2010年、無線LANはどこまで進化するか?
年末から年始にかけて、さまざまなニュースサイトやブログで2010年の予想記事が展開されていますが、多くの予想がクラウド、ツイッター、タブレットといったキーワードを材料に似たような予想を披露している中で、目にとまったのは、Network Computingの記事「Beyond 802.11n: Enterprise WLAN Trends For 2010」です。
企業内で利用されるPCがデスクトップPCからノートPCへと移り変わっていったように、今後企業内のネットワークはバックボーン以外は有線LANから無線LANへと置き換わっていくでしょう。この記事では、そうした企業内で使われる無線LANの2010年の動向をまとめています。ポイントを紹介していきましょう。
無線LANに関する4つの予想
この記事では、2009年で無線LANに関する最大のニュースが、802.11nが正式に承認されたことだとしたうえで、2010年の予想として以下の4つを紹介しています。以下、記事の要約です。
無線LAN対応デバイスが大量発生
コンシューマ市場でスマートフォン、プリンタ、テレビなどにまで無線LAN機能が組み込まれたように、エンタープライズ市場でも多くのデバイスに無線LAN機能が組み込まれるだろう。
ミッションクリティカルな無線LANの登場
多くの企業では802.11nへのアップグレードによって、ますます多くの社員がネットワーク接続を無線LANに依存するようになる。
無線LANの管理が重要な課題に
ミッションクリティカルな無線LANの使われ方によって、無線LANは有線LANがそうだったように、つねに稼働し続け、管理される対象となる。
802.11nが普及へ
802.11nに対応した多くの製品の登場によって、既存の802.11a/b/gの製品は置き換えられていくことになるだろう。
さらに高速な無線技術も
802.11nは実効速度として100Mbps前後を実現でき、2007年頃から正式承認前のドラフトに対応した商品が多くの製品が登場していました。そして昨年802.11nが正式に承認されてからもドラフト対応の製品がそのまま認定機器として扱えるため、すでに市場には多くのベンダによる認定機器が並んでいます。
企業にとっては十分な性能を備え、しかもすでにある程度成熟した無線LANの仕様ともいえ、上記に紹介した予想のように多くの企業内ネットワークインフラとして採用が進むことでしょう。
ところで、インテルやマイクロソフト、NECなどで構成される業界団体「Wireless Gigabit Alilance」が策定を進めていた無線技術「WiGig 1.0」は、昨年の12月10日に仕様が完成したと発表されています。これは名前の通りGbpsレベルの高速通信を無線で実現する技術。
また、ソニー、シャープ、サムスン電子、モトローラなどが参加する「WHDIコンソーシアム」も1080p/60Hzの動画が非圧縮で伝送可能な「WHDI 1.0」という無線規格を発表しています。
しかし報道されている内容を見る限り、これらは主に動画や音声などのマルチメディアデータをデバイス間で伝送することを想定しているもののようで、802.11のようなネットワークを想定したものではなさそうです。
一方で、次世代無線LAN規格「802.11vht」の策定も始まっているようです。ちなみにvhtはVery High Throuputのこと。「ソフトバンク ビジネス+IT」の記事「802.11vhtとは何か?無線LANの常識を覆す1Gbps超のワイヤレス規格がいよいよ始動」では、シングルリンクで500Mbps以上、マルチリンクで1Gbps以上を実現する802.11vhtの策定が活発化していることを伝えています。
2009年3月に公開されたこの記事では、以下のように動向をまとめています。
802.11vhtの標準化の時期はまったくの未定であるが、過去の標準化動向から推測するなら2年~3年ほどの時間が必要となる。順調に作業が進めば、具体的な製品は2013~2014年頃に登場するものと考えられる。その頃には、ITUで標準化が進められている「LTE-Advance」などの4G携帯電話も、より具体的な形となっているはずだ。
これは推測の域を出ないが、4G通信サービスがホーム/オフィスネットワークも包括するような形で進展するならば、将来的に802.11vhtの最大のライバルは4Gサービス、という可能性もある。
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