャイル開発は現場のエンジニアからボトムアップ的に広まってきた感がありますが、IPAの研究会のメンバーに大手企業の名前があるように、大手企業の中にも浸透しはじめていることが分かります。