女性エンジニアのことを少しだけ理解する3本の座談会記事
マイコミジャーナルに1年以上連載されている「進め! システム開発ジャーナル女子部」では、IT業界で働く女性をテーマにした記事が毎回掲載されています。
1月5日に公開された記事「覆面だから本音が言えちゃう!? 女性エンジニア座談会 - 結婚と出産」では、4人の女性エンジニアが登場して本音の座談会を繰り広げ、結婚観などを披露した興味深い記事(ちなみにこの記事は2008年9月に雑誌に掲載されたものをWebに再掲載したと説明されています)。
そこで、今回はIT業界は女性にとってどのような職場として映っているのか、座談会の記事を3本集めてみました。
まずは、マイコミジャーナルの記事から一部を紹介します。結婚したあとも仕事を続けるのが難しく、その理由としてオンもオフもなく連絡しあう風潮を挙げているB代さん。これには多くの人が思い当たるのではないでしょうか。
B代 子供ができてからも今の仕事を続けられるかというと、難しいと思います。例えば、今の職場はオフの時間、それも夜中でも、メッセンジャーなどを使って仕事について意見交換をする風潮がありますが、子供ができたらそうもいかないでしょう?
これには他の人も同調しています。
A美 この業界は多いですよね、夜でも休日でもどっぷり仕事のことを考えているっていう人が。
B代 周囲がそういう人ばかりだと、他の人と同じことができない自分が悪いような気がしてしまいます。
最近ではツイッターの流行などで、ますますオンとオフに関係なくコミュニケーションが続くようになっていますね。
男性エンジニアは結婚相手について、同じIT業界の人でないとこの仕事の忙しさを理解してくれないだろう、と考える人が少なくないのですが、その考えは女性も同じようです。
A美 各年代に1人くらい、子育てを終えても現役で頑張っている女性エンジニアがいるけど、大抵は旦那さんもこの業界の人ですね。事情をわかってくれて協力的な旦那さんがいないと仕事を続けていくのはつらいのかなと思います。
C子 業界内恋愛も多いですよね。8割くらいそうなんじゃないかな? やっぱりパートナーが同じ業界だと理解がありますよね。
古い体質の会社も
ものづくり系エンジニアのためのWebサイト「@IT MONOist」でも、2009年10月1日に公開された記事「ソフトウェア業界に従事する女性技術者達の本音」で、ETロボコン2009の東海地区で活躍している4人の女性エンジニアが座談会を行っています。
笹竹さん:私の会社はおそらく体質が古いところなので、上司の考えとして男性と女性を分けるというのがあって、例えば細かい作業は女の人の方が得意だからと決め付けて、ドキュメントとか、帳票の作業を回してくるんです。
(略)
伊夫伎さん:私は自分が入社した年が初の女性技術者を入れようという試みの年だったんです。だからおそらく(採用試験のときに)開発やらない? といわれたのだと思うのですが、分野違いで来たけど、どうだろうみたいな感じで。いまはいいですが、入社して5年は正直ひどかったですね。
(略)
伊夫伎さん:古い体質の会社ではないですけど、まずそれまで(私が入るまで)開発の女性は補助的な仕事をする人だけだったので、男性と同じ立場で仕事をする女性に皆さん慣れていなくて、同じことをやれますといっても、私じゃなくて、同僚の男の人に頼んだりとか、下手したら(私よりも)後輩に頼んだりして。
エンジニアの職場の多くは男性中心社会だったため、そこで女性エンジニアが働くにはまだまだ十分な環境とはいえない部分があるようです。結婚、出産に関しても以下のように語られています。
笹竹さん:先輩で結婚した人は何人かいるんですけど、子供を生んだ人が1人しかいなくて。まわりがその人に気を使いすぎてその人に全然仕事を回さないんです。忙しいときは本当にまわりも余裕がない感じになってしまうので、もっと上にたくさんモデルとなる人がいればいいなと思いますね。
渡邉さん:うちの会社も託児所はありません。ただ、女性の先輩に聞くと、結婚して子供を生んでからでも働きやすい(時短勤務、産休などが取れる)といっていたので、その辺は聞いた感じでは良さそうです。
育児と家庭の両立
もう1本、女性エンジニアの座談会を紹介しましょう。@ITの2007年8月の記事「女性エンジニアが本音を語る座談会 ソフトウェア業界で働く女性の実情とは?」では、コンピュータ業界で働く女性のためのサイト「eパウダー」に所属する6人の女性エンジニアが登場しています。
この記事からも家庭と育児についての部分をピックアップしてみます。
村岡 子どもが小さくて休職したり退職したりすると、ある程度子どもが育ってから復職しようとしても、仕事のレベルに付いていけないんじゃないかという心配はありますね。例えば子どもがまだ小さいと、「急に熱を出したから、保育園に迎えに来てほしい」ということがあるので、夫の協力が得られないと、自分ばかり負担がかかることになり、結果的に仕事も続けられなくなるので。
(略)
林 うちの会社は育児休職は取れるんですが、でも実際に戻ってきて働いている方は1人。皆さん戻るつもりで休職されるんですが、戻っても数カ月で辞めてしまう......。やっぱり家庭と仕事を両立できないみたいで。
藤城 そっか。大変すぎるんだ。
M うちの会社は事例がないんですよ。グラフィック・デザイナーさんらは育児休暇などあるようですが、女性のプログラマー自体が少ないので。
山田 本社で1人だけいます。育児休暇を取って復職し、そのまま役員になったという成功されたケースです。でもそれは、その会社で「初の『育児休暇からの復職』」らしいです。
個人的にはIT業界は比較的女性が進出している業界ではないかと思っているのですが、それでもまだまだ解決すべき課題は多いことが、これらの座談会から伝わってきます。