身振り手振りのインターフェイスがXboxからWindowsへ、マイクロソフトの「Project Natal」
マイクロソフトがXbox 360のために研究開発を進めている「Project Natal」とは、コンピュータが人間の動き、姿、音声を正確に認識することで、本人を認証し、身振り手振りや声がそのままコンピュータへのインプットになる、新しいユーザーインターフェイスを実現しようとしています。
それが実現すれば、下記で紹介するビデオのように画面の中のキャラクタが自分を認識してこっちをにらみ、キックをすれば格闘技で戦うことができます。ハンドルを握る操作でレーシングゲームが遊べ、iTunesのカバーフローのように画面に並んだ映画のタイトルなら、手をさっと振ればスクロールしていきます(下記のビデオ、けっこう面白いです)。
このProject Natalは、今年の6月に行われたゲームカンファレンスElectronic Entertainment Expo(E3)で発表されました。マイクロソフトはProject Natalがいつ製品として登場するのかを明かしていませんが、別のゲームメーカーのCEOが「2010年には登場する」と述べたと報道されています。
NatalはWindowsに搭載予定、オフィスを変えていくのか?
マイクロソフトの現場から退いた同社会長のビル・ゲイツ氏は、Project Natalについて、7月にCNETのインタビューで次のように答えています。
「その中でも特に斬新な例は、この(深度感知)カメラに関するものだ。これは1年と少しのうちに実現するだろう」と述べた。また、この用途はゲームだけではなく、「メディア再生全般に利用できる。Windows PCに接続して、会議や共同作業、コミュニケーションといった場面でのやりとりにまでも利用できる」と語った。
(略)
これをオフィスで、Windows PCに接続して使えば非常に大きな価値があると思う。そのため、Microsoftの研究部門と製品部門では、非常に多くのことが進行中だ。今後数年間で起こるだろうコストの低下を利用できるため、やがてはほとんどのオフィス環境で導入されることになるだろう
同じく7月のCNETの記事では、同社の最高研究戦略責任者のクレイグ・マンディ氏がProject Natalの技術をオフィスで利用するデモンストレーションを行っています。
デモの中で、未来のデスクトップコンピュータが、多数のタッチスクリーンに音声とジェスチャーを交えて、オフィス全体をディスプレイ兼入力デバイスとして使用する様子を示した。
同氏が行ったデモには、ホログラムのようなビデオ会議システムやバーチャルなデジタルアシスタントに加えて、音声、タッチ、ジェスチャーを認識する多画面コンピュータが含まれていた。机がマルチタッチ画面のコンピュータであり、オフィスの壁もまたディスプレイで、バーチャルな窓とデジタル写真の集まりを、付せんが貼り付けられたコルク板や、さまざまな作業空間に簡単に切り替えることができる。
変化はコンシューマから起きるのか?
マイクロソフトのエバンジェリスト砂金信一郎のブログ「マイクロソフトのオススメVision動画4本。武器は強力なはずなのにバイラルが弱いと感じるのは何故だろう?:Azureの鼓動:ITmedia オルタナティブ・ブログ」でも、
Xboxの場合、家庭用ゲームプラットフォームではありながら、開発体系は.NET技術の枠内であり、XNAライブラリからNatalを制御できるようになれば、PCなど他のWindows環境への移植も容易になると考えられる点である。
と説明されているように、XboxとWindowsは開発ツールが似ているため、相互に技術交換が容易だという点が1つの特長です。
現在、コンシューマ発の技術が企業向けに利用されることが増えてきています。考えてみれば、インターネットやモバイルで培われたコンシューマ向けの多くの技術が企業向けのアプリケーションに応用されようとしていますし、そもそもPCもコンシューマ向けの商品でした。コンシューマから変化が起きる、というのは1つのトレンドとして多くの人が認めるところでしょう。
ゲーム業界では強力な位置を占める任天堂やソニーは企業向けアプリケーションの市場では存在感はほとんどありません。その両方を股にかけて戦う巨大企業マイクロソフトは、新たな変化の担い手になるのでしょうか?